東京都行政書士会世田谷支部所属・目黒区在住の特定行政書士です。

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行政書士萩本昌史事務所
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グループホーム開設に必要な手続きと要件

グループホーム開設に必要な手続きと要件
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保健所・消防署・建築課で確認すべきポイントを行政書士が解説

グループホームを開設する場合、最初に注意すべきことは、福祉サービスの指定申請だけでは開設できないという点です。

障害者グループホーム、すなわち共同生活援助を開設するには、都道府県等への指定申請に加えて、物件について消防法・建築基準法・食品衛生法・都市計画法等への適合確認が必要になります。特に、保健所、消防署、建築課への事前相談は、物件契約前に行うべき重要手続きです。

この記事では、障害者グループホームの開設を中心に、実務上問題になりやすい「保健所・消防署・建築課」での確認事項を整理します。


1. グループホーム開設の全体像

障害者グループホームは、障害者総合支援法上の共同生活援助として指定を受けて運営する障害福祉サービスです。

指定申請では、法人格、事業計画、人員配置、設備基準、運営規程、利用者支援体制などを整える必要があります。国の基準は「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの人員、設備及び運営に関する基準」として定められており、共同生活援助もこの指定基準の枠組みの中で審査されます。(厚生労働省)

東京都の場合、共同生活援助の指定申請書、付表、体制届、加算届などの様式が東京都障害者サービス情報で公開されており、開設準備ではこれらの様式に沿って書類を整えることになります。(障害福祉情報)

ただし、指定申請の前提として、物件そのものがグループホームとして使える状態でなければなりません。埼玉県の基準概要でも、関係部署として、障害福祉担当課、消防署、建築基準法所管課、都市計画法所管課、保健所、労働基準監督署などとの事前調整が示されています。(埼玉県公式ウェブサイト)


2. まず確認すべきは「どの種類のグループホームか」

一口にグループホームといっても、実務上は大きく分けて次の類型があります。

障害者グループホーム

障害者総合支援法上の共同生活援助です。知的障害、精神障害、身体障害などのある方が、地域で共同生活を送る住まいとして利用します。

高齢者グループホーム

介護保険法上の認知症対応型共同生活介護です。認知症の高齢者を対象とする介護保険サービスであり、障害者グループホームとは指定権者、基準、人員配置、消防上の取扱いが異なります。

この記事では、主に障害者グループホーム、共同生活援助を前提に説明します。高齢者グループホームの場合は、介護保険法上の指定、地域密着型サービスとしての市区町村手続、介護保険上の人員・設備・運営基準を別途確認する必要があります。


3. 開設までの基本的な流れ

グループホーム開設は、次の順番で進めるのが安全です。

  1. 事業計画の作成
  2. 開設予定地の市区町村障害福祉担当課への相談
  3. 物件候補の選定
  4. 消防署への事前相談
  5. 建築課・建築指導課への事前相談
  6. 保健所への給食・食品衛生関係の確認
  7. 必要に応じて都市計画、用途地域、バリアフリー、農地法等の確認
  8. 消防設備工事、建築上の改修、衛生設備の整備
  9. 指定申請書類の作成・提出
  10. 現地確認
  11. 指定通知後、事業開始

特に重要なのは、物件契約の前に消防署と建築課へ相談することです。契約後に「自動火災報知設備やスプリンクラーが必要」「用途変更が必要」「そもそも用途地域上難しい」と判明すると、開設費用やスケジュールに大きな影響が出ます。


4. 障害福祉サービスとしての指定要件

障害者グループホームの指定を受けるには、主に次の要件を満たす必要があります。

法人格

個人事業主ではなく、原則として法人である必要があります。株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人、社会福祉法人などが候補になります。

人員基準

共同生活援助では、管理者、サービス管理責任者、世話人、生活支援員などの配置が必要です。埼玉県の基準概要では、管理者1人、サービス管理責任者は利用者30人に1人以上、世話人は原則として利用者6人に1人以上、生活支援員は障害支援区分に応じた常勤換算数以上と整理されています。(埼玉県公式ウェブサイト)

設備基準

グループホームは「住まい」であるため、居室、居間、食堂、風呂、トイレ、洗面所、台所などが必要です。居室は原則として個室で、収納設備を除いて一定以上の面積が求められます。埼玉県の概要では、居室は収納設備を除き7.43㎡以上と示されています。

運営基準

利用契約書、重要事項説明書、運営規程、個別支援計画、サービス提供記録、苦情対応、事故対応、虐待防止、身体拘束適正化、秘密保持などの体制が必要です。

厚生労働省の共同生活援助に関するガイドライン案では、虐待防止委員会の開催、従業者への研修、担当者の配置、身体拘束適正化の取組などが求められることが示されています。


5. 消防署で確認すべき事項

グループホーム開設で最も重要な確認先の一つが消防署です。

障害者グループホームは、消防法施行令別表第一上、福祉施設系の防火対象物として扱われます。利用者の障害支援区分や避難困難性、建物の構造、面積、階数、既存用途との関係によって、消防用設備の内容が変わります。

消防署で確認すべき主な事項は次のとおりです。

用途判定

消防法上、予定物件がどの防火対象物に該当するかを確認します。共同生活援助は、利用者の状況によって、消防法施行令別表第一の6項ロまたは6項ハに関係する判断が問題になります。

船橋市の案内では、障害者グループホームは消防法施行令別表第一の6項に該当し、障害支援区分4以上の者が概ね8割を超える施設は6項ロ、概ね8割以下の施設は6項ハとして整理されています。(船橋市公式情報)

必要な消防用設備

消防署では、少なくとも次の設備について確認します。

  • 消火器
  • 自動火災報知設備
  • 火災通報装置
  • 誘導灯
  • 避難器具
  • スプリンクラー設備
  • 非常警報設備
  • 漏電火災警報器

特に、障害支援区分が高い利用者を想定する場合、スプリンクラー設備や火災通報装置の要否が大きな論点になります。船橋市の案内でも、6項ロの場合は消火器、自動火災報知設備、火災通報装置、誘導灯などが「全部」とされる例が示されています。(船橋市公式情報)

防火管理者の選任

収容人員や建物用途によっては、防火管理者の選任、消防計画の作成、消防訓練の実施が必要になります。

共同住宅の一部をグループホームとして使う場合や、テナントビル内で開設する場合は、建物全体の防火管理体制との調整も必要です。

消防検査

指定申請後の現地確認までに、消防設備の設置・検査を終えておく必要があります。東京都内の実務例では、現地確認までに消防署の検査が終わり、指導事項がないこと、または改善済みであることが重要とされています。(浅井事務所)


6. 建築課・建築指導課で確認すべき事項

消防署と並んで重要なのが、建築課・建築指導課への確認です。

グループホームは、見た目は住宅に近くても、建築基準法上は単なる住宅として扱われない場合があります。用途、面積、階数、既存建物の状態によって、建築基準法上の規制が変わります。

用途変更の要否

既存の戸建住宅、共同住宅、寄宿舎、事務所などをグループホームに転用する場合、建築基準法上の用途変更が必要になることがあります。

特に、建物の用途が「住宅」から「児童福祉施設等」やこれに類する用途に変わる場合、確認申請や用途変更手続の要否を確認しなければなりません。

検査済証の有無

建築課では、次の書類の確認が重要です。

  • 建築確認済証
  • 検査済証
  • 建築計画概要書
  • 建築台帳記載事項証明書
  • 平面図
  • 求積図
  • 建物登記事項証明書

埼玉県の基準概要でも、建築基準法の確認先として建築安全センターや市町村の所管課が挙げられ、検査済証、確認済証、建築台帳記載事項証明書、建築計画概要書等の確認が示されています。(埼玉県公式ウェブサイト)

検査済証がない建物は、直ちに使用不可とは限りませんが、適法性の確認に時間がかかることがあります。古い戸建住宅を活用する場合は特に注意が必要です。

建築基準法上の主な確認事項

建築課では、次のような点を確認します。

  • 用途地域上、グループホームの開設が可能か
  • 建物用途が適法か
  • 用途変更が必要か
  • 接道義務を満たしているか
  • 耐火・準耐火の規制に適合するか
  • 階段、廊下、避難経路が確保されているか
  • 採光、換気、排煙に問題がないか
  • 建ぺい率、容積率に違反がないか
  • 増改築部分が適法か
  • バリアフリー関係の条例が適用されるか

グループホーム開設では、福祉サービスの指定基準だけでなく、建築基準法上の適法性が重要です。いくら福祉上の人員や運営体制が整っていても、建物が適法に使えない場合は開設できません。


7. 保健所で確認すべき事項

グループホームでは、利用者に食事を提供することが多いため、保健所への確認も欠かせません。

保健所で確認する主な事項は、給食施設の届出、食品衛生責任者、HACCPに沿った衛生管理、外部委託時の営業許可です。

給食施設の届出

厚生労働省の通知では、営業以外の場合でも、学校、病院その他の施設で継続的に不特定または多数の者に食品を供与する集団給食施設については、施設所在地を管轄する保健所等への届出が必要とされています。

一方で、1回の提供食数が20食程度未満の少数特定の者を対象とする給食施設については、HACCPに沿った衛生管理、食品衛生責任者の選任、営業届出の規定は適用されないとされています。ただし、その場合でも自主的な衛生管理の徹底が求められます。

食事提供を外部委託する場合

調理業務を外部事業者に委託する場合、施設の調理場を使用するかどうかにかかわらず、受託事業者が飲食店営業の許可を受ける必要があるとされています。

つまり、グループホーム側が「委託だから保健所は関係ない」と考えるのは危険です。委託契約の内容、調理場所、配食方法、盛り付けの有無、保存方法などを保健所に確認する必要があります。

保健所で確認する実務項目

保健所では、次の事項を確認します。

  • 給食施設の届出が必要か
  • 食品衛生責任者の選任が必要か
  • HACCPに沿った衛生管理の対象か
  • 調理設備、手洗い設備、冷蔵庫、保管設備に問題がないか
  • 検食保存が必要か
  • 食材の仕入れ、保存、調理、提供方法
  • 外部委託時の営業許可の要否
  • 配食サービス利用時の取扱い
  • 利用者による自炊支援の場合の取扱い

小規模グループホームでは、提供食数が少ないため営業届出の対象外となる場合もありますが、自治体運用に差があるため、必ず所轄保健所で確認します。


8. 物件選定で失敗しやすいポイント

グループホーム開設では、物件選びが成功の大きな分かれ目です。

特に次のような物件は注意が必要です。

古い戸建住宅

古い戸建住宅は家賃が比較的安く、家庭的な雰囲気も出しやすい反面、検査済証がない、増改築の履歴が不明、耐火性能が足りない、避難経路が不十分、消防設備工事が高額になるといった問題が起きやすい物件です。

共同住宅の一室

マンションやアパートの一室を利用する場合、管理規約、賃貸借契約、消防法上の用途、建物全体の防火管理体制を確認する必要があります。住居専用とされている物件では、事業利用が認められない場合もあります。

テナントビル

テナントビルでは、建物全体の用途、避難経路、共用部、消防設備、他テナントとの関係が問題になります。夜間に利用者が宿泊する施設として適法に使えるかを確認する必要があります。

市街化調整区域・農地が関係する物件

市街化調整区域や農地転用が関係する土地・建物では、都市計画法や農地法の確認が必要です。埼玉県の基準概要でも、都市計画法、バリアフリー法、農地法が関係部署として挙げられています。(埼玉県公式ウェブサイト)


9. 指定申請で準備する主な書類

自治体によって様式や提出時期は異なりますが、一般的には次の書類を準備します。

  • 指定申請書
  • 付表
  • 申請法人の登記事項証明書
  • 定款
  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 管理者・サービス管理責任者の経歴書
  • 資格証、研修修了証
  • 勤務形態一覧表
  • 組織体制図
  • 平面図
  • 居室面積表
  • 設備・備品一覧
  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 利用契約書
  • 個人情報使用同意書
  • 苦情解決体制
  • 虐待防止・身体拘束適正化関係書類
  • 協力医療機関との契約書または協定書
  • 消防署・建築課・保健所等との相談記録
  • 損害賠償保険証券
  • 事業所写真

東京都では、共同生活援助事業所の指定に係る記載事項、指定申請書、体制等状況一覧表などの様式が公開されています。(障害福祉情報)


10. 開設前の現地確認で見られるポイント

指定申請後、自治体による現地確認が行われることがあります。

現地確認では、申請書類と現場が一致しているか、実際に事業を開始できる状態かを確認されます。東京都内の実務例では、家具・家電・鍵付き書庫・金庫などの備品、申請図面との一致、消防設備、消防署の検査結果通知書、掲示物、利用契約書・重要事項説明書などの運営書類が確認事項として挙げられています。(浅井事務所)

つまり、指定申請書を提出しただけでは不十分で、現地確認時点では「明日から利用者を受け入れられる状態」まで整備しておく必要があります。


11. 開設スケジュールの目安

グループホーム開設には、一般的に少なくとも数か月を要します。

特に時間がかかるのは、次の工程です。

  • 法人設立
  • 物件選定
  • 消防署との協議
  • 消防設備工事
  • 建築基準法上の確認
  • 用途変更が必要な場合の手続
  • 人材採用
  • サービス管理責任者の確保
  • 指定申請書類の作成
  • 現地確認対応

物件が決まってから指定申請まで短期間で進めようとすると、消防設備工事や建築確認で間に合わないことがあります。物件契約前に、消防署・建築課・保健所へ相談しておくことが、開設スケジュールを守る最大のポイントです。


12. 行政書士として見た注意点

グループホーム開設で最も多い失敗は、福祉指定の要件だけを見て物件を決めてしまうことです。

実際には、次の順番で確認する必要があります。

第一に、その地域でグループホーム開設のニーズや計画上の整合性があるかを障害福祉担当課に確認します。

第二に、消防署で用途判定と消防用設備を確認します。

第三に、建築課で建築基準法上の用途、用途変更、検査済証、避難経路、用途地域を確認します。

第四に、保健所で食事提供と食品衛生の取扱いを確認します。

第五に、これらの確認結果を踏まえて、指定申請書類、運営書類、人員体制を整えます。

この順番を誤ると、物件契約後に多額の改修費が発生したり、開設予定日に指定が間に合わなかったりするおそれがあります。


まとめ

グループホーム開設には、障害福祉サービスとしての指定申請だけでなく、消防法、建築基準法、食品衛生法など、複数の法令確認が必要です。

特に重要なのは、次の3つです。

消防署では、用途判定、消防用設備、防火管理、消防検査を確認します。

建築課では、用途変更、検査済証、用途地域、避難経路、建築基準法適合性を確認します。

保健所では、給食施設の届出、食品衛生責任者、HACCP、外部委託時の営業許可を確認します。

グループホーム開設は、福祉事業であると同時に、建物・消防・衛生の総合的な法令適合が求められる事業です。物件選定の段階から関係機関に相談し、記録を残しながら進めることが、確実な開設への近道です。

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