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結論からいうと、防火管理者講習の修了証を紛失しても、防火管理者になれる資格そのものは失われません。講習を実施した機関へ再交付を申請すれば、修了証を再び手にできます。講習を受け直す必要は、原則としてありません。
問題は「どこに申請すればよいか」が分かりにくいことです。防火管理講習は東京消防庁のような消防本部が実施するものと、一般財団法人日本防火・防災協会が実施するものがあり、再交付を受け付けるのは、その修了証を交付した機関だけです。申請先を間違えると、そこでは手続きができません。
この記事では、2026年8月時点の公式情報をもとに、申請先の見分け方、東京消防庁と日本防火・防災協会それぞれの手続き、手数料と日数、そして「修了証がないまま選任届出を出せるのか」という実務上の疑問までを整理します。
この記事で分かること
- 修了証を紛失しても資格が消えない理由
- 再交付の申請先を受講先ごとに見分ける方法
- 東京消防庁での必要書類と代理申請の可否
- 日本防火・防災協会での手数料(1枚2,000円)と所要期間
- 2026年4月1日に廃止された「資格証」の取扱い
- 修了証がない状態で選任届出を進めるときの考え方
修了証を紛失しても防火管理者の資格は失われない
防火管理者の資格は、修了証という書面そのものに宿っているわけではありません。消防法第8条は、一定規模以上の防火対象物の管理権原者に対し、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定めるよう求めています。ここでいう資格とは「防火管理講習を修了した」という事実であり、修了証はそれを証明するための書面です。
したがって、財布ごと落とした、引っ越しの荷物に紛れた、前任者から引き継がれなかった――理由が何であれ、講習を修了した事実は消えません。実施機関には受講記録が残っているため、そこから再交付を受けられます。
ただし実務では「証明できないこと」が壁になります。防火管理者を選任して消防署へ届け出るとき、消防法施行規則第3条の2に基づく防火・防災管理者選任(解任)届出書には、資格を証する書面(防火管理講習修了証等)を添えることが求められます。東京消防庁の案内でも、窓口・郵送・電子申請のいずれでも修了証等の写しやデータを用意するよう明示されています。資格はあっても、手続きが止まるのです。
紛失に気づくのは、たいてい期限が迫っているとき
実際にご相談をいただくのは、テナント入居の直前、防火管理者の交代時、立入検査で指摘を受けた直後といった場面がほとんどです。再交付には日数がかかります。必要になってから探すのではなく、選任の予定が立った時点で手元を確認しておきましょう。
再交付の申請先は「講習を実施した機関」で決まる
手続きの出発点は、その修了証を「誰が交付したか」を特定することです。防火管理講習は、市町村消防長(東京都では東京消防庁)または総務大臣登録講習機関である日本防火・防災協会が実施しています。再交付を受け付けるのは、交付した機関だけです。
| 受講した講習 | 再交付の申請先 | 手数料の目安 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 東京消防庁の防火・防災管理講習 | 都内の消防署・分署・出張所の窓口(稲城市を除く) | 公式サイトに手数料の記載なし | 窓口での申請 |
| 日本防火・防災協会の講習(旧・日本防火協会を含む) | 協会へインターネット申請 | 1枚2,000円(税込) | 入金確認後およそ3週間 |
| 市町村消防長が主催した講習 | 交付を受けた消防本部・消防局 | 自治体により異なる(横浜市は1件1,000円) | 自治体により異なる |
東京消防庁の講習を修了した場合
東京消防庁の防火管理講習・防災管理講習を修了した方は、都内の消防署等の窓口で「防火・防災管理講習修了証再交付等申請書」を提出します。東京都内(稲城市を除く)の各消防署、消防分署または消防出張所が申請先で、講習会場では申請できません。受付は月曜日から金曜日の午前8時30分から午後4時30分まで(祝休日・年末年始を除く)です。遠方で郵送を希望する場合は、東京消防庁消防技術試験講習場(03-3255-2945)へ問い合わせる運用になっています。
日本防火・防災協会の講習を修了した場合
おおむね平成15年以降、全国で開催されている甲種防火管理新規講習・乙種防火管理講習・甲種防火管理再講習の多くは、日本防火・防災協会が実施しています。オンライン型講習の修了証もここに含まれます。協会が交付した修了証の再交付はすべてインターネット申請で、窓口や郵送での受付は行われていません。
注意したいのは、協会が「東京消防庁や他の消防局、消防本部が発行した修了証の再発行は行っておりません」と明示している点です。逆に、市町村消防長主催の講習で取得した修了証も協会では再交付できません。申請先の取り違えは、この2者の間でもっとも多く起こります。
どこで受講したか分からないときの調べ方
「昔、会社の指示で受けたが、どこで受けたか覚えていない」というケースは珍しくありません。次の順でたどると特定しやすくなります。
- 受講当時の勤務先の所在地を確認する/講習は通常、選任先の建物を管轄する地域で受けます。当時の勤務地が東京都内(稲城市を除く)なら東京消防庁の可能性が高くなります。
- 受講した年を絞り込む/千葉県の案内が示すように、主催者は時期によって変わってきました。平成15年以降であれば協会が有力候補です。
- 協会の「申込者情報検索」を試す/再交付申請ページから、氏名・生年月日などで受講記録を確認できます。記録がなければ消防本部主催の講習だった可能性が高まります。
- 過去の選任届出の控えを探す/会社に控えが残っていれば、添付した修了証の写しから交付機関が判明します。
東京消防庁で修了証の再交付を受ける手順
東京消防庁の修了証を紛失した場合は、窓口申請が基本です。氏名を変更した場合の「書換え」も同じ申請書で扱われます。申請書は各消防署等の受付窓口に備え付けられているほか、公式サイトからダウンロードして記入済みで持参することもできます。
申請時に必要なもの
- 防火・防災管理講習修了証再交付等申請書(窓口備付けまたは公式サイトからダウンロード)
- 本人確認のための身分証明書(有効期限内のもの)
- 1点で足りる例:運転免許証、運転経歴証明書(平成24年4月1日以降交付のもの)、個人番号カード、パスポート、在留カード、特別永住者証明書など
- 2点必要な例:資格確認書・年金手帳・住民票(発行から6か月以内)などと、氏名が記載された顔写真付きの証明書(社員証、学生証など)の組み合わせ
- 書換え事項を証明する書類(氏名変更などを伴う場合のみ)
- 手元にある修了証や防火防災管理手帳(紛失した場合は不要です)
「見つからない」と「汚損した」は扱いが違います
紛失であれば手元の修了証は不要ですが、破損・汚損して読めなくなっただけであれば、その現物を持参します。捨ててしまう前に、まず管轄の消防署へ確認してください。
代理人が申請する場合
本人が窓口へ行けない場合、代理人による申請も可能です。その場合は、上記の書類に加えて代理人の身分証明書と委任状が必要です。総務担当者が従業員の分をまとめて手続きするケースでは、この2点の準備を忘れないようにしてください。
日本防火・防災協会で再交付を受ける手順と費用
協会が交付した修了証の再交付は、すべてインターネット申請です。氏名変更や生年月日の訂正による再発行も同じ手続きになります。
再交付手数料は修了証1枚につき2,000円(10%税込)です。甲種防火管理と防災管理の両方を希望する場合は2枚分となります。支払いはクレジットカードまたはコンビニ払いから選べ、別途の支払手数料はかかりません。
発送までの期間は入金確認後およそ3週間です。ここが実務上もっとも重要な数字になります。選任届出や立入検査の是正期限が2週間後に迫っている状況では、再交付を待つ前提の計画は成り立ちません。
申請は、協会の再交付申請ページにある「申込者情報検索」で受講記録を確認したうえで、メールアドレスの認証、マイページの「受講履歴」からの再交付申請、必要事項の入力、決済という流れで進みます。旧姓併記や氏名書換えを希望する場合は、旧姓が記載された公的証明書のアップロードが必要です。なお、発送前であればキャンセルできますが、手数料1,000円を差し引いた額の返金となり、コンビニ払いで支払期限までに入金しないと自動的にキャンセルとなります。
再講習を受ける予定があるなら、先に相談を
協会が交付した修了証を紛失し、かつ協会主催の再講習を受講する場合は、再交付を受けなくても申込み時に証明できる場合があると案内されています。再交付料と受講料を二重に負担する前に、協会(03-6263-9903)へ確認する価値があります。
2026年4月1日から「資格証」は再交付できない
東京都内で防火管理に携わる方が2026年に押さえておくべき変更があります。東京消防庁は、令和8年(2026年)4月1日をもって防火防災管理手帳の「資格証」を廃止しました。資格証とは、東京消防庁以外の機関で講習を受講した方や法定資格者に対して交付されていたものです。
ここが変わりました
- すでに資格証の交付を受けている方が紛失・汚損しても、資格証の再交付はできません。
- 防火防災管理手帳(緑色カバー)と、東京消防庁の講習修了者に交付される修了証等は廃止されていません。
- 資格証の廃止に伴い、東京消防庁の修了証以外の「資格を証する書面」を持つ方も、防火防災管理者選任届出および統括防火防災管理者選任届出の電子申請が可能になりました。
- 選任・解任状況を記入する経過表も廃止され、消防署での記入・交付は行われません。
つまり、他機関の講習を受けた方が東京都内で選任される場合、これからは資格証ではなく元の講習実施機関が交付した修了証そのものが資格を証する書面になります。資格証を紛失したのであれば、東京消防庁ではなく講習実施機関へ再交付を申請するのが正しい進め方です。
修了証がない状態で選任届出はできるのか
結論として、資格を証する書面の添付を省略できる前提で計画を立てるべきではありません。東京消防庁の案内では、窓口・郵送のいずれも「資格を証する書面(防火管理講習修了証等)」を持参または同封するとされ、電子申請でも資格を証する書面のデータを用意してから届出を始めるよう明示されています。
一方で、防火管理者の選任は先送りできるものではありません。管理権原者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、遅滞なく消防長または消防署長へ届け出る義務を負います。修了証が手元にないことは、選任を遅らせてよい理由になりません。
実務では、再交付が期限に間に合うかを逆算し、間に合わない見込みであれば再交付を申請中である事実と交付見込み時期を管轄消防署へ早めに伝え、届出の進め方について指示を受けます。取扱いは消防署ごとに異なる部分があるため、自己判断で「後で出せばよい」と決めてしまわないことが大切です。
消防以外の許認可も同時に動いている場合
開業、法人変更、飲食店営業許可、建設業許可などが同時期に重なる場面では、手続きの前後関係を整理することが重要です。行政書士業務全般のご相談は、行政書士萩本昌史事務所のご案内をご確認ください。
再交付が間に合わないときの3つの選択肢
実施機関が分からない、記録が確認できない、期限が数日後に迫っている――そうした場面では、次の順で検討します。
- 社内の有資格者を洗い出す/防火管理者は、管理的または監督的な地位にあり、防火管理上必要な業務を適切に遂行できる者から選任します。人事記録や過去の選任届出の控えを確認し、要件を満たす別の方がいれば、その方を選任して届け出るほうが早く確実です。
- 講習を受け直す/受講の記録が確認できない場合は、新規講習の受講が確実な解決策です。ただし、建物の用途・延べ面積・収容人員に対して甲種と乙種のどちらが必要かを先に確認しないと、受講しても選任できない事態になります。
- 外部委託を検討する/社内に適任者がいない場合、一定の要件のもとで防火管理者の業務を外部に委託する方法があります。ただし委託には消防署の判断が関わり、委託に関する契約書の添付も求められます。誰でも自由に委託できるわけではありません。
紛失に気づいたときのチェックリスト
- 受講した年と、当時の勤務先の所在地を確認した
- 東京消防庁・日本防火・防災協会・地元消防本部のどれで受講したかを特定した
- 甲種・乙種・防災管理・再講習のどの区分の修了証かを確認した
- 紛失か、汚損して現物が残っているかを区別した
- 氏名変更を伴うか(伴う場合は証明書類を準備した)
- 本人が申請するか、代理人が申請するか(代理なら委任状を用意した)
- 選任届出や立入検査の是正期限を確認し、逆算した
- 期限に間に合わない場合の相談先(管轄消防署)を決めた
よくある質問
Q1.紛失したまま放置すると罰則はありますか?
修了証を紛失したこと自体に罰則はありません。問題になるのは、防火管理者を選任していない、または選任の届出をしていない状態です。消防法第8条は管理権原者に防火管理者の選任と届出を義務づけており、これを怠れば消防長または消防署長からの命令や、消防法上の罰則の対象となり得ます。紛失に気づいた時点で、選任と届出の状況もあわせて確認してください。
Q2.何十年も前の修了証でも再交付できますか?
実施機関に受講記録が残っていれば可能です。ただし、古い時期の講習は主催者が現在と異なります。千葉県の例では、昭和36年から平成10年までは消防本部または県が主催、平成11年から平成14年は主催消防本部、平成15年以降は日本防火・防災協会という区分が案内されています。まずは受講年と受講地から主催者を特定してください。
Q3.結婚して氏名が変わった場合も同じ手続きですか?
はい。東京消防庁では紛失時の「再交付」と氏名変更時の「書換え」を同じ申請書で扱っています。書換えの場合は、書換え事項を証明する書類と手元の修了証が必要です。日本防火・防災協会でも、氏名変更や生年月日の訂正はインターネット申請で行い、旧姓が記載された公的証明書をアップロードします。
Q4.退職した従業員の修了証を会社が再交付できますか?
修了証は個人に交付されるものであり、会社が本人の意思と関係なく再交付を受けることはできません。代理申請には本人の委任状が必要です。退職者に協力を求められない場合は、社内の別の有資格者を選任するか、新たに講習を受講してもらう方向で検討することになります。防火管理者の交代時に修了証の写しを確実に引き継ぐ運用が、こうした事態を防ぎます。
Q5.再交付の申請を行政書士に依頼できますか?
再交付申請は本人確認が前提となるため、本人申請または委任状を伴う代理申請が基本です。行政書士は、官公署に提出する書類の作成やその手続の代理を業として行うことができます。なお、行政書士法第19条により、行政書士でない者が報酬を得て業として官公署提出書類を作成することは制限されており、令和7年6月13日付け総行行第281号による通知では、名目を問わず対価を受領して行う場合が「報酬」に当たることが条文上明示された旨が示されています。依頼先を選ぶ際は、資格の有無を確認してください。
まとめ|まず「どこで受けたか」を特定することから
防火管理者講習の修了証を紛失しても、講習を修了したという事実は失われません。やるべきことは、講習を実施した機関を特定し、その機関へ再交付を申請することです。
東京消防庁の講習であれば都内の消防署等の窓口で申請し、紛失の場合は手元の修了証は不要、本人確認書類が必要で、代理人申請には委任状が要ります。日本防火・防災協会の講習であればインターネット申請のみで、1枚2,000円、発送まで入金確認後およそ3週間を見込みます。市町村消防本部主催の講習は、その消防本部が窓口です。
そして2026年4月1日以降、東京消防庁の防火防災管理手帳の資格証は廃止され、紛失しても再交付されません。他機関の修了証がそのまま資格を証する書面として使え、電子申請にも対応しました。
紛失に気づく場面は、たいてい選任届出や立入検査の期限が迫ったときです。再交付の日数を織り込んだうえで、選任と届出をどう進めるかを早めに管轄消防署へ相談することが、結果的にいちばんの近道になります。
CONSULTATION
修了証の再交付と選任届出、
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行政書士萩本昌史事務所/東京都の消防法手続きに対応。まずは現状をお聞かせください。
参考にした公式情報
- 東京消防庁「防火・防災管理講習修了証再交付等申請書」
- 東京消防庁「修了証等の再発行や氏名変更の手続きについて」
- 東京消防庁「防火防災管理手帳の資格証を廃止します」
- 東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書/消防計画作成(変更)届出書」
- 日本防火・防災協会「修了証再交付申請方法」
- 千葉県「防火管理者講習修了証を紛失してしまったのですが再交付はどのようにしたらよいですか」
- 横浜市「防火管理講習修了証等の再発行手続きについて」
- 総務省「行政書士制度」
本記事は2026年8月20日時点の公表情報をもとにした一般的な情報です。申請先、必要書類、手数料、所要期間、選任届出の取扱いは、受講した講習の実施機関、受講時期、建物の所在地や管轄消防署の運用によって異なることがあります。手続きの前に、講習実施機関および管轄の消防署へ最新の情報をご確認ください。
