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結論:離婚協議書を公正証書にする費用は、(1)協議書案づくりの支援費用と、(2)公証役場に支払う公証人手数料に分けて考えます。手数料は「目的の価額」で決まり、養育費・慰謝料・財産分与などの金額や条項によって変わるため、合意内容を固めてから見積もるのが安全です(公証人手数料令9条・13条)。
離婚条件を口約束にせず、書面に残したいという相談は少なくありません。特に養育費や慰謝料の分割払いがある場合、公正証書に強制執行認諾文言(強制執行認諾条項)を入れるかどうかが重要になります。費用だけでなく、何をどこまで決めるか、将来の変更方法まで含めて整理しましょう。
この記事で分かること
- 離婚協議書と公正証書で、費用がどう分かれるか
- 公証人手数料の決まり方(目的の価額、養育費は5年分が上限)
- 作成前に決めておく項目(親権・養育費・親子交流・財産分与・年金分割)
- 2026年4月1日施行の改正民法で変わった点
- 公証役場での作成の流れと、専門家に相談する目安
離婚協議書と公正証書の費用を分けて考える
離婚協議書は、夫婦が作成する私文書です。これに対して公正証書は、公証人が公証人法に基づいて作成する公文書で、公証役場に手数料を支払います。作成前に夫婦間の合意ができていることが前提で、公証役場に丸投げして条件を決めてもらうものではありません。財産や子どもの生活に関する情報を整理し、支払額・支払日・振込先・遅れた場合の扱いを具体化します。
父母の離婚後の親権・養育費・親子交流のルールは、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)により2026年(令和8年)4月1日から変わりました。改正の全体像は法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」で確認できます。
公証人手数料は「目的の価額」で決まる
法律行為に関する公正証書の作成手数料は、目的の価額の区分ごとに政令で定められています(公証人手数料令9条・別表)。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 3,000円(50万円以下)/5,000円(50万円超100万円以下) |
| 100万円超200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 49,000円 |
養育費のように定期的に支払うものは、全期間の給付の総額が目的の価額になりますが、「子の監護に要する費用の分担」については5年分の総額が上限です(公証人手数料令13条1項ただし書)。賃貸借など他の定期給付の上限が10年分であるのとは異なるため、「養育費は10年分で計算する」という説明には注意してください。
このほか、正本・謄本の交付は1枚300円(同令40条)、強制執行の前提となる送達の手数料は1,600円(同令39条)がかかります。慰謝料・財産分与と養育費は性質が異なるため、実務上は別々に価額を算定したうえで合算します。最新の取扱いは日本公証人連合会「手数料」と、依頼する公証役場で確認してください。
作成前に決めておく項目
| 確認項目 | 見るポイント | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 親権者 | 父母の協議で、その双方または一方を親権者と定める(民法819条1項) | 2026年4月1日施行の改正民法により、協議離婚でも父母双方を親権者と定められるようになった |
| 子の監護 | 監護者、監護の分掌、親子交流(民法766条1項) | 改正民法で条文上は「父又は母と子との交流(親子交流)」に整理された。金銭給付ではないため強制執行認諾文言の対象外 |
| 養育費 | 金額、支払期間、支払日、振込先、増減額の協議方法 | 取決めをせずに協議離婚すると、法定養育費(民法766条の3、子1人につき月2万円)の問題になる |
| 慰謝料・財産分与 | 金額、支払方法、分割払いなら期限の利益喪失条項 | 家庭裁判所に財産分与を請求できるのは離婚の時から5年以内(民法768条2項ただし書。改正で2年から5年に延長) |
| 年金分割 | 合意分割の按分割合 | 当事者双方が年金事務所に出向く場合を除き、公正証書の謄本・抄本または公証人の認証を受けた私署証書が必要。請求期限は原則5年(2026年4月1日より前の離婚は2年) |
| 公証手数料 | 目的の価額や条項で変動 | 養育費は5年分が上限。正本・謄本や送達の手数料も別途かかる |
強制執行認諾文言を入れる意味
金銭の一定の額の支払を目的とする請求について、債務者が「直ちに強制執行に服する」旨の陳述を記載した公正証書は「執行証書」となり、あらためて裁判をしなくても強制執行の債務名義になります(民事執行法22条5号)。逆にいえば、親子交流の実施方法のように金銭給付でない条項は、この対象になりません。
また、養育費などの扶養義務等に係る債権では、給与の差押えが禁止される範囲が原則の4分の3から2分の1に緩和されており(民事執行法152条3項)、回収の実効性が高まります。2026年4月1日施行の改正民法では、養育費等の債権に先取特権が認められました(民法306条3号・308条の2)。
手続きの進め方を4段階で整理
1. 財産と子どもの状況を洗い出す
まず、預貯金・保険・不動産・住宅ローン・退職金・年金記録などを一覧にし、子どもの年齢や進学予定、監護の実情を整理します。資料が散らばっている場合は、一覧表を作って不足を見える化します。
2. 協議書案(公正証書の原案)にまとめる
合意内容を条項の形にします。「毎月末日までに、○○名義の口座に振り込む」のように、金額・期日・方法を特定します。将来の増減額や、再婚・進学があった場合の協議方法もあわせて定めておきます。
3. 公証役場に事前相談し、見積りを受ける
原案と必要書類(運転免許証などの本人確認資料と印鑑、戸籍謄本、不動産の登記事項証明書、年金分割のための情報通知書など)を示して事前相談します。必要書類と手数料は事案によって異なるため、公証役場に直接確認します。
4. 作成日に署名し、正本・謄本を受け取る
作成日は夫婦そろって公証役場へ出向き、内容を確認して署名押印します(代理人による作成が認められる場合もありますが、委任状や印鑑証明書の要否は公証役場に確認してください)。作成後は正本・謄本を保管し、強制執行に備える場合は送達の手続きまで済ませておきます。
自分で進めるときの注意点
費用だけを先に調べても、条項の内容が決まらなければ手数料は確定しません。特に、支払期日や振込先をあいまいにする、分割払いなのに期限の利益喪失条項を入れない、金銭給付でない約束に強制執行を期待する、といったつまずきが起こりやすいため、条項ごとに「守られなかったらどうするか」を確認してください。
- 養育費の終期(○歳に達した後の3月まで、など)を明確にする
- 分割払いには期限の利益喪失条項を入れる
- 年金分割は「年金分割のための情報通知書」を先に取得する
- 住宅ローン付き不動産は、名義とローン契約の扱いを分けて考える
- 正本・謄本の保管場所と、送達の要否を決めておく
専門家へ相談した方がよいケース
財産の種類が多い、住宅ローンが残っている、相手方と直接やり取りしにくい、子どもの監護をめぐって対立がある場合は、早めの相談で手戻りを減らせます。行政書士が支援できる範囲を整理し、登記・訴訟・税務など他士業の対応が必要な場合は適切に連携します。当事者間に争いがあり交渉や代理が必要な事案は、弁護士の業務範囲です。
手続きの整理から、行政書士萩本昌史事務所へ
財産・子ども・支払条件を一覧化し、協議書案の作成、公証役場へ伝える内容の整理を支援します。紛争性が高い場合は、弁護士への相談をおすすめします。
よくある質問
Q1. 離婚協議書は自分たちだけで作れますか?
作れます。ただし公正証書にする場合は、公証人が確認できる形に条項を整える必要があり、資料の収集や表現の調整に時間がかかります。特に強制執行を見据えるなら、金額と期日の特定が欠かせません。
Q2. 費用はどのように決まりますか?
公証人手数料は目的の価額で決まり(公証人手数料令9条・別表)、これに正本・謄本の交付手数料(1枚300円)や送達手数料(1,600円)が加わります。さらに戸籍謄本などの取得実費、専門家に依頼する場合はその報酬がかかります。
Q3. 相談時に何を準備すればよいですか?
本人確認資料、戸籍謄本、預貯金や保険の資料、不動産の登記事項証明書、住宅ローンの残高が分かるもの、年金分割のための情報通知書など、関係しそうなものを一式お持ちください。足りない資料は相談後に整理できます。
まとめ
費用は、協議書案づくりの支援費用と公証人手数料に分けて考えます。手数料は目的の価額で決まり、養育費は5年分が上限です。2026年4月1日施行の改正民法で、共同親権・法定養育費・親子交流・財産分与の期間(5年)などが変わっているため、古い情報のまま条件を決めないよう注意してください。
根拠法令・参考リンク
- 民法819条1項(親権者の定め)、766条1項(子の監護・親子交流)、766条の3(法定養育費)、768条2項(財産分与)、306条3号・308条の2(先取特権)
- 民事執行法22条5号(執行証書)、152条3項(差押禁止債権の特例)
- 公証人手数料令9条・別表、13条1項(定期の給付)、39条(送達)、40条(正本等の交付)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
- 日本公証人連合会「手数料」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事情により結論や必要書類が異なるため、手続き前に公証役場・年金事務所または専門家へ確認してください。
