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結論:建設業許可の「取消し」は、すべてが違反に対する処分ではありません。廃業届に伴う取消し、許可要件を満たさなくなった場合の取消し、不正取得や重大な法令違反による取消処分など、原因と効果は異なります。また、取消しを受けると必ず5年間再取得できない、という理解も正しくありません。5年の欠格期間が問題になるのは、不正の手段による許可取得や、情状が特に重い違反など、建設業法が定める一定の場合です。
この記事で分かること
- 建設業許可の取消し、廃業届、失効、不許可の違い
- 建設業法第29条第1項が定める8つの取消事由
- 取消し後5年間の欠格となる場合・ならない場合
- 取消し後に施工できる工事と注文者への通知期限
- 東京都で取消リスクに気付いたときの確認手順
建設業許可の取消しとは
建設業許可の取消しとは、許可行政庁である国土交通大臣または都道府県知事が、建設業法に基づいて許可の効力を将来に向かって消滅させることです。東京都知事許可であれば、東京都が許可行政庁となります。
根拠の中心は建設業法第29条です。同条第1項は、一定の事由が生じた場合に許可行政庁が許可を「取り消さなければならない」必要的取消しを定めています。同条第2項は、許可に付された条件に違反した場合の裁量的な取消しを定めます。さらに第29条の2は、営業所や建設業者の所在を確認できず、公告後30日を経ても申出がない場合の取消しを定めています。
大切なのは、同じ「取消し」という言葉でも、廃業届を提出した結果として行われる取消しと、不正・重大な違反に対する監督処分としての取消しを区別することです。東京都も、廃業届に伴う取消しについて「違法行為等に基づく許可取消とは異なる」と明示しています。
取消し・廃業届・失効・不許可の違い
| 用語 | 主な意味 | 主な根拠 | 5年欠格 |
|---|---|---|---|
| 許可の取消し | 許可行政庁が既存の許可を消滅させる。要件喪失、廃業、不正取得、重大な違反など原因は複数 | 建設業法29条、29条の2 | 原因による。一律ではない |
| 廃業届 | 死亡、法人の解散、許可業種の廃止などを30日以内に届け出る。届出を受けて許可が取り消される | 同法12条、29条1項5号 | 通常の廃業だけで直ちに5年欠格となるわけではない |
| 失効 | 更新申請をしないまま5年の有効期間が満了し、許可の効力がなくなる | 同法3条3項 | 更新しなかったことだけで5年欠格にはならない |
| 不許可 | 新規・更新等の申請が要件を満たさず、許可されない | 同法7条、8条、15条等 | 原因となる欠格事由がある場合は、その期間中申請できない |
「許可を自分で返したい」という場合は、通常、取消しの申請をするのではなく、該当する許可業種について廃業届を提出します。全部廃業だけでなく、29業種のうち一部だけを廃業する場合もあります。詳しい期限と必要書類は、建設業許可の廃業届の記事をご確認ください。
建設業法第29条第1項の8つの取消事由
現行の建設業法第29条第1項は、必要的取消しの事由を8号に分けています。実際の判断では、事実関係と許可業種、一般・特定の区分、変更届や承継認可の状況を個別に確認する必要があります。
1.常勤役員等・営業所技術者等の要件を満たさなくなった
一般建設業者が建設業法第7条第1号または第2号、特定建設業者が同条第1号または第15条第2号の基準を満たさなくなった場合です。実務上は、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)や営業所技術者・特定営業所技術者が退任・退職し、後任者を確保できない場面が典型です。
一方、一般建設業者が赤字になった、または財産的基礎が一時的に低下したという事実だけで、直ちに第29条第1項第1号の取消しになるとはいえません。同号が列挙する基準と、更新・新規申請時に審査される財産的基礎を分けて考える必要があります。
「退職後に後任を探せばよい」と考えるのは危険です。人員交代が予定されている段階で、後任候補の資格・経験と常勤性を確認し、必要な変更届の順序を決める必要があります。営業所技術者の退職時の対応は、営業所技術者(旧・専任技術者)が退職した場合の記事でも解説しています。
2.一定の欠格要件に該当するに至った
許可取得後に、申請者、法人の役員等、政令第3条の使用人などが、建設業法第8条第1号または第7号から第14号までの欠格要件に該当した場合です。破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合、一定の刑や罰金刑、暴力団員等との関係などが含まれます。
2025年6月1日の改正刑法施行後、条文上は従来の「禁錮以上」ではなく「拘禁刑以上」とされています。役員1名の事情が法人全体の許可に影響することがあるため、役員変更の前にも確認が必要です。欠格要件の全体像は、建設業許可の欠格要件14項目をご参照ください。
3.許可換えが必要なのに新しい許可を受けない
営業所の設置区域が変わり、国土交通大臣許可から都道府県知事許可へ、または知事許可から大臣許可・他の都道府県知事許可へ切り替える必要が生じた場面です。建設業法第9条第1項に該当するのに、必要な一般・特定建設業許可を受けなければ、従前の許可の取消事由となります。
4.許可後1年以内に営業を始めない、または1年以上休止する
許可を受けてから1年以内に営業を開始しない場合、または引き続いて1年以上営業を休止した場合です。建設業法上、提出すれば長期休止中も許可を維持できる一般的な「休業届」はありません。引き続き1年以上営業を休止すれば、第29条第1項第4号の取消事由となるため、休止期間と再開見込みを早めに整理してください。
5.死亡・解散・許可業種の廃止など、廃業届の事由が生じた
建設業法第12条各号の、死亡、法人の合併による消滅、破産手続開始決定による解散、その他の解散、許可業種の廃止が生じた場合です。事業承継の認可を受ける場合など、条文上の例外があります。廃業等の届出期限は原則30日以内です。
6.相続の認可をしない旨の処分があった
個人事業主が死亡し、相続人が建設業者の地位を承継するため認可申請をしたものの、認可しない旨の処分があった場合です。死亡後も建設業を続けたいときは、単純な廃業とせず、相続認可の要件と期限を先に確認する必要があります。
7.不正の手段で許可・更新・承継認可を受けた
虚偽の経験証明や資格資料など、不正の手段で新規許可、更新、事業承継・相続の認可を受けた場合です。この取消しは、後述する5年間の欠格に直接関係します。説明しにくい経歴がある場合でも、事実と異なる書類を作成・提出してはいけません。
8.違反の情状が特に重い、または営業停止処分に違反した
建設業法第28条第1項各号に該当する不正行為等で情状が特に重い場合、または営業停止命令に違反した場合です。国土交通省の現行監督処分基準は、不正行為の内容・程度、社会的影響、情状等を総合的に勘案するとし、情状が特に重い場合や営業停止処分に違反した場合は許可取消しとする考え方を示しています。
8事由以外にも取消しとなる場合がある
建設業法第29条第2項では、許可に付された条件に違反したとき、許可行政庁が許可を取り消すことができると定めています。また、第29条の2では、営業所の所在地または建設業者の所在を確認できないとき、官報や都道府県公報で公告し、公告の日から30日を経過しても申出がなければ、許可を取り消せるとしています。
本店移転や代表者・役員の変更を登記だけで終え、建設業許可の変更届を放置すると、行政庁からの連絡が届かず問題が深刻化します。会社法・商業登記上の手続と、建設業法上の変更届は別の手続です。
許可が消える前に、維持できる選択肢を確認しませんか
人員交代、営業所移転、長期休業、未提出届、更新期限などは、対応の順番で結果が変わります。東京建設業許可サポートステーションでは、現在の許可要件と期限を整理し、「維持」「適法な廃業」「再申請」の選択肢を分かりやすくご案内します。
取消しを受けると5年間再取得できないのか
取消しのすべてが一律に5年欠格となるわけではありません。建設業法第8条第2号が5年欠格の対象とするのは、同法第29条第1項第7号(不正の手段による取得等)または第8号(情状が特に重い違反・営業停止違反)による取消しです。
| 場面 | 5年欠格の考え方 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 不正取得、重大な違反等による取消し | 取消日から5年を経過しない者は欠格 | 建設業法8条2号、29条1項7号・8号 |
| 取消処分の聴聞通知後、処分前に廃業して回避しようとした | 届出日から5年の欠格となる場合がある | 同法8条3号・4号 |
| 第29条第1項第7号・第8号による取消しを受けた法人の役員等、及び原因事実について相当の責任を有する政令使用人等 | 取消しに係る建設業について5年間、軽微な工事を除く新規営業の開始等が禁止される | 同法29条の4第2項 |
| 通常の廃業、要件喪失、1年以上の休止 | その原因だけで一律5年とはならない。要件を整え、他の欠格事由がなければ再申請を検討 | 同法29条1項1号・4号・5号等 |
処分を避ける目的で形式的に廃業すれば欠格を免れられる、という制度ではありません。行政手続法に基づく聴聞の通知が届いた場合や、処分につながる事実が判明した場合は、届出を急ぐ前に通知書、対象事実、関係者、時系列を整理し、必要に応じて弁護士にも相談してください。
取消し後、進行中の工事はどうなるか
建設業法第29条の3第1項は、取消処分を受ける前に締結した請負契約に係る工事に限り、引き続き施工できるとしています。ただし、取消し後2週間以内に注文者へその旨を通知しなければなりません。公益上必要がある場合、許可行政庁は施工の差止めを命じることができます。
注文者は、通知を受けた日、または許可が失効・取消しとなったことを知った日から30日以内に限り、請負契約を解除できます。したがって「受注済みだから何も変わらない」と考えず、契約書、工事一覧、注文者連絡、技術者配置、下請関係を直ちに確認する必要があります。
取消し後に新たに許可が必要な規模の工事を請け負うことはできません。軽微な建設工事だけなら許可なしで請け負える場合はありますが、取消原因、営業禁止、他法令、元請との契約条件も確認してください。軽微な工事の金額基準と分割発注の注意点は、建設業許可なしでできる工事の記事で整理しています。
取消リスクに気付いたときの5ステップ
- 許可の状態を特定する:有効期間、許可番号、一般・特定、知事・大臣、対象業種を確認します。
- 原因と発生日を確定する:人員退職、刑事処分、営業所変更、休業、廃止など、事実と日付を資料で整理します。
- 未提出届と期限を一覧化する:役員、常勤役員等、営業所技術者、営業所、決算報告、更新の提出状況を確認します。
- 契約・工事への影響を分ける:契約済み、見積中、発注前の案件を区分し、新規の許可が必要な請負を独断で進めないようにします。
- 相談先を選ぶ:許可要件・変更届・廃業届は許可行政庁や行政書士へ相談します。聴聞・弁明は行政書士が代理できる場合があり、行政不服申立ては法定範囲で特定行政書士が対応できます。訴訟代理その他の弁護士法上の法律事務は弁護士へ相談します。
東京都知事許可の場合は、東京都都市整備局の現行手引、変更届・廃業届の様式、監督処分基準を確認します。国土交通大臣許可や他県知事許可では窓口・運用が異なるため、東京都の様式をそのまま使わないでください。
行政書士に依頼できる範囲
行政書士は、依頼を受け、報酬を得て官公署へ提出する書類等を作成し、提出手続を代理することができます(行政書士法第1条の3、第1条の4)。建設業許可の変更届、廃業届、更新・再申請に向けた書類整理は行政書士へ相談できます。本人や自社の役員・従業員が自社書類を作成・提出することが禁止されているわけではありません。
聴聞・弁明手続は行政書士が代理できる場合があり、行政不服申立ては法定範囲で特定行政書士が対応できます。一方、訴訟代理その他の弁護士法上の法律事務は弁護士へ相談します。行政書士へ相談する場合も、事案に応じて適切な専門家との連携を確認しましょう。行政書士等でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て官公署提出書類等の作成を業として行うことは、同法第19条により原則として制限されています。
建設業許可の取消しに関するよくある質問
Q1.廃業届を出すと「行政処分歴」が付くのですか?
廃業届を受けて許可行政庁が許可を取り消すことはありますが、東京都は、これは違法行為に基づく取消しとは異なると説明しています。不正・違反による監督処分と同一視しないことが重要です。
Q2.営業所技術者が突然退職したら、同日に許可が消えますか?
退職の瞬間に許可証が物理的に無効になるという単純な仕組みではありませんが、必要な人的要件を満たさない状態は法第29条第1項第1号の取消事由です。後任者の該当性、変更日、届出期限、進行中案件を直ちに確認してください。
Q3.取消しを受けた会社の役員は、全員5年間申請できませんか?
取消原因と各役員の地位・在任時期・責任関係で判断が変わります。取消しの種類によっては、法人だけでなく役員等や政令で定める使用人にも欠格・営業禁止が及びますが、すべての取消しで全役員が一律5年となるわけではありません。
Q4.更新を忘れて許可が切れた場合も「取消し」ですか?
更新を受けず有効期間が満了した場合は、建設業法第3条第3項による失効であり、通常は第29条の取消しと区別します。原則として新規申請が必要です。詳しくは、建設業許可が失効した場合の再取得の記事をご覧ください。
Q5.取消処分の有無は公開されますか?
建設業法第29条の5第1項は、許可行政庁が営業停止・許可取消し等の処分をしたとき、その旨を公告すると定めています。東京都は廃業届に伴う取消業者も月別に公表しており、そのページでも違法行為による取消しとの違いを注意事項として示しています。
まとめ
- 建設業許可の取消しには、要件喪失、廃業、不正取得、重大な違反など複数の原因がある
- 廃業届による取消しは、違法行為に基づく監督処分と同じではない
- 5年欠格は不正取得・重大な違反等による取消しなど一定の場合であり、一律ではない
- 取消し前に契約した工事は施工できる場合があるが、2週間以内の注文者通知が必要
- 人員・営業所・休業・更新の変化は、取消事由となる前に許可要件と届出順序を確認する
許可の「今」と次の一手を、早めに整理します
取消しが心配なときは、廃業届を急ぐ前に、要件を回復できるか、変更届で整えられるか、再申請が必要かを切り分けることが重要です。東京都の建設業許可に詳しい行政書士が、事実関係・期限・必要資料を整理します。
※個別事案の処分対応や争訟については、内容に応じて弁護士等との連携をご案内します。
根拠条文・公式資料
- e-Gov法令検索「建設業法」(第3条、第8条、第12条、第29条~第29条の5)
- 東京都都市整備局「建設業許可の手引(令和7年度・一括版)」(P85、P101、P106~111。届出期限、要件喪失、廃業届)
- 東京都都市整備局「廃業届の提出があった建設業許可業者に係る許可の取消しについて」(2026年7月31日更新)
- 東京都「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(2026年1月7日施行)
- 国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準について」(最終改正:2025年12月12日)
- e-Gov法令検索「行政手続法」(第13条、第15条等)
- e-Gov法令検索「行政書士法」(第1条の3、第1条の4、第19条)
本記事は2026年8月15日現在の法令・東京都の公開資料を基に一般的な制度を解説したものです。処分の有無、再申請時期、工事継続の可否は個別事情で異なります。実際の対応は許可行政庁または適切な専門家へご確認ください。
