目次[閉じる]
結論:東京都で飲食店営業許可を取るには、営業開始前に保健所へ申請し、営業施設が食品衛生法上の共通基準と「飲食店営業」の業種別基準を満たしているか、実地検査で確認を受ける必要があります。特に見落としやすいのは、調理場と客席の区画、手洗い設備、給排水、冷蔵・保管設備、床や壁の清掃性、換気、そして消防署への届出です。
設備を先に購入してから図面を合わせると、シンクの数や位置、扉、排気、給湯などのやり直しが発生しやすくなります。物件契約や内装工事の前に、図面を持って管轄保健所へ相談するのが最も安全です。
この記事で分かること
- 飲食店営業許可の「設備基準」と消防の確認がどう違うか
- 東京都の飲食店で開業前に確認したい設備チェック項目
- 申請から実地検査、補正、営業開始までの進め方
- 図面・厨房工事・消防届出で失敗しない相談先
飲食店営業許可の設備基準は「保健所」と「消防」を分けて考える
飲食店の開業準備で混同されやすいのが、食品衛生上の営業施設基準と、火災予防上の消防関係基準です。どちらも店舗設備に関係しますが、確認する目的と窓口が異なります。
| 確認する制度 | 主な目的 | 主な確認先 | 代表的な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 食品営業許可 | 食品を衛生的に扱える施設か | 管轄保健所 | 手洗い、シンク、給排水、冷蔵庫、清掃性、区画、衛生管理 |
| 防火対象物の使用開始 | 建物を安全に使用開始できるか | 所轄消防署 | 用途、避難経路、消防用設備、内装、使用開始時期 |
| 火を使用する設備等 | 厨房の火気設備による火災を防ぐ | 所轄消防署 | 厨房設備、排気、燃料、入力、設置位置、届出 |
保健所の許可が下りても、消防関係の確認が終わっているとは限りません。反対に、消防署へ届出をしても、食品衛生上の施設基準を満たしたことにはなりません。開業日から逆算し、両方の窓口へ同じ平面図と設備情報を共有しましょう。
東京都の飲食店営業許可で確認したい設備基準
1. 調理場と客席を衛生的に区画する
調理場は、客席や外部からのほこり、人の出入り、害虫などの影響を受けにくい構造にします。客席との境に扉や区画があるか、食材や器具を扱う場所が客の動線と交差しないかを確認してください。オープンキッチンやカウンター形式でも、営業形態と施設の構造によって判断が分かれるため、完成イメージだけで判断せず図面相談を行います。
2. 手洗い設備と洗浄設備を用途別に考える
手洗い用と食器・調理器具の洗浄用を同じ流しで済ませようとすると、検査前の修正になりやすいポイントです。手洗い設備には、手指を洗浄しやすい水栓、石けん、乾燥または清潔な拭き取り方法を用意し、作業者がすぐ使える位置に置きます。シンクは食材、器具、食器の扱い方に応じて必要数や区画を検討します。
3. 給水・排水・給湯を図面と現場で確認する
水が出るだけでなく、衛生的に使えて、汚水が適切に排出されることが重要です。排水口の位置、床の勾配、グリストラップ、給湯器の能力、漏水時の点検性まで確認します。井戸水や小規模貯水槽などを使用する場合は、水質検査成績書を求められることがあります。水源が特殊な物件では、物件契約前に保健所へ相談してください。
4. 冷蔵・冷凍・食材保管の容量と温度管理を整える
冷蔵庫や冷凍庫は、メニューと仕入れ量に対して十分な容量が必要です。食材を床に直置きしない棚、清掃できる隙間、温度確認の方法、加熱前後の食品を分ける運用も考えます。設備があっても、営業開始後に詰め込みすぎて温度管理ができなければ衛生管理は成り立ちません。メニュー表から必要な保管設備を逆算しましょう。
5. 床・壁・天井を清掃しやすい仕上げにする
調理場の床、壁、天井は、汚れや水分がたまりにくく、清掃・洗浄・消毒がしやすい材質と構造にします。床と壁の取り合い、排水、段差、棚の下などは実地検査で確認されやすい箇所です。古い店舗を居抜きで借りる場合は、見た目がきれいでも、ひび割れ、剥がれ、腐食、排水不良がないかを点検します。
6. 換気・照明・防じんを営業内容に合わせる
調理による蒸気、油煙、におい、熱を排出できる換気設備を設けます。排気フードの位置や能力が不足すると、厨房の結露や油汚れ、近隣への排気問題につながります。照明は作業面を確認しやすい明るさを確保し、照明器具の破損時に異物が食品へ落ちにくい構造も検討します。換気設備は食品衛生だけでなく、消防・建築・近隣環境の観点から確認が必要です。
7. トイレと従業者動線を確認する
トイレは、調理場へ汚染が及ばない動線とし、手洗い設備を備えます。トイレの位置、調理場との距離、従業者がトイレ使用後に手洗いして作業へ戻れるかを平面図で確認します。客用トイレと従業者用トイレを分ける必要性は、建物・営業形態・自治体の指導によって変わるため、一般論だけで設備数を決めないようにします。
8. 食品衛生責任者とHACCPに沿った衛生管理を準備する
設備だけでなく、食品衛生責任者の設置と、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理も営業準備に含まれます。メニューごとの衛生上の危害、冷蔵庫の温度、清掃、従業者の健康管理、記録方法を決めておくと、検査後の営業も安定します。厨房レイアウトと衛生管理計画が矛盾しないか、開業前に確認してください。
重要:設備基準は、営業の種類、メニュー、施設の規模、既存建物の状況、自治体の運用によって確認事項が変わります。上の項目は開業前のセルフチェックであり、許可を保証するものではありません。
申請から実地検査までの進め方
- 営業内容を固める:店内飲食、テイクアウト、弁当、菓子製造、酒類提供など、実際に行う営業を一覧化します。営業内容によって必要な許可・届出が追加されることがあります。
- 物件と図面を確認する:厨房、手洗い、シンク、冷蔵庫、トイレ、排気、出入口、客席を平面図に落とし込みます。用途変更や内装工事がある場合は、建築・消防の確認も同時に行います。
- 保健所へ事前相談する:東京都は、申請前に図面と予定する許可業種を持って相談することが推奨されています。オンライン申請を利用する場合でも、図面相談を先に行うと手戻りを減らせます。
- 工事・設備設置を行う:相談結果を反映し、給排水、換気、手洗い、区画、床・壁などを施工します。完成後に変更すると費用が増えるため、設備位置の変更は必ず図面で確認します。
- 営業許可を申請する:申請書、営業施設の図面、食品衛生責任者の資格を証明する書類、水質検査成績書が必要なケースなどを準備します。必要書類・手数料・提出方法は管轄保健所へ確認します。
- 実地検査を受ける:申請内容と現場が一致しているか、設備が実際に使用できるかを確認してもらいます。未完成の設備や、図面と異なる配置があると補正や再確認が必要になります。
- 指摘を是正して営業開始:指摘事項を修正し、許可証の交付や営業開始の時期を確認します。許可前に営業を始めると問題になるため、営業開始日は必ず保健所の案内に従います。
保健所だけでは終わらない:消防署のチェック
飲食店は、開業時の建物用途、間仕切り、避難経路、消防用設備、厨房の火気設備によって、消防署への届出や事前相談が必要になることがあります。東京消防庁は、建物や建物の一部を使用開始する場合、原則として使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を提出する案内をしています。
また、同一厨房内の火気使用設備・器具の入力合計が120kW以上となる場合などは、「火を使用する設備等設置届出書」の対象となることがあります。届出の要否は設備の種類、入力、設置状況で判断されるため、コンロやフライヤーだけでなく、給湯湯沸設備や排気設備を含めて所轄消防署へ確認します。
厨房の排気ダクトやレンジフードは、油脂が蓄積すると火災拡大の危険があります。開業時だけでなく、営業後の清掃・点検計画まで決めておくことが大切です。消防の確認が必要な店舗は、消防手続き・防火管理の相談はこちら(shoubou.tokyo.jp)もご覧ください。
店舗の内装・改修で確認したいこと
厨房の新設、間仕切り、給排水工事、換気工事、用途変更などがある場合、施工内容によって建設業許可や契約上の確認が必要になることがあります。工事業者の許可区分や、許可が必要な工事の整理をしたい場合は、建設業許可の専門サイト(kensetsu-kyoka.tokyo.jp)をご確認ください。
失敗しやすい4つのパターン
失敗1:物件契約後に初めて図面を相談する
契約後に「手洗いを追加できない」「排水を取れない」「排気経路がない」と分かると、設備費や工期が大きく変わります。契約前に、少なくとも厨房区画・給排水・排気・電気容量・消防設備を確認しましょう。
失敗2:居抜き設備をそのまま使えると思う
前の店が許可を取れていたとしても、営業者、営業内容、設備状態が同じとは限りません。設備の劣化や配置変更、現行基準との関係を確認し、必要なら保健所へ現況図面を見せます。
失敗3:メニューを増やしてから追加許可に気付く
店内調理だけの予定が、弁当販売、菓子製造、仕出し、イベント出店などへ広がると、別の許可や届出が関係することがあります。将来メニューは開業前に一覧化します。
失敗4:保健所と消防署へ別々の図面を渡す
厨房設備や間仕切りの情報が食い違うと、手続きが止まる原因になります。設備名、寸法、熱源、排気、使用開始日を同じ資料で管理してください。
開業前チェックリスト
- 営業内容とメニューを確定し、追加の許可・届出を洗い出した
- 管轄保健所へ平面図を持参し、営業施設基準を相談した
- 調理場と客席の区画、手洗い、シンク、給排水を確認した
- 冷蔵・冷凍庫、棚、床・壁・天井、照明、換気を確認した
- 食品衛生責任者、衛生管理計画、HACCPの記録方法を準備した
- 防火対象物使用開始届、火気使用設備等の届出の要否を消防署へ確認した
- 工事前後の図面と設備仕様を保健所・消防署で共有した
- 実地検査に備え、設備が完成し、実際に使用できる状態にした
よくある質問
Q1. 飲食店営業許可の設備基準は全国共通ですか?
食品衛生法に基づく共通ルールはありますが、施設基準の運用や確認方法は自治体・保健所、営業内容、施設の状況で異なります。東京都内でも、所在地を管轄する保健所へ確認してください。
Q2. 営業許可の申請はオンラインでできますか?
東京都では食品衛生申請等システムを使った申請・決済が案内されています。ただし、オンラインで送信できても、図面相談や実地検査が不要になるわけではありません。申請前に保健所へ相談しましょう。
Q3. 消防署への届出は、保健所の許可後でよいですか?
必ずしもそうとは限りません。使用開始、内装工事、消防用設備の増設・移設、火気設備の設置など、工事や営業開始前に提出期限が設定される届出があります。開業日だけでなく工事着手日から逆算してください。
Q4. 行政書士に相談するメリットは何ですか?
営業内容、図面、必要書類、保健所・消防署への確認事項を一つの工程表に整理できます。工事業者や設計者との情報共有も進めやすくなるため、初めて開業する方や、居抜き・用途変更を伴う店舗では早めの相談が有効です。
まとめ:設備を買う前に、図面と営業内容を相談する
飲食店営業許可の設備基準は、手洗い・シンク・給排水・冷蔵保管・清掃性・換気・区画など、店舗の衛生を支える設備全体で確認されます。さらに、飲食店は消防署への使用開始届や火気使用設備の確認が関係することがあります。
成功の順番は、営業内容を決める → 物件と図面を確認する → 保健所と消防署へ相談する → 工事する → 申請・検査を受けるです。設備購入や内装工事を先に進めず、図面と仕様書を使って事前確認を行いましょう。
飲食店の許可・届出を、開業スケジュールに合わせて整理したい方へ
飲食店営業許可、営業施設の図面、食品衛生責任者、消防署への確認、工事業者との連携まで、店舗ごとに必要な手続きを整理します。まずは営業地域、業態、物件の状況をお知らせください。
参考にした公表資料
- 東京都保健医療局:食品営業許可 審査基準
- 東京都保健医療局:食品営業許可のオンライン申請・決済
- 東京消防庁:防火対象物の使用開始の届出をしよう
- 東京消防庁:よくある質問(飲食店の厨房設備等)
- 東京消防庁:飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドライン
※本記事は、2026年8月時点で公表されている情報をもとにした一般的な案内です。設備基準、必要書類、届出の要否は、営業内容、所在地、建物、工事内容、自治体の運用によって変わります。個別案件は管轄保健所・所轄消防署、または行政書士等の専門家へご確認ください。
