目次[閉じる]
- 1記事の内容を、実際の手続きにつなげる
- 2延焼ラインとは|建築基準法2条6号「延焼のおそれのある部分」
- 33m・5mの測り方|起点は3つ、距離は階で変わる
- 4延焼ラインは「どの部位」にかかるのか|外壁・軒裏・開口部・屋根
- 5延焼ラインにかかると、実際に何が必要か|区域別の早見表
- 6延焼ラインを消す・縮める4つの緩和
- 7混同しやすい言葉の整理|延焼防止ライン・延焼防止建築物・延焼遮断帯・回り込み
- 8【2025年4月改正】延焼ラインは「リフォーム」にも効くようになった
- 9消防法にもある「3m・5m」と、消防同意
- 10実務でつまずきやすい10のチェックポイント
- 11用途変更・営業許可のときに延焼ラインが問題になる理由
- 12延焼ラインで、許認可が止まってしまう前に
- 13よくある質問(FAQ)
- 14まとめ
延焼ラインとは、建築基準法2条6号に定義された「延焼のおそれのある部分」の通称です。隣地境界線・道路中心線・同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線から、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある建築物の部分をいい、この範囲の外壁・軒裏・開口部には、区域と規模に応じた防火上の仕様が義務づけられます。
30秒でわかる結論
起点は「建物の壁」ではなく境界線等です。道路側は境界線ではなく中心線から測ります。ちょうど3.0m・5.0mの位置は「以下」なので対象に含まれます。
そして最も誤解されているのが、延焼ラインが引かれただけでは、まだ何の義務も生じないという点です。2条6号は定義規定にすぎず、防火仕様を義務づけるのは法23条・法25条・法27条・法61条など、この言葉を引用する別の条文です。だから同じ延焼ラインの中でも、防火地域なら防火設備が必要で、法22条区域なら外壁だけ、無指定区域なら何も要らない、ということが起こります。なお「延焼ライン」は実務用語で、条文にこの言葉自体は出てきません。
延焼ラインは、建築確認・用途変更・リフォームのどの場面でも最初につまずくポイントです。作図の起点を1つ間違えるだけで、防火サッシの要否が変わり、見積りも工期も変わります。しかも2025年(令和7年)4月1日施行の改正で、木造2階建ての大規模リフォームにも建築確認が必要になり、延焼ラインの審査を受ける場面が一気に増えました。
この記事では、e-Gov法令データ・国土交通省の技術的助言(国住指第3958号)・告示の計算式・東京都都市整備局の資料といった一次資料だけを根拠に、延焼ラインの測り方、部位ごとの判定、区域別に実際に何が要求されるのか、4つの緩和、そして消防法側の話までを一気に整理します。
この記事の要点(先に結論だけ)
- 起点は3つ。隣地境界線/道路中心線/同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線。距離は1階3m以下・2階以上5m以下。
- 道路は中心線から。外壁を道路境界線上に建てる場合、幅員が6mを超えれば1階、10mを超えれば2階以上も道路側の延焼ラインから外れます。
- 同一敷地内の棟間は、延べ面積の合計500㎡以内なら1棟とみなすので棟間の延焼ラインは出ません。501㎡になった瞬間に発生します。
- 延焼ラインが引かれただけでは、何の義務も生じません。義務は区域と規模で決まります。防火地域・準防火地域・法22条区域のいずれでもない「無指定」の小規模な建物なら、延焼ラインによる規制はかかりません。
- 法22条区域は「外壁だけ」。法23条が求めるのは木造建築物等の外壁の準防火性能のみで、軒裏も開口部(防火サッシ)も対象外です。準防火地域の木造2階建て(令136条の2第3号)とは要求が違います。
- 緩和は4つ。①公園・川・耐火構造の壁(法2条6号ただし書きイ)②袖壁・塀(令109条2項)③角度緩和(令和2年国土交通省告示第197号)④棟間の高さ緩和(同告示)。③で縮むのは1階0.5m・2階以上1.0mが限界です。
- 消防法にも同じ3m・5mの規定(令19条2項・令27条2項)がありますが、効果は「面積の合算」で別物。建築確認には消防同意(消防法7条)が必要で、延焼ラインは消防署も見ています。
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延焼ラインとは|建築基準法2条6号「延焼のおそれのある部分」
延焼ラインとは、隣の敷地や道路の向こう側で火災が起きたときに、輻射熱や火の粉で燃え移るおそれがある建築物の部分をいいます。法律上の正式名称は「延焼のおそれのある部分」(えんしょうのおそれのあるぶぶん)で、建築基準法2条6号の定義規定に置かれています。読み方は「えんしょうライン」です。
条文を正確に押さえる
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分出典:e-Gov法令検索「建築基準法(昭和25年法律第201号)」第2条第6号
条文を読むときのポイントは3つあります。①起点は3種類(条文では「隣地境界線等」と総称)、②距離は階で変わる(1階3m・2階以上5m)、③ただし書きイ・ロで除外される部分がある。この3点を押さえれば、延焼ラインの作図は8割方できます。
延焼ラインが引かれただけでは、まだ何の義務も生じない
ここは意外に知られていない、しかし最も重要な性質です。建築基準法2条6号は「用語の定義」の条文であって、それ自体は何も義務づけていません。「延焼のおそれのある部分」という言葉を他の条文が引用することで、はじめて防火仕様が義務づけられます。
つまり延焼ラインは、「規制そのもの」ではなく「規制がかかる範囲を示す物差し」です。だから、同じ延焼ラインの中にあっても、防火地域なら防火設備が必要で、法22条区域なら外壁だけ、無指定地域なら何も要らない、ということが起こります。この構造を理解しないまま「延焼ラインにかかったから防火サッシが必要」と早合点すると、不要なコストを払うことになります。詳しくは「延焼ラインにかかると、実際に何が必要か」で区域別に整理します。
3m・5mの測り方|起点は3つ、距離は階で変わる
起点① 隣地境界線
隣の敷地との境界線です。隣に建物が建っているかどうかは一切関係ありません。隣地が更地でも駐車場でも、境界線がある以上そこから3m・5mを測ります。「隣は当分建たないから」は理由になりません。
起点② 道路中心線(道路境界線ではない)
道路側は、道路境界線ではなく道路の中心線から測ります。ここが作図ミスの定番です。道路が広いほど中心線は遠くなるので、延焼ラインは敷地の内側に入ってきません。
道路幅員別|外壁を道路境界線上に建てた場合の道路側の延焼ライン
| 道路幅員 | 中心線から道路境界線まで | 1階(中心線から3m以下) | 2階以上(中心線から5m以下) |
|---|---|---|---|
| 4m(2項道路のみなし幅員) | 2.0m | 敷地内へ1.0mかかる | 敷地内へ3.0mかかる |
| 6m | 3.0m | 境界線上がちょうど3.0m=かかる | 敷地内へ2.0mかかる |
| 8m | 4.0m | かからない | 敷地内へ1.0mかかる |
| 10m | 5.0m | かからない | 境界線上がちょうど5.0m=かかる |
| 12m | 6.0m | かからない | かからない |
覚え方はシンプルです。外壁を道路境界線上に建てる前提なら、幅員が6mを超えれば1階の道路側は外れ、10mを超えれば2階以上も外れます。ちょうど6m・10mは「以下」に含まれるため対象に入る点に注意してください。外壁を境界線から後退させれば、その分だけさらに有利になります。
2項道路・セットバックの誤解:「セットバックしたら道路中心線も動く」と説明されることがありますが、正確ではありません。建築基準法42条2項は、幅員4m未満の道について「その中心線からの水平距離二メートルの線をその道路の境界線とみなす」と定めています。つまり両側後退の通常ケースでは、みなし道路の中心線は現況道路の中心線と一致し、動きません。中心線が動くのは、同項ただし書きの崖地・川・線路敷地等に沿う一方後退のケース(崖地等側の境界線から水平距離4mの線を道路境界線とみなす)です。この場合、みなし道路の中心線は崖地等側の境界線から2mの位置になり、現況の中心線とはずれます。
水路・里道が道路との間に挟まっている場合:敷地と道路の間に水路や里道(法定外公共物)がある敷地では、①水路を「防火上有効な川その他の空地又は水面」として法2条6号ただし書きイの緩和で扱うのか、②水路の向こう側の道路の中心線から測るのか、③水路との境を隣地境界線として扱うのかで結論が変わります。これは特定行政庁の運用に委ねられている典型論点です。水路の管理者・占用の状況・水路幅によって判断が分かれるので、必ず事前相談してください。
起点③ 同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線(500㎡の落とし穴)
同じ敷地に建物が2棟以上あると、棟と棟の間にも延焼ラインが発生します。ただし条文にはカッコ書きがあります。
つまり、敷地内の建築物の延べ面積の合計が500㎡以内なら、全部まとめて「1棟」とみなされ、棟間の延焼ラインは発生しません。住宅+物置+カーポートといった一般的な戸建て敷地で合計500㎡を超えることはまずないので、棟間を気にする必要はありません。
逆に、合計501㎡になった瞬間に棟間の中心線が生まれます。「倉庫を1棟増築したら、既存棟の窓が延焼ラインにかかって防火設備が必要になった」という事例は珍しくありません。増築計画では、増築部分だけでなく敷地全体の延べ面積の合計を必ず確認してください。
500㎡は「棟間だけ」のルールです。隣地境界線・道路中心線からの延焼ラインは、敷地内の延べ面積に関係なく常に発生します。「500㎡以下だから延焼ラインは関係ない」は誤りです。
1階は3m、2階以上は5m ― 階ごとに位置が変わる
距離は階によって変わります。1階部分は隣地境界線等から水平距離3m以下、2階以上の部分は5m以下です。3階でも10階でも5mで、階が上がるほど広がるわけではありません。
したがって、同じ外壁面でも1階は延焼ラインの外、2階は延焼ラインの中という状態が普通に起こります。立面図では、1階と2階で延焼ラインの位置が階段状にずれた表現になります。建築基準法施行規則が各階平面図・二面以上の立面図に「延焼のおそれのある部分の外壁の位置及び構造」等の明示を求めているため、平面図と立面図の両方で整合させる必要があります。
数え方の早見|隣地境界線からの水平距離
| 境界線等からの距離 | 1階部分 | 2階以上の部分 |
|---|---|---|
| 2.0m | 延焼ライン内(対象) | 延焼ライン内(対象) |
| 3.0m | 延焼ライン内(「3m以下」なので含む) | 延焼ライン内(対象) |
| 3.01m | 対象外 | 延焼ライン内(対象) |
| 5.0m | 対象外 | 延焼ライン内(「5m以下」なので含む) |
| 5.01m | 対象外 | 対象外 |
条文が「三メートル以下」「五メートル以下」と書いているため、ちょうど3.0m・5.0mの位置は延焼ラインに含まれます。ぎりぎりで設計すると、わずかな測量誤差で判定がひっくり返ります。
地階・高低差・曲線・変形地の扱い
地階:建築基準法2条6号は「一階」「二階以上」としか定めておらず、地階についての明文がありません。実務では、地盤面下に埋まっている部分には延焼ラインを考えない一方、ドライエリア等で外壁が地上に現れる部分は1階に準じて扱う運用が一般的ですが、特定行政庁や指定確認検査機関によって判断が分かれます。設計前に窓口で確認してください。
敷地に高低差がある場合も同様に明文がありません。隣地の地盤が高い/低いことは、条文上は距離の測り方に影響しません。延焼ラインはあくまで水平距離で判定します(法2条6号は「距離」、令109条2項・消防法施行令19条2項は「水平距離」と表現しています)。擁壁がある場合に擁壁を「耐火構造の壁その他これらに類するもの」として緩和イに乗せられるかは、構造・高さ・開口の有無を含めて個別判断です。
境界線が曲線・折れ線のときは、後述する角度緩和(告示197号)の技術的助言が参考になります。同助言は「隣地境界線等が複数の線分で構成されている場合については、各線分を一つの隣地境界線等として捉える」「曲線である場合は複数の線分で構成される隣地境界線等と近似して捉える」と整理しています。旗竿地・変形地・隅切りのある角地では、この分解の仕方で結果が変わるため、事前相談が有効です。
延焼ラインは「どの部位」にかかるのか|外壁・軒裏・開口部・屋根
法2条6号は「建築物の部分」と書いているので、延焼ラインという面は外壁だろうが庇だろうが等しく通過します。しかし実際に仕様が義務づけられるのは、他の条文が名指しした部位だけです。ここを分けて考えないと、要らないものまで防火仕様にしてしまいます。
| 部位 | 延焼ラインを理由に仕様が求められるか | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 外壁 | 求められる(区域により準防火性能20分/防火構造30分/耐火構造) | 法23条、法25条、令136条の2第3号イ ほか |
| 軒裏 | 求められることがある(防火構造30分)。ただし法22条区域では対象外 | 法25条、令136条の2第3号イ |
| 外壁の開口部 (窓・出入口・シャッター) |
求められる(20分の遮炎性能をもつ防火設備) | 法2条9号の2ロ・9号の3、法27条1項+令110条の2、法61条1項+令136条の2 |
| 屋根 | 延焼ラインとは無関係(区域内なら全面が対象) | 法22条1項、法62条 |
| 庇・バルコニー・ 開放廊下 |
外壁・軒裏に当たる範囲で。個別判断 | ―(特定行政庁の運用) |
| 屋外階段 | 主要構造部から除かれるが「建築物の部分」ではある。個別判断 | 法2条5号 |
| 門・塀 | 高さ2m超で防火地域内の建築物に附属するもの等は「延焼防止上支障のない構造」 | 法61条1項ただし書き、令136条の2第5号 |
屋根は延焼ラインとは関係ない
防火地域・準防火地域内の屋根の規定(法62条)には「延焼のおそれのある部分」という限定がありません。防火・準防火地域内なら建築物の屋根は全面が対象です。法22条区域(法22条1項)も同じく全面が対象で、例外は同項ただし書きの茶室・あずまや等、または延べ面積10㎡以内の物置・納屋等について「屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分」を除外する場面だけです。「屋根=延焼ラインの範囲だけ不燃化」と覚えていると逆になります。
庇・バルコニー・屋外階段・雨樋
これらは条文が名指ししていないため、特定行政庁の運用に委ねられる領域です。実務上よくある整理は次のとおりですが、地域差が大きいので必ず確認してください。
- 庇・軒の出 軒裏として扱われる範囲は、防火構造が求められる区域では防火構造とするのが一般的です。庇の下面が「軒裏」に当たるかは、規模・位置・開口部との関係で判断されます。
- バルコニー・開放廊下 手すり壁が「外壁」に当たるか、床が「軒裏」に当たるかが論点です。共同住宅の開放廊下・バルコニーは、外気に有効に開放されているかどうかで扱いが変わります。
- 屋外階段 建築基準法2条5号は屋外階段を主要構造部から除いています。そのため主要構造部としての防火要求はかかりませんが、建築物の部分である以上、延焼ラインの作図上は表示を求められることがあります。
- 雨樋・配線・配管 それ自体に延焼ラインを理由とする仕様規定はありません。ただし外壁を貫通する部分は次項の扱いになります。
換気口・エアコンスリーブ・配管貫通は「開口部」か
延焼ラインにかかる外壁に、換気ガラリ・給気口・エアコンの冷媒管スリーブ・ダクトを設ける場合、それが「外壁の開口部」として防火設備を要するのかは頻出の質問です。
条文が防火設備を求めているのは「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設けるもの」です。小径の換気口やスリーブについては、防火ダンパーの設置、不燃材料による処理、認定の耐火キャップの使用などで対応するのが実務の通例ですが、どの範囲を「開口部」と見るか、どの処理を認めるかは特定行政庁・指定確認検査機関ごとに運用が異なります。カタログの「延焼ライン対応」表示だけで判断せず、確認申請前に協議してください。
カーポート・物置・駐輪場も「建築物」
建築基準法2条1号は建築物を「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」と定義しています。屋根と柱があれば、カーポートもサイクルポートも物置も建築物です。したがって、
- 敷地内の延べ面積の合計に算入され、棟間500㎡の判定に影響します。
- それ自体が隣地境界線・道路中心線からの延焼ラインにかかります。
- 防火地域・準防火地域内では、10㎡以内でも新築時に建築確認が必要です(法6条2項の適用除外は防火地域・準防火地域「外」に限られるため)。
なお、開放的な自動車車庫・自転車置場等については、法84条の2(簡易な構造の建築物に対する制限の緩和)と令136条の10という別ルートがあります。ここでも「延焼のおそれのある部分」が判定に使われますが、要求される仕様は本則と異なります。カーポートの防火仕様を検討するときは、まずこのルートに乗るかどうかを確認するのが早道です。
延焼ラインにかかると、実際に何が必要か|区域別の早見表
冒頭で述べたとおり、延焼ラインは「範囲を示す物差し」にすぎません。何が要求されるかは、区域(防火地域・準防火地域・法22条区域・無指定)と規模と用途で決まります。この表が、この記事でいちばん実務に効く部分です。
| 区域 | 延焼ライン部分の外壁 | 延焼ライン部分の軒裏 | 延焼ライン部分の開口部 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 防火地域 | 規模に応じ耐火構造・準耐火構造等 | 同左(構造として一体で要求) | 防火設備(20分の遮炎性能) | 法61条1項+令136条の2第1号・第2号 |
| 準防火地域 (木造・2階以下・500㎡以下) |
防火構造(30分) | 防火構造(30分) | 20分の遮炎性能 | 令136条の2第3号イ |
| 準防火地域 (木造以外・2階以下・500㎡以下) |
要求なし | 要求なし | 20分の遮炎性能 | 令136条の2第4号イ |
| 法22条区域 (木造建築物等) |
準防火性能(20分) | 要求なし | 要求なし | 法23条+令109条の10 |
| 無指定区域 (木造1,000㎡以下・非特殊建築物) |
延焼ラインを理由とする要求は原則としてなし | ― | ||
| 全国共通(区域を問わない) | ①延べ面積1,000㎡超の木造建築物等=外壁・軒裏を防火構造(法25条)/②法27条の特殊建築物=開口部に防火設備(令110条の2)/③耐火建築物・準耐火建築物とする場合=開口部に防火設備(法2条9号の2ロ・9号の3)/④防火壁で区画した特定部分(法26条2項) | ― | ||
【重要】法22条区域は「外壁だけ」― 軒裏も防火サッシも要らない
ここは検索でもっとも誤解が多いポイントです。法22条区域(特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地について指定する屋根不燃化区域)で延焼ラインを理由に義務が生じるのは、法23条に基づく「外壁」の準防火性能だけです。
条文が挙げているのは「外壁」だけで、軒裏も開口部も出てきません。したがって法22条区域では、
- 軒裏の防火構造は不要(準防火地域の木造2階建てとはここが決定的に違います)
- 延焼ライン部分の窓に防火サッシは不要(開口部の規定自体がありません)
- 求められるのは、木造建築物等の外壁の延焼ライン部分を準防火性能=加熱開始後20分(令109条の10)の構造にすること
ただし例外は必ず確認を。法22条区域であっても、①延べ面積1,000㎡超の木造建築物等なら法25条で外壁+軒裏が防火構造(30分)になり、②法27条の特殊建築物なら開口部に防火設備が必要になり、③自治体の建築安全条例等で上乗せがある場合があります。「22条区域だから外壁だけ」は、あくまで小規模な一般建築物の原則です。
【重要】延焼ラインの規制がかからないケース
「延焼ラインが発生しない建物」「延焼ライン 適用外」といった検索が多いのですが、正確に言うと延焼ライン(定義)はどこでも発生します。発生しないのは”規制”のほうです。次の条件をすべて満たす建物なら、延焼ラインを理由とする仕様の義務は原則としてかかりません。
延焼ラインを理由とする規制がかからない条件(すべて満たす場合)
- 防火地域でも準防火地域でもない(法61条の対象外)
- 法22条区域の指定もない(法23条の対象外)
- 木造建築物等の場合、延べ面積が1,000㎡以下(法25条の対象外)
- 法27条の対象となる特殊建築物ではない
- 他の規定(法26条の防火壁、法35条の2の内装制限、条例の上乗せ等)で耐火建築物・準耐火建築物とすることを求められていない
- 自治体の建築安全条例・地区計画等による上乗せ規制がない
都市計画区域外や、都市計画区域内でも無指定(防火規制のない)区域の一般的な戸建て住宅・小規模倉庫がこれに当たります。ただし「防火規制がない」ことと「建築確認が要らない」ことは別です。都市計画区域内なら法6条1項3号で建築(新築等)に確認申請が必要ですし、2以上の階数か200㎡超なら2号建築物として大規模の修繕・模様替も確認の対象です。
防火設備・防火構造・準防火性能の違いを「時間」で整理する
延焼ラインの解説でいちばん混乱するのが、似た用語の使い分けです。要求性能を時間で並べると一気に整理できます。
| 用語 | 対象 | 要求される時間と内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 準防火性能 | 外壁(法22条区域の木造建築物等) | 20分/耐力壁である外壁は損傷を生じない、外壁は加熱面以外(屋内側)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない | 法23条/令109条の10 |
| 防火構造 | 外壁・軒裏 | 30分/耐力壁である外壁は損傷を生じない、外壁・軒裏は加熱面以外(屋内側)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない | 法2条8号/令108条 |
| 遮炎性能 (防火設備) |
外壁の開口部 | 20分/加熱面以外の面に火炎を出さない | 法2条9号の2ロ/令109条の2 |
| 特定防火設備 | 防火区画等(延焼ラインとは別文脈) | 60分/加熱面以外の面に火炎を出さない | 令112条1項 |
ポイントは、準防火性能(20分)と防火構造(30分)は「熱を伝えない」性能、防火設備(20分)は「火炎を出さない」性能で、測っているものが違うということです。また、延焼ラインの文脈で出てくるのは20分の防火設備であって、60分の特定防火設備ではありません。「延焼ラインだから特定防火設備」は誤りです。
網入りガラス・防火サッシについて:防火設備の仕様は平成12年建設省告示第1360号(防火設備の構造方法を定める件)に定められており、網入板ガラスを用いる仕様もここに含まれます。ただし告示仕様は枠材・ガラスの種類・寸法・はめ殺しか可動かまで含めた組み合わせで定められているため、「網入りガラスにしておけば防火設備」ではありません。可動サッシでは、告示仕様に厳密に合わせるか、大臣認定を受けた製品(いわゆる防火サッシ)を使うのが通常の選択になります。
延焼ラインを消す・縮める4つの緩和
延焼ラインを外す方法は4つあります。①②は法2条6号ただし書きイと施行令、③④は令和2年国土交通省告示第197号(法2条6号ただし書きロ)です。効果もコストも大きく違うので、順番に検討してください。
| 緩和 | 根拠 | 効果 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| ①公園・川・耐火構造の壁に面する | 法2条6号ただし書きイ | その面の延焼ラインが消える | 公園・河川・水路に面する敷地。防火塀を新設する場合 |
| ②袖壁・塀で開口部を遮る | 令109条2項 | 延焼ラインは残るが、その開口部を防火設備とみなす | 1〜2か所の窓だけ防火サッシを避けたいとき |
| ③角度緩和 | 法2条6号ただし書きロ +告示197号第2号 |
距離が3m→最小2.5m/5m→最小4.0mに縮む | 外壁面が境界線に対して斜めを向いている敷地 |
| ④棟間の高さ緩和 | 法2条6号ただし書きロ +告示197号第1号ロ |
一定の高さを超える部分が除かれる | 同一敷地内の中高層棟どうし(隣地・道路側には使えない) |
緩和① 公園・広場・川・水面・耐火構造の壁に面する部分
「防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分」は延焼ラインから除かれます。実務でよく使われるのは次のケースです。
- 公園・広場・河川・水路・海に面する側 将来にわたって建物が建たない空地であることが前提です。幅員や「防火上有効」かどうかは特定行政庁の判断になります。
- 耐火構造の壁(防火塀)を設ける 隣地からの火炎を遮るための壁を新設する方法です。ただし高さ2mを超える塀は、防火地域内では令136条の2第5号の対象になります。
「隣が空き地だから大丈夫」は通りません。民有地の空き地は、いつ建物が建つか分かりません。緩和イの対象になるのは、公園・河川など制度的に将来も空地であることが担保された土地です。隣地が更地でも駐車場でも、隣地境界線からの延焼ラインはそのまま発生します。また、緑道・遊歩道・農道・線路敷地などは「防火上有効な空地」に当たるか特定行政庁の判断が分かれる典型例なので、必ず事前相談してください。
緩和② 袖壁・塀で開口部を遮る(令109条2項の「あらゆる部分」)
緩和①と似ていますが別の条文として、建築基準法施行令109条2項があります。これは「延焼ラインを消す」のではなく「その開口部を防火設備とみなす」という規定です。
ポイントは「あらゆる部分」です。境界線上のどの点から見ても、その開口部が袖壁等で遮られていなければなりません。斜めから見通せる角度が1か所でも残っていれば、この規定は使えません。また、遮る対象は「開口部から1階3m以下・2階以上5m以下の距離にある境界線等の部分」なので、袖壁は開口部から見て十分な出寸法が必要になります。防火サッシを避けるために袖壁を立てるなら、平面図上で境界線を細かく刻み、すべての点から見通せないことを検証してください。
緩和③ 角度緩和(令和2年国土交通省告示第197号)― 実は最大0.5m・1.0mしか縮まない
2019年(令和元年)6月25日施行の改正で、法2条6号にただし書き「ロ」が追加されました。外壁面が隣地境界線等に対して斜めを向いている場合、火炎からの距離が実質的に遠くなるため、延焼ラインを短くできるという考え方です。計算方法は次の告示で定められました。
(令和2年2月27日公布・同日施行/技術的助言:国住指第3958号)出典:国土交通省住宅局建築指導課長「建築基準法防火関係等告示の制定・改正について(技術的助言)」国住指第3958号(令和2年2月27日)
告示が定める「隣地境界線等からの距離 d」は次の式です。θ(シータ)は外壁面と隣地境界線等とのなす角度のうち最小のもの(単位:度)です。
告示197号の計算式
| 対象階 | 隣地境界線等からの距離 d(m) |
|---|---|
| 1階 | d₁ = max { 2.5 , 3 × ( 1 − 0.000068 θ² ) } |
| 2階以上 | d₂ = max { 4.0 , 5 × ( 1 − 0.000068 θ² ) } |
式を見ればわかるとおり、d には 2.5m・4.0m という下限(max の左側)が置かれています。つまり、どれだけ外壁を斜めに振っても、1階は3m→2.5mの0.5m、2階以上は5m→4.0mの1.0mまでしか縮みません。
| 角度 θ | 1階 d₁ | 1階の短縮量 | 2階以上 d₂ | 2階以上の短縮量 |
|---|---|---|---|---|
| 0°(境界線と平行) | 3.00m | 0 | 5.00m | 0 |
| 15° | 2.95m | −0.05m | 4.92m | −0.08m |
| 30° | 2.82m | −0.18m | 4.69m | −0.31m |
| 45° | 2.59m | −0.41m | 4.31m | −0.69m |
| 50° | 2.50m(下限に到達) | −0.50m | 4.15m | −0.85m |
| 60° | 2.50m(下限) | −0.50m | 4.00m(下限に到達) | −1.00m |
| 90°(境界線と直角) | 2.50m(下限) | −0.50m | 4.00m(下限) | −1.00m |
上表は告示197号の式に各角度を代入して算出(小数第3位四捨五入)。1階は θ ≒ 49.5°、2階以上は θ ≒ 54.2° で下限に達します。
ここが判断の分かれ目です。角度15°程度の「ちょっと斜め」では5〜8cmしか縮みません。計算書の作成コストと確認審査の手間に見合うのは、①外壁が45°以上振れている、②ちょうど数十cmだけ延焼ラインを外せば防火サッシが何枚も不要になる、といった場面に限られます。国土交通省の技術的助言も「本告示にかかわらず、従前の『延焼のおそれのある部分』をそのまま適用することも可能である」と明記しており、この緩和の適用は任意です。
角度緩和を使うときの2つの注意点(国住指第3958号)
- 適用は任意。計算が煩雑なら、あえて使わずに従来どおり1階3m・2階以上5mで作図しても差し支えありません。
- 使うなら図面に計算内容の明示が必要。助言は「本告示の規定に基づき、除外部分を計算した上で延焼のおそれのある部分を当該図書において明示する場合には、本告示の規定に基づき計算した内容も含めて明示する必要がある」とし、別図書に明示する場合は計算書を別途添付することとしています。
また、θを求める前提となる「一つの隣地境界線等」の捉え方についても助言があります。隣地境界線は「対象建築物の敷地に隣接する他の敷地の一との境界線」、道路中心線は「一の道路の中心線」、棟間の中心線は「建築物の外壁面の一と同一敷地内の他の建築物の外壁面の一との間の中心線」と整理され、境界線が複数の線分で構成される場合は、各線分を一つの隣地境界線等として捉えることとされています。曲線は複数の線分に、湾曲した外壁面は湾曲していない複数の外壁面に近似します。
緩和④ 棟間の高さ緩和(告示197号第1号ロ)― 中高層の棟間でしか効かない
4つ目は、同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線に限って使える高さ方向の緩和です。隣地境界線・道路中心線からの延焼ラインには使えません。
適用の前提として、その中心線に面する他の建築物が、主要構造部が準耐火構造であること等の一定の防火性能(延焼防止建築物・準延焼防止建築物を含む)を備えている必要があります。そのうえで、次の高さ h を超える部分が延焼ラインから除かれます。
高さ h の計算式(告示197号第1号ロ)
h = h(B) + H + 5 √( 1 − ( S / dfloor )² )
- h:他の建築物の地盤面からの高さ(m)。この h 以下の部分だけが延焼ラインに残る
- h(B):他の建築物の高さ(m)
- H:h(B) が5m未満なら 5、5m以上なら 10(m)
- S:建築物から隣地境界線等(=棟間の中心線)までの最短距離(m)
- dfloor:緩和③で算出した d のうち最大のもの(m)
式の右端の平方根は最大でも1なので、h の上限は h(B) + H + 5m です。相手の棟が高さ3m(h(B)<5m)なら h は最大13m、高さ6m(h(B)≧5m)なら最大21m。つまり、この高さより上の階でなければ緩和の効果は現れません。3階建て程度の棟間では実質的にほとんど使えず、中高層棟が並ぶ団地・工場・病院などの計画で意味を持つ緩和だと理解してください。
混同しやすい言葉の整理|延焼防止ライン・延焼防止建築物・延焼遮断帯・回り込み
「延焼ライン」と名前が似ている、あるいは同じ場面で出てくるのに中身がまったく違う言葉が4つあります。
| 言葉 | 正体 | スケール | 延焼ラインとの関係 |
|---|---|---|---|
| 延焼防止ライン | 法令用語ではない俗称 | ― | ほとんどの場合、延焼ライン(法2条6号)を指している |
| 延焼防止建築物 準延焼防止建築物 |
令136条の2第1号ロ・第2号ロの通称(建物1棟の性能) | 建物1棟 | この性能ルートを使う場合も、延焼ラインの作図は必須 |
| 延焼遮断帯 | 東京都の防災都市づくり推進計画に位置づけられた都市計画上の帯 | 都市 | まったく別物。新たな防火規制区域の指定根拠につながる |
| 「回り込み」 (令110条の2第2号) |
自分の建物の別の窓から回り込む火炎(自己延焼) | 建物1棟の中 | 延焼ラインの外でも対象になり得る |
「延焼防止ライン」は法令用語ではない
建築基準法にも消防法にも「延焼防止ライン」という用語はありません。実務で使われるときは、ほぼ確実に延焼ライン=延焼のおそれのある部分を指しています。次に述べる「延焼防止建築物」と混ざって生まれた言い方だと考えられます。
延焼防止建築物・準延焼防止建築物(令136条の2)は「線」ではなく「性能」
2019年(令和元年)6月25日施行の改正建築基準法61条で導入された性能規定ルートです。従来は「防火地域で3階建て以上なら耐火建築物」と仕様が固定されていましたが、改正後は耐火建築物と同等以上の延焼防止時間を確保できれば別の組み合わせでもよいことになりました。この性能ルートで建てた建築物を、実務では延焼防止建築物(令136条の2第1号ロ)・準延焼防止建築物(同第2号ロ)と通称します。いずれも法令上の正式な用語ではありません。
ここでいう「外壁開口部設備」は、同条で「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備」と定義されています。性能規定ルートを使う場合でも、延焼ラインを作図しなければ計算が始まりません。両者は対立する概念ではなく、延焼防止建築物の判定のなかに延焼ラインが組み込まれています。
| 号 | 地域と規模 | イ(仕様ルート) | ロ(性能ルート・通称) |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 防火地域:階数3以上、又は延べ面積100㎡超 準防火地域:地階を除く階数4以上、又は延べ面積1,500㎡超 |
耐火建築物 | 延焼防止建築物 |
| 第2号 | 防火地域:階数2以下かつ延べ面積100㎡以下 準防火地域:地階を除く階数3で1,500㎡以下/地階を除く階数2以下で500㎡超1,500㎡以下 |
準耐火建築物 | 準延焼防止建築物 |
| 第3号 | 準防火地域:地階を除く階数2以下・延べ面積500㎡以下(木造建築物等) | 延焼ライン部分の外壁・軒裏を防火構造+開口部は20分の遮炎性能 | 同等の延焼防止時間 |
| 第4号 | 準防火地域:地階を除く階数2以下・延べ面積500㎡以下(木造建築物等を除く) | 開口部に20分の遮炎性能 | 同等の延焼防止時間 |
| 第5号 | 高さ2m超の門・塀で、防火地域内の建築物に附属するもの、又は準防火地域内の木造建築物等に附属するもの | 延焼防止上支障のない構造 | |
【2025年4月から】第1号は「特定主要構造部」に変わっている
2025年(令和7年)4月1日施行の改正により、令136条の2第1号の条文は「主要構造部」ではなく「特定主要構造部」になりました。特定主要構造部は建築基準法2条9号の2イで「その主要構造部のうち、防火上及び避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分」と定義されています。屋根や階段など防火上・避難上支障のない部分を耐火性能の検証対象から外せるようになった、という意味です。
解説記事を読むときの注意:2025年3月以前に書かれた記事は「主要構造部」のままになっているものが多く、そのまま引用すると条文がずれます。なお、第2号(準耐火建築物・準延焼防止建築物のレンジ)は引き続き「主要構造部」です。第1号だけが変わった、という点も間違えやすいところです。
令110条の2第2号の「回り込み」は延焼ラインではない
法27条の特殊建築物について、施行令110条の2は防火設備が必要な開口部を2つ挙げています。
一 延焼のおそれのある部分であるもの(法第八十六条の四各号のいずれかに該当する建築物の外壁の開口部を除く。)
二 他の外壁の開口部から通常の火災時における火炎が到達するおそれがあるものとして国土交通大臣が定めるもの(前号に掲げるものを除く。)出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」第110条の2
第1号が延焼ライン(=敷地の外からの延焼)、第2号は「自分の建物の別の窓から回り込んでくる火炎」(=自己延焼)です。第2号はL字型・コの字型の平面で、内側の入隅にある窓どうしが向かい合うようなケースで問題になります。延焼ラインの外にあっても第2号で防火設備が必要になることがあるため、法27条がかかる特殊建築物では両方の検討が必要です。「入隅の窓」を検索して延焼ラインの解説にたどり着いた方は、探している条文はこちらの可能性があります。
なお第1号のカッコ書きにある法86条の4は、一団地認定・連担建築物設計制度等で複数建築物を一の敷地内にあるとみなす場合の特例です。認定・許可を受けた建築物が耐火建築物・準耐火建築物相当であれば、外壁開口部の制限が適用除外になります。同様の除外は令136条の2第1号イただし書き・第3号イただし書きにも置かれています。
延焼遮断帯・新たな防火規制区域(東京都)
延焼遮断帯は建築基準法ではなく、東京都震災対策条例に基づく「防災都市づくり推進計画」に位置づけられた都市計画レベルの考え方です。都市計画道路を中心に、河川・鉄道等により防災生活圏がおおむね一定の大きさになるようメッシュ状に配置され、「骨格防災軸」「主要延焼遮断帯」「一般延焼遮断帯」の3区分に分けられています。
| 道路等の幅員 | 延焼遮断機能を発揮する条件 |
|---|---|
| 27m以上 | 施設そのものが単独で機能を発揮する(沿道の不燃化率を問わない) |
| 24m以上27m未満 | 沿道建築物の不燃化率40%以上 |
| 16m以上24m未満 | 沿道建築物の不燃化率60%以上 |
| 11m以上16m未満 | 沿道建築物の不燃化率80%以上 |
出典:東京都都市整備局「防災都市づくり推進計画(第2章 防災都市づくりに関する地域等の指定等)」
広い道路さえあれば延焼が止まるわけではなく、道路が狭いほど沿道の建物を燃えにくくする必要がある、というのが東京都の考え方です。これが「新たな防火規制区域」(東京都建築安全条例7条の3)につながります。
新たな防火規制区域で求められる構造(東京都建築安全条例7条の3)
- 延べ面積500㎡以下:耐火建築物、準耐火建築物、又は令136条の2第1号イ・ロ、第2号イ・ロ、第5号の技術的基準に適合するもの(=準延焼防止建築物以上)
- 延べ面積500㎡超:耐火建築物、又は令136条の2第1号イ・ロの技術的基準に適合するもの(=延焼防止建築物以上)
- 高さ2m以下の門・塀、木造建築物等以外の建築物に附属する門・塀は対象外
出典:東京都例規集データベース「東京都建築安全条例」第7条の3
この規制は準防火地域の中の一部区域に上乗せでかかるため、「準防火地域だから木造2階建てで大丈夫」と思っていたら、実は新たな防火規制区域で準耐火建築物以上が必要だった、というケースが起こります。用途地域・防火地域だけでなく、区市町村の窓口で新たな防火規制区域の指定の有無を必ず確認してください。板橋区・北区・練馬区・豊島区など、都内の多くの区で指定されています。
【2025年4月改正】延焼ラインは「リフォーム」にも効くようになった
2025年(令和7年)4月1日施行の改正建築基準法で、いわゆる4号特例が縮小されました。いま延焼ラインを解説するうえで、最も影響が大きい変化です。
木造2階建てが「新2号建築物」になった
| 号 | 対象 | 確認が必要な行為 |
|---|---|---|
| 1号 | 別表第1(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡超 | 建築(新築・増築・改築・移転)/大規模の修繕/大規模の模様替 |
| 2号 (新2号) |
1号以外で、2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超える建築物 | 建築/大規模の修繕/大規模の模様替 |
| 3号 (新3号) |
1号・2号以外で、都市計画区域・準都市計画区域等の内にある建築物 | 建築のみ(大規模の修繕・模様替は確認不要) |
改正前は木造2階建て住宅の多くが旧4号建築物で、大規模の修繕・模様替に確認申請が不要でした。改正後、木造2階建ては新2号建築物になり、大規模の修繕・模様替も確認申請の対象になりました。
「外壁の過半の張り替え」は大規模の修繕にあたる
建築基準法2条14号は、大規模の修繕を「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」と定義しています。外壁は主要構造部の「壁」に含まれるため、外壁を過半にわたって張り替える工事は大規模の修繕に該当し得ます。
ここが実務のインパクトです。木造2階建て住宅の外壁を全面リフォームする場合、2025年4月以降は建築確認が必要になり得ます。そのとき、延焼ライン部分の外壁は防火構造、開口部は防火設備という現行基準への適合が審査されます。「昔からある窓だから」では通りません。防火地域・準防火地域や法22条区域での外壁改修は、着工前に必ず建築士へ確認してください。
10㎡以内の増築でも、防火地域・準防火地域なら確認が必要
あわせて押さえておきたいのが建築基準法6条2項です。「増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10㎡以内」で確認申請が不要になるのは、防火地域及び準防火地域「外」に限られます。防火地域・準防火地域内なら、たとえ2㎡の物置でも確認申請が必要です。そして、その増築部分が延焼ラインにかかれば、当然に防火仕様が求められます。
消防法にもある「3m・5m」と、消防同意
ここは競合記事がほとんど触れていない論点です。消防法施行令にも、建築基準法の延焼ラインとまったく同じ「1階3m以下・2階5m以下」の数字が出てきます。ただし効果は「防火仕様の義務づけ」ではなく「複数棟を1棟とみなして面積を合算する」というものです。
屋外消火栓設備(消防法施行令19条2項)
屋外消火栓設備は、床面積(地階を除く階数が1なら1階の床面積、2以上なら1階+2階の床面積の合計)が耐火建築物で9,000㎡以上、準耐火建築物で6,000㎡以上、その他の建築物で3,000㎡以上の場合に設置義務が生じます。同一敷地内に複数棟があって近接している場合、この面積が合算されて基準を超えることがあります。
建築基準法との3つの違い:①消防法側は「二階にあつては」であり、建築基準法の「二階以上」とは表現が異なります。②起点は「相互の一階の外壁間の中心線」だけで、隣地境界線や道路中心線は関係ありません。③耐火建築物及び準耐火建築物は、そもそもこの合算の対象から除かれます。数字が同じでも、まったく別のルールです。
消防用水(消防法施行令27条2項)
消防用水にも同様の規定があります。敷地面積20,000㎡以上で床面積が耐火建築物15,000㎡以上・準耐火建築物10,000㎡以上・その他5,000㎡以上の建築物が対象ですが、同一敷地内に複数棟あって相互の1階の外壁間の中心線から1階3m以下・2階5m以下の部分を持ち、かつ各棟の床面積を上記面積で除した商の和が1以上になる場合は、これらを一の建築物とみなします。大規模工場・物流施設の計画では見落とせない規定です。
消防同意 ― 延焼ラインは消防署も見ている
建築確認は、消防長・消防署長の同意がなければ下りません(消防法7条1項)。そして消防長等が審査するのは、計画が「法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定で建築物の防火に関するもの」に違反していないかどうかです(同条2項)。延焼ラインとそれに伴う防火設備は、まさにこの「防火に関する規定」に当たります。
消防同意の実務ポイント(消防法7条)
- 同意期限は3日又は7日。建築基準法6条1項3号(新3号建築物)に係る場合は同意を求められた日から3日以内、その他の場合は7日以内。同意できない事由があるときも、この期限内に通知されます。2025年4月の改正で号ずれが起きた箇所なので、古い解説の「4号に係る場合は3日」は現行条文と合いません。
- 防火地域・準防火地域外の一戸建て住宅は同意不要。ただし条文のカッコ書きで「長屋、共同住宅その他政令で定める住宅を除く」とされています。アパート・長屋は同意が必要です。
- 裏を返せば、防火地域・準防火地域内なら一戸建て住宅でも消防同意が必要です。延焼ラインの作図と防火設備の仕様は、建築主事等だけでなく消防署のチェックも通ることになります。
消防法施行令8条の「区画」とは別物
もう一つ混同しやすいのが、消防法施行令8条の区画です。これは①開口部のない耐火構造の床又は壁、②床・壁又は建築基準法2条9号の2ロに規定する防火設備のうち総務省令で定める防火上有効な措置が講じられたもので区画されている場合に、区画された部分をそれぞれ別の防火対象物とみなす規定で、消防用設備等の設置単位を分ける効果があります。延焼ラインとは目的も効果も無関係です。用途判定・設備判定の話をしているときに延焼ラインを持ち出すと議論が噛み合わなくなるので、切り分けて考えてください。
実務でつまずきやすい10のチェックポイント
- 道路は「境界線」ではなく「中心線」から測る。作図ミスの定番です。2項道路の通常ケース(両側後退)では、みなし道路の中心線は現況の中心線と一致します。崖地・川等に沿う一方後退のケースだけ中心線がずれます。
- 隣地が空き地でも延焼ラインは発生する。緩和イの対象は公園・河川など、将来も空地であることが担保された土地です。民有地の更地は該当しません。
- 棟間の500㎡は「敷地内の建築物の延べ面積の合計」。増築1棟で501㎡になると、既存棟の窓が突然延焼ラインにかかります。隣地・道路側の延焼ラインは面積と無関係に常に発生します。
- カーポート・物置・自転車置場も「建築物」。屋根と柱があれば建築物です。延べ面積の合計に算入され、それ自体が延焼ラインにかかることもあります。
- ちょうど3.0m・5.0mは「以下」なので対象に含まれる。ぎりぎりの設計は、わずかな測量誤差で判定が変わります。
- 角度緩和(告示197号)で縮むのは1階0.5m・2階以上1.0mまで。適用は任意ですが、使うなら図面に計算内容の明示(または計算書の添付)が必要です。
- 袖壁で逃げるときは「あらゆる部分」から遮られているか検証する。斜めから見通せる角度が1か所でも残っていれば、令109条2項は使えません。
- 法22条区域なのに軒裏・サッシまで防火仕様にしていないか。法23条が求めるのは木造建築物等の外壁の準防火性能だけです(延べ面積1,000㎡超の木造や特殊建築物は別)。
- 「新たな防火規制区域」等の条例上乗せを確認したか。用途地域・防火地域の指定だけを見て判断すると足元をすくわれます。
- 2025年4月以降、木造2階建ての大規模リフォームは確認申請の対象。外壁の過半改修で、延焼ライン部分の現行基準適合が審査されます。
用途変更・営業許可のときに延焼ラインが問題になる理由
行政書士の実務で延焼ラインが表に出てくるのは、新築のときよりも用途変更や営業許可の場面です。
建築の適法性は、許認可の「前提」になっている
飲食店営業許可、介護・障害福祉サービスの指定、旅館業・住宅宿泊事業(民泊)、認可外保育施設の届出――これらはいずれも、建物が建築基準法・消防法に適合していることを前提に審査されます。多くの手続きで検査済証の写しや消防法令適合通知書の提出が求められ、そこで建築側の問題が表面化します。
用途変更でよくある詰まり方
- 検査済証がない。古い建物では珍しくありません。用途変更の確認申請にあたって、法適合状況調査(ガイドライン調査)が必要になることがあります。
- 延焼ライン部分の開口部が普通のアルミサッシ。建築当時は法22条区域で開口部の規定がなかった、あるいは用途上不要だったものが、用途変更で法27条や法61条の対象になり、防火設備への交換が必要になります。
- 敷地内に無確認の増築棟がある。プレハブ倉庫などを確認申請なしで建てていると、敷地全体の延べ面積が変わり、棟間の延焼ラインも発生します。用途変更の申請段階で是正を求められます。
- 消防同意が下りない。建築側の防火規定に不適合があると、消防長・消防署長の同意が得られず、確認自体が進みません。
200㎡を超える用途変更は確認申請が必要
建築基準法6条1項1号の特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える用途変更には、確認申請が必要です(法87条1項)。事務所を飲食店に、倉庫を福祉施設に、といった変更でここに引っかかります。200㎡以下なら確認申請は不要ですが、建築基準法や消防法の実体規定そのものは適用される点を誤解しないでください。「確認申請が要らない=何もしなくてよい」ではありません。
消防設備や防火管理の側から整理したい場合は、東京の消防手続支援ステーションで用途判定や届出の解説をまとめています。許認可全体の段取りからご相談される場合は、行政書士萩本昌史事務所へどうぞ。
CONSULTATION
延焼ラインで、許認可が止まってしまう前に
延焼ラインの判定そのものは建築士の領域ですが、その先にある用途変更・営業許可・消防届出は行政書士の領域です。「この建物でこの営業ができるのか」「どの順番で手続きを進めればよいのか」を、建築・消防・許認可の3方向から一度に整理します。
行政書士萩本昌史事務所/東京都・全国対応。延焼ラインの判定そのものは建築士・特定行政庁の所管ですが、必要に応じて建築士と連携し、許認可までの全体設計をお手伝いします。
よくある質問(FAQ)
- Q. 延焼ラインとは何ですか。建築基準法の何条ですか?
- A. 建築基準法2条6号に定義された「延焼のおそれのある部分」の通称です。隣地境界線・道路中心線・同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線から、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある建築物の部分をいいます。2条6号は定義規定なので、それ自体は義務を課しません。防火仕様は法23条・法25条・法27条・法61条など、この言葉を引用する条文によって決まります。
- Q. 3mと5mはどこから測るのですか?
- A. ①隣地境界線、②道路中心線、③同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線、の3つからです。建物の壁からではありません。1階部分は3m以下、2階以上の部分は5m以下の範囲が延焼ラインです。3階でも10階でも5mで、階が上がるほど広がるわけではありません。
- Q. 「延焼ライン」は正式名称ですか。「延焼防止ライン」との違いは?
- A. 「延焼ライン」も「延焼防止ライン」も法令用語ではありません。正式名称は「延焼のおそれのある部分」(建築基準法2条6号)です。「延焼防止ライン」は、名前の似た「延焼防止建築物」(建築基準法施行令136条の2第1号ロの通称)と混ざって生まれた言い方と考えられますが、実務でこの言葉が使われるときはほぼ延焼ラインを指しています。
- Q. 道路の向かい側に建物がなければ延焼ラインは発生しませんか?
- A. 発生します。道路中心線から測るため、向かい側の建物の有無は関係ありません。ただし道路が広ければ延焼ラインが敷地に届かないことはあります。外壁を道路境界線上に建てる場合、幅員が6mを超えれば1階の道路側は、10mを超えれば2階以上も延焼ラインから外れます。ちょうど6m・10mは「以下」に含まれるため対象です。
- Q. 2項道路(セットバックが必要な道路)の場合、起点はどこになりますか?
- A. 建築基準法42条2項は、幅員4m未満の道について「その中心線からの水平距離2mの線をその道路の境界線とみなす」と定めています。したがって両側後退の通常のケースでは、みなし道路の中心線は現況道路の中心線と一致し、動きません。中心線が動くのは、同項ただし書きの崖地・川・線路敷地等に沿う一方後退のケースで、この場合は崖地等側の境界線から水平距離4mの線が道路境界線とみなされるため、みなし道路の中心線は崖地等側の境界線から2mの位置になります。
- Q. 隣が空き地なら延焼ラインは免除されますか?
- A. 免除されません。建築基準法2条6号ただし書きイの「防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面」は、公園や河川のように将来にわたって建物が建たないことが担保された土地を想定しています。民有地の更地や月極駐車場は該当しません。
- Q. 同じ敷地に2棟あると必ず延焼ラインが出ますか?
- A. いいえ。建築基準法2条6号のカッコ書きにより、延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は一の建築物とみなされるため、棟間の延焼ラインは発生しません。合計が500㎡を超えると、棟と棟の外壁間の中心線から延焼ラインが発生します。なお、隣地境界線・道路中心線からの延焼ラインは面積に関係なく常に発生します。
- Q. 延焼ラインにかかったら、必ず防火サッシが必要ですか?
- A. いいえ。必要かどうかは区域と規模で決まります。防火地域・準防火地域なら開口部に20分の遮炎性能をもつ防火設備が必要ですが、法22条区域には開口部の規定自体がなく、防火サッシは不要です。防火地域・準防火地域でも法22条区域でもない無指定区域で、木造1,000㎡以下・非特殊建築物なら、延焼ラインを理由とする要求は原則としてありません。
- Q. 法22条区域では、延焼ライン部分の軒裏や窓はどうすればよいですか?
- A. 法22条区域で延焼ラインを理由に義務が生じるのは、法23条に基づく木造建築物等の「外壁」の準防火性能(加熱開始後20分/建築基準法施行令109条の10)だけです。条文に軒裏も開口部も出てこないため、軒裏の防火構造も窓の防火サッシも不要です。ただし延べ面積1,000㎡超の木造建築物等(法25条)や法27条の特殊建築物、自治体条例の上乗せがある場合は別途検討が必要です。
- Q. 防火規制のない無指定地域でも、延焼ラインは関係ありますか?
- A. 延焼ラインという「範囲」自体はどこでも定義されますが、無指定区域で木造1,000㎡以下・非特殊建築物であれば、延焼ラインを理由とする仕様の義務は原則としてかかりません。ただし延べ面積1,000㎡超の木造建築物等は全国どこでも外壁・軒裏を防火構造とする必要があり(法25条)、法27条の特殊建築物や、耐火建築物・準耐火建築物とすることが求められる場合も別です。
- Q. 角度による緩和(告示197号)は必ず使わなければいけませんか。どれくらい縮みますか?
- A. 適用は任意です。国土交通省住宅局建築指導課長の技術的助言(国住指第3958号・令和2年2月27日)は「本告示にかかわらず、従前の『延焼のおそれのある部分』をそのまま適用することも可能である」と明記しています。縮む量は限定的で、1階は3mから最小2.5m、2階以上は5mから最小4.0mまでです。角度15°なら1階で5cm程度しか変わりません。使う場合は確認申請図書に計算内容の明示、または計算書の添付が必要です。
- Q. 袖壁や塀を立てれば防火設備を避けられますか?
- A. 建築基準法施行令109条2項により、隣地境界線等の「あらゆる部分」で開口部から1階3m以下・2階以上5m以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁・袖壁・塀等は、防火設備とみなされます。ポイントは「あらゆる部分」で、斜めから見通せる角度が1か所でも残っていればこの規定は使えません。平面図上で境界線を細かく刻んで検証してください。
- Q. 地階や敷地の高低差はどう扱いますか?
- A. 建築基準法2条6号は「一階」「二階以上」としか定めておらず、地階についての明文がありません。実務では地盤面下に埋まっている部分には延焼ラインを考えない一方、ドライエリア等で外壁が地上に現れる部分は1階に準じて扱う運用が一般的ですが、特定行政庁や指定確認検査機関によって判断が分かれます。高低差についても明文はなく、延焼ラインは水平距離で判定します。設計前に窓口で確認してください。
- Q. カーポートや物置も延焼ラインの対象になりますか?
- A. なります。建築基準法2条1号は建築物を「屋根及び柱若しくは壁を有するもの」等と定義しており、屋根と柱があるカーポート・サイクルポート・物置は建築物です。敷地内の延べ面積の合計に算入され、棟間500㎡の判定に影響しますし、それ自体が隣地境界線・道路中心線からの延焼ラインにかかります。ただし開放的な自動車車庫等には、法84条の2と建築基準法施行令136条の10による別ルートがあります。
- Q. 屋根は延焼ラインの範囲だけ不燃化すればよいですか?
- A. 逆です。防火地域・準防火地域内の屋根(法62条)にも、法22条区域の屋根(法22条1項)にも「延焼のおそれのある部分」という限定がなく、区域内なら屋根は全面が対象です。例外は法22条1項ただし書きで、茶室・あずまや等または延べ面積10㎡以内の物置・納屋等について「屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分」を除外する場面だけです。
- Q. 延焼ラインにかかる窓を交換したり外壁を張り替えたりするとき、確認申請は必要ですか?
- A. 窓の交換だけであれば大規模の修繕・模様替に当たらないのが通常ですが、外壁を過半にわたって改修する場合は大規模の修繕に該当し得ます。2025年(令和7年)4月1日施行の改正で木造2階建て等は「新2号建築物」となり、大規模の修繕・模様替も確認申請の対象になりました。その場合、延焼ライン部分の外壁・開口部について現行基準への適合が審査されます。防火地域・準防火地域や法22条区域での外壁改修は、着工前に建築士へご確認ください。
- Q. 消防署も延焼ラインをチェックしますか?
- A. します。建築確認には消防長又は消防署長の同意が必要で(消防法7条1項)、同意にあたっては建築物の防火に関する法令の規定に適合しているかが審査されます(同条2項)。延焼ラインと防火設備はその審査対象です。同意期限は建築基準法6条1項3号に係る場合が3日以内、その他が7日以内。防火地域・準防火地域外の一戸建て住宅は同意不要ですが、長屋・共同住宅は同意が必要です。
- Q. 延焼ラインと「延焼するおそれがある外壁の開口部」は同じですか?
- A. 違います。建築基準法施行令110条の2は、法27条の特殊建築物について、第1号で延焼のおそれのある部分の開口部を、第2号で「他の外壁の開口部から通常の火災時における火炎が到達するおそれがあるもの」を挙げています。第2号は自分の建物の別の窓から回り込む火炎(自己延焼)を指し、L字型・コの字型の入隅で問題になります。延焼ラインの外でも対象になり得ます。
まとめ
延焼ラインの要点
- 延焼ラインの正式名称は「延焼のおそれのある部分」(建築基準法2条6号)。起点は隣地境界線・道路中心線・同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線、距離は1階3m以下・2階以上5m以下。ちょうど3.0m・5.0mも含みます。
- 道路側は中心線から。外壁を道路境界線上に建てるなら、幅員6m超で1階、10m超で2階以上も外れます。2項道路の両側後退では、みなし道路の中心線は動きません。
- 棟間の延焼ラインは、敷地内の延べ面積の合計が500㎡以内なら発生しない。501㎡を超えた瞬間に発生します。
- 2条6号は定義規定。義務は区域と規模で決まります。防火地域・準防火地域=開口部に防火設備、法22条区域=外壁だけ(軒裏・サッシは不要)、無指定=原則として要求なし。ただし木造1,000㎡超(法25条)と法27条の特殊建築物は全国共通です。
- 緩和は①公園・川・耐火構造の壁(ただし書きイ)②袖壁・塀(令109条2項の「あらゆる部分」)③角度緩和(告示197号)④棟間の高さ緩和の4つ。③で縮むのは1階0.5m・2階以上1.0mが限界で、適用は任意、使うなら図面に計算内容の明示が必要です。
- 名前の似た延焼防止建築物・準延焼防止建築物(令136条の2)、延焼遮断帯(東京都)、回り込み(令110条の2第2号)は、いずれも延焼ラインとは別概念です。
- 2025年4月施行の改正で、木造2階建て等の大規模の修繕・模様替も確認申請の対象に。外壁の過半改修で延焼ラインの仕様が審査されます。
- 消防法にも同じ3m・5mの規定(令19条2項・令27条2項)がありますが、効果は面積の合算で別物。建築確認には消防同意が必要で、延焼ラインは消防署も見ています。
延焼ラインの判定そのものは建築士・特定行政庁の所管ですが、その先の用途変更・営業許可・消防届出でつまずくケースが本当に多い分野です。「この建物でこの営業を始められるか」を早い段階で確認しておくことが、結果的にいちばんコストを抑える方法になります。お困りの際は、行政書士萩本昌史事務所までお気軽にご相談ください。
この記事で参照した一次資料
- e-Gov法令検索「建築基準法(昭和25年法律第201号)」第2条第5号・第6号・第8号・第9号の2・第9号の3・第14号、第6条、第22条、第23条、第25条、第26条、第27条、第42条、第61条、第62条、第84条の2、第86条の4、第87条
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)」第108条、第109条、第109条の2、第109条の10、第110条の2、第112条、第136条の2、第136条の10
- e-Gov法令検索「消防法(昭和23年法律第186号)」第7条
- e-Gov法令検索「消防法施行令(昭和36年政令第37号)」第8条、第19条、第27条
- 令和2年国土交通省告示第197号「建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのない部分を定める件」
- 国土交通省住宅局建築指導課長「建築基準法防火関係等告示の制定・改正について(技術的助言)」国住指第3958号(令和2年2月27日)
- 平成12年建設省告示第1360号「防火設備の構造方法を定める件」
- 東京都都市整備局「防災都市づくり推進計画」第2章 防災都市づくりに関する地域等の指定等
- 東京都例規集データベース「東京都建築安全条例」第7条の3
※本記事は2026年8月26日時点で施行されている法令に基づいて作成しています。延焼のおそれのある部分の判定・確認申請の要否は、個別の敷地条件や特定行政庁の運用により異なります。設計・構造の判断は建築士に、最終的な適用関係は特定行政庁・所轄消防署にご確認ください。
