東京都行政書士会世田谷支部所属・目黒区在住の特定行政書士です。

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行政書士萩本昌史事務所
代表者 特定行政書士 萩本昌史
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旅行業登録の完全ガイド|4区分の違い・必要書類・費用・期間を条文つきで解説

旅行業登録の完全ガイド|4区分の違い・必要書類・費用・期間を条文つきで解説
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旅行業登録は、「報酬を得て」「旅行業法2条1項各号の行為を」「事業として」行う場合に必要になる登録です。無登録で営業すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(旅行業法74条1号/2025年6月1日から「懲役」が「拘禁刑」に)の対象になります。

この記事では、第1種・第2種・第3種・地域限定の4区分の違い、必要書類、費用、期間、登録後に続く義務までを、旅行業法・同施行令・同施行規則・登録免許税法施行令・東京都の申請案内書という一次資料の条文番号つきで整理しました。ネット上の解説記事で誤りが多い論点(登録免許税・弁済業務保証金分担金・第3種の営業範囲など)も、根拠条文とあわせて訂正しています。

この記事の結論(先に要点だけ)

  • 登録が要るか=「報酬」「法2条1項の行為」「事業性」の3つがそろうかで決まる。旅行者ではなく旅行業者のために手配するだけなら旅行業ではなく「旅行サービス手配業」。
  • どの区分か=海外の募集型企画旅行をやるなら第1種(観光庁長官登録)。それ以外は都道府県知事登録(旅行業法施行令5条1項)。
  • お金=基準資産額(第2種700万円/第3種300万円/地域限定100万円)+営業保証金(協会に入れば5分の1の分担金)。
  • 登録免許税9万円がかかるのは第1種だけ。第2種・第3種・地域限定・代理業は登録免許税ゼロで、代わりに都道府県手数料(東京都は9万円)。
  • 最大の落とし穴=登録の通知を受けてから14日以内に供託または分担金納付+届出をすること。届出前に営業を始めると100万円以下の罰金(法77条)。

※本記事は2026年9月8日時点の旅行業法・同施行令・同施行規則および東京都の公表資料に基づいています。金額・期間は登録行政庁により運用が異なる場合があります。

旅行業登録とは|「登録が必要かどうか」を決める3つの要件

旅行業法3条は「旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない」と定めています。ここでいう「旅行業」に当たるかどうかは、次の3要件をすべて満たすかで判断します。

要件1:報酬を得ていること

旅行業法2条1項は「報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業」と定義しています。ここでの「報酬」は、旅行者から受け取る手数料に限りません。運送機関や宿泊施設から受け取るコミッション、参加費に上乗せした事務手数料、会費や協賛金の中に実質的に含まれている対価なども報酬と評価されます。「利益は出していない」「実費だけもらっている」という説明では、報酬性は否定されにくいのが実務です。

要件2:旅行業法2条1項各号の行為を行うこと

旅行業法2条1項は1号から9号まで、旅行業に当たる行為を列挙しています。整理すると次の4つに集約されます。

行為 条文 具体例
企画旅行の実施(募集型・受注型) 法2条1項1号・2号 行程と代金を自社で決めてツアーを組み、運送・宿泊を自己の計算で手配して販売する
手配旅行(旅行者のための代理・媒介・取次ぎ) 法2条1項3号・6号 旅行者の依頼で航空券やホテルを取る、団体旅行のバスを押さえる
運送等サービス提供者のための代理・媒介 法2条1項4号・7号 ホテルの委託を受けて旅行者に客室を販売する
他人の運送機関・宿泊施設を利用した提供/案内・相談 法2条1項5号・8号・9号 他社のバスを使って着地型の体験商品を売る、有償の旅行相談

なお、専ら運送サービスを提供する者のために、旅行者に対する運送サービスの提供について代理して契約を締結する行為だけを行う事業は、法2条1項柱書の括弧書きで旅行業から除かれています(いわゆる乗車券・航空券の代売のみのケース)。

要件3:事業として(反復継続して)行うこと

1回きりの行為ではなく、反復継続の意思をもって行うことが必要です。ただし「年に数回だけ」「本業のかたわら」でも、継続の意思があれば事業性は認められます。規模の大小や日帰りかどうかは、登録の要否を左右しません。

登録が不要になる主なケース

ケース 結論 根拠
旅行者ではなく旅行業者のために運送・宿泊を手配する(ランドオペレーター) 旅行業登録は不要。ただし旅行サービス手配業の登録が必要 法2条6項・法23条
旅行業者が、他の旅行業者のために手配も行う 手配業の登録は不要(旅行業登録でカバーされる) 法34条1項
自社が保有する車両・自社施設だけで完結するサービス 「他人の経営する運送機関又は宿泊施設」に当たらず旅行業ではない 法2条1項5号
無償のボランティア引率、実費精算のみで報酬性がないもの 報酬要件を欠けば旅行業ではない(判断は慎重に) 法2条1項柱書

ランドオペレーター側の登録については旅行サービス手配業務取扱管理者とは|ランドオペレーター必須資格の取り方と5年ごとの研修義務で詳しく解説しています。

無登録営業の罰則

無登録で旅行業を営んだ者は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科です(法74条1号)。法人の従業者が違反すれば、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます(両罰規定・法82条)。

なお2025年(令和7年)6月1日に刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第68号)が施行され、旅行業法の罰則も「懲役」から「拘禁刑」に置き換わりました。それ以前に書かれた解説記事の罰則表記は現行法と一致しません。

旅行業の4区分+2業種|違いを一覧で比較する

旅行業の「登録業務範囲」は旅行業法施行規則1条の3で4種類に分かれます。ここに旅行業者代理業と旅行サービス手配業を加えた6つが、旅行に関わる登録制度の全体像です。

区分 募集型企画旅行 受注型企画旅行 手配旅行 登録行政庁
第1種旅行業 海外・国内とも可 海外・国内とも可 海外・国内とも可 観光庁長官
第2種旅行業 国内のみ可(海外は不可 海外・国内とも可 海外・国内とも可 都道府県知事
第3種旅行業 拠点区域内のみ可 海外・国内とも可 海外・国内とも可 都道府県知事
地域限定旅行業 拠点区域内のみ可 拠点区域内のみ可 拠点区域内のみ可 都道府県知事
旅行業者代理業 所属旅行業者が委託した範囲の旅行業務のみ(所属できるのは1社だけ/法6条1項11号) 都道府県知事
旅行サービス手配業 旅行業者のための手配のみ。旅行者と直接契約はできない 都道府県知事

「拠点区域」の正確な定義

第3種・地域限定を左右するのが「拠点区域」です。施行規則1条の3第3号は、拠点区域を次の3つの合計と定めています。

  • 一の自らの営業所の存する市町村(特別区を含む)の区域
  • これに隣接する市町村の区域
  • 観光庁長官の定める区域

ここで押さえておきたいのは、第3種の制限は「場所」の制限であって「日数」の制限ではないという点です。「第3種は日帰りツアーしか組めない」という説明を見かけますが、条文にそのような制限はありません。募集型企画旅行の出発地・目的地・宿泊地・帰着地がすべて拠点区域内に収まっていれば、1泊2日でも実施できます。逆に日帰りでも拠点区域をはみ出せば第3種では実施できません。

第3種と地域限定の決定的な違い

第3種は募集型企画旅行だけが拠点区域に縛られ、受注型企画旅行と手配旅行は海外を含めて全国どこでも取り扱えます。一方の地域限定は、募集型・受注型・手配旅行のすべてが拠点区域内に限られます(施行規則1条の3第4号)。

「着地型観光の商品を作りたいが、団体からの受注旅行や航空券の手配も受けたい」なら第3種、「地域内の体験商品だけで完結する」なら地域限定、という選び分けになります。

登録行政庁が分かれる理由

法3条の条文上は「観光庁長官の行う登録」ですが、旅行業法施行令5条1項が「本邦外の募集型企画旅行を実施しない旅行業」の事務を都道府県知事に委ねているため、実際に観光庁長官が扱うのは第1種だけです。第2種・第3種・地域限定・代理業は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に申請します(施行規則1条の2第1項)。

旅行業登録の要件|ヒト・カネ・欠格事由

財産的基礎(基準資産額)

登録拒否事由のひとつに「財産的基礎を有しないもの」があり(法6条1項10号)、その基準額は施行規則3条で定められています。

区分 基準資産額
第1種旅行業 3,000万円以上
第2種旅行業 700万円以上
第3種旅行業 300万円以上
地域限定旅行業 100万円以上
旅行業者代理業 要件なし

算定方法は施行規則4条に定めがあり、東京都の申請案内書は次の算式を示しています。

基準資産額={資産の総額 -(創業費その他の繰延資産)-(営業権)-(不良債権)}- 負債の総額 -(所要の営業保証金または弁済業務保証金分担金)

見落としやすいのが末尾の「所要の営業保証金または分担金を差し引く」という部分です。たとえば第2種で協会に加入せず1,100万円を供託する場合、基準資産額700万円を満たすには、純資産が1,800万円相当なければ足りません。また東京都は不良債権も控除対象として明示しています(回収見込みのない役員貸付金などが典型)。判定は申請前直近の事業年度の確定決算書で行います。

旅行業務取扱管理者の選任

営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任しなければならず(法11条の2第1項)、これは従業員が1人しかいない営業所にも適用されます(同3項)。選任者が全員欠けた場合、新たに選任するまで旅行業務に関する契約を締結できません(同2項)。

資格は3種類あり、営業所が取り扱う旅行の範囲で必要な資格が決まります(法11条の2第6項、法11条の3第2項)。

営業所が取り扱う旅行 必要な資格
海外旅行を含む 総合旅行業務取扱管理者
国内旅行のみ 総合 または 国内旅行業務取扱管理者
拠点区域内の国内旅行のみ 総合・国内 または 地域限定旅行業務取扱管理者(当該地域に係るものに限る)

「資格は総合と国内の2種類」と書かれた解説を見かけますが、2018年(平成30年)1月4日施行の改正で地域限定旅行業務取扱管理者が創設され、現在は3種類です。ただし東京都の新規登録申請案内書(第2種・第3種・地域限定)は「総合又は国内の旅行業務取扱管理者を選任すること」と記載しています。地域限定資格での選任を予定する場合は、事前に登録行政庁へ確認してください。

実務で効いてくる細かいルールは次のとおりです。

  • 他の営業所との兼任は原則禁止(法11条の2第4項)。
  • ただし営業所間の距離の合計が40km以下なら、複数営業所を通じて1人で足ります(同5項、施行規則10条の2)。ただし地域限定旅行業では使えず、また当該複数営業所の前事業年度の取引額合計が1億円を超える場合も不可です(施行規則10条の3)。
  • 事業者は管理者に対し5年ごとに旅行業協会の研修を受けさせる義務があります(法11条の2第7項、施行規則10条の6)。義務を負うのは管理者本人ではなく事業者側で、怠ると勧告・命令の対象となり、命令違反は30万円以下の罰金です(法79条5号)。
  • 東京都は従業員数10人以上の営業所には複数の管理者を選任するよう求めています。

登録拒否事由(欠格事由)

法6条1項は11号にわたって登録拒否事由を定めています。実務上つまずきやすいのは次の点です。

  • 拘禁刑以上の刑に処せられ、または旅行業法違反で罰金刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない者(法6条1項2号)。2025年6月1日より前の解説記事は「禁錮以上の刑」と書かれていますが、現行条文は「拘禁刑以上の刑」です。
  • 旅行業・代理業・手配業の登録を取り消され5年を経過しない者。法人の場合、聴聞の公示日前60日以内に役員だった者も含みます(同1号)。
  • 申請前5年以内に旅行業務・旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者(同4号)。
  • 法人は役員のうち1人でも該当者がいればアウト(同7号)。監査役を含む登記上の役員が対象です。
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者(同8号)。

東京都で申請する場合の商号・目的のチェック

東京都は申請前に次の2点を確認するよう案内しています。

  • 商号:既存の旅行業者との類似商号を避けるため、申請書提出前に電話等で確認すること。
  • 目的:定款・履歴事項全部証明書ともに、必ず「旅行業」または「旅行業法に基づく旅行業」とすること。

「観光事業」「旅行の企画・運営」といった書き方では通らないことがあります。会社設立とセットで進める場合は、定款作成の段階で文言を確定させておくと目的変更登記の費用と時間を節約できます。

旅行業登録にかかる費用|営業保証金・分担金・手数料・登録免許税

営業保証金の額は「取引額」で決まる

営業保証金は区分ごとの固定額ではなく、前事業年度の旅行者との取引額に応じて施行規則7条・別表第一で決まります。新規登録のときはまだ実績がないため、申請書に添付した年間取引見込額を基礎に算定します(施行規則6条の2第1項1号・2項1号)。

年間取引(見込)額 第1種 第2種 第3種 地域限定
400万円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 15万円
400万円以上5,000万円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 100万円
5,000万円以上2億円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 300万円
2億円以上4億円未満 7,000万円 1,100万円 450万円 450万円
4億円以上7億円未満 7,000万円 1,100万円 750万円 750万円

第1種は別表第一の額に別表第二の額を加算します(施行規則7条括弧書き)。別表第二は海外の募集型企画旅行に係る取引額に応じた上乗せで、当該取引額が8億円未満なら0円です。

営業保証金は主たる営業所の最寄りの供託所に供託し(法8条7項)、国債証券・地方債証券などの有価証券で充てることもできます(法8条6項、施行規則8条・9条)。

旅行業協会に加入すれば5分の1に

日本旅行業協会(JATA)または全国旅行業協会(ANTA)の保証社員になれば、営業保証金の供託が免除され(法53条)、代わりに弁済業務保証金分担金を協会に納付します(法49条1項1号)。金額は各協会の弁済業務規約で定められ、営業保証金の5分の1です。

区分(年間取引見込額400万円未満の場合) 協会に加入しない
=営業保証金
保証社員
=弁済業務保証金分担金
第2種旅行業 1,100万円 220万円
第3種旅行業 300万円 60万円
地域限定旅行業 15万円 3万円

「分担金は営業保証金の6分の1」と説明しているサイトがありますが、東京都が公表している上表の数値(1,100万円→220万円、300万円→60万円、15万円→3万円)を検算すればいずれもちょうど5分の1です。なお、協会には別途入会金と年会費がかかるため、供託と保証社員のどちらが有利かは事業規模と資金繰りで変わります。保証社員になる予定なら、申請前に協会から入会確認書または入会承認書を入手しておく必要があります。

登録免許税がかかるのは第1種だけ

ここが最も誤解の多い論点です。登録免許税法別表第一第142号(一)は「旅行業の登録=1件につき9万円」と定めていますが、「政令で定めるものに限り、更新の登録を除く」という限定がついています。

その政令=登録免許税法施行令24条1項は、課税対象を「旅行業法施行令5条1項の規定により都道府県知事が行うこととされる事務に係るもの以外のもの」と定義しています。第2種・第3種・地域限定はすべて知事事務ですから、登録免許税は課されません。9万円がかかるのは観光庁長官が登録する第1種だけです。

同じ構造は旅行業者代理業(同条2項)と旅行サービス手配業(同条3項)にもあり、これらも原則すべて知事事務のため登録免許税はゼロです。別表第一第142号(二)の「1万5千円」は、実際にはほとんど発生しません。

また第1種であっても、括弧書きにより更新の登録は登録免許税の対象外で、代わりに旅行業法22条1項・施行令4条1項の手数料29,200円(電子申請なら28,300円)を納めます。

東京都の登録手数料は9万円(納付タイミングに注意)

東京都知事登録の場合、新規登録手数料は90,000円です(旅行業法関係手数料条例2条)。東京都の案内書は「登録通知受領時に、現金を持参し観光部振興課に納付すること」と明記しています。申請時ではなく登録決定後の納付である点に注意してください。

費用シミュレーション(東京都・協会加入・年間取引見込額400万円未満)

費目 地域限定 第3種 第2種
登録手数料(東京都) 90,000円 90,000円 90,000円
登録免許税 0円 0円 0円
弁済業務保証金分担金 30,000円 600,000円 2,200,000円
協会の入会金・年会費 協会・地域・事業規模により異なるため各協会に要確認
手元に必要な基準資産額 100万円以上 300万円以上 700万円以上
行政に納める額の小計 120,000円 690,000円 2,290,000円

このほか、登記事項証明書などの証明書取得費用、登録票と旅行業務取扱料金表の用紙代(東京都は登録後に購入・掲示するよう案内)、会社設立から始める場合は設立費用がかかります。

行政書士萩本昌史事務所

旅行業登録、区分選びから登録後の届出までお引き受けします

「第3種と地域限定のどちらを取るべき?」「基準資産額が足りるか決算書で見てほしい」「定款の目的はこの書き方で通る?」——区分の見立てから東京都への申請、登録後に続く届出の管理までまとめてご相談ください。

  • 区分の判定と基準資産額のシミュレーション
  • 定款の目的・商号のチェックと会社設立からの一括対応
  • 申請書類の作成・東京都への申請同行(予約・管理者同行の調整)
  • 登録後の変更届出・更新登録・取引額報告のスケジュール管理

申請から営業開始までの流れと期間

手続きの全体像

# ステップ 期間の目安・期限 根拠
1 区分の決定・基準資産額の確認・管理者の確保 法6条1項9号・10号
2 (法人設立が必要なら)定款の目的を「旅行業」として設立 2〜3週間 東京都案内書
3 電話で申請予約(東京都は月・水・金管理者も来庁 東京都案内書
4 申請書+添付書類を提出 法4条、施行規則1条の2・1条の4
5 審査(営業所調査を含む 30〜40日(東京都の標準処理期間) 東京都案内書
6 登録決定・登録の通知/手数料90,000円を現金納付 法5条2項
7 営業保証金の供託または分担金の納付+届出 通知の日から14日以内 法7条2項・4項、法49条1項1号
8 登録票・旅行業務取扱料金表を掲示 → 営業開始 法12条1項、法12条の9

東京都の標準処理期間は30〜40日ですが、これは書類が整っている場合の目安です。会社設立から始めると、実際には2〜3か月を見ておくのが安全です。

最大の落とし穴:「登録=営業開始」ではない

登録が実施されると、行政庁から登録の通知が届きます(法5条2項)。「登録証が交付される」と書かれた記事がありますが、法律上交付されるのは通知で、営業所に掲示するのは登録票(標識・法12条の9、施行規則31条)です。

そして、旅行業法7条3項は「旅行業者は、供託の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない」と定めています。これに違反して事業を開始すると100万円以下の罰金です(法77条)。

さらに、通知を受けた日から14日以内に届出をしないと催告を受け、催告期間内にも届出をしなければ登録を取り消される可能性があります(法7条4項・5項)。せっかく通った登録を失う典型パターンなので、供託金または分担金は申請前に用意しておくのが鉄則です。

必要書類一覧|法定添付書類と東京都の実務書類

添付書類は施行規則1条の4に列挙されています。法人と個人で内容が異なります。

法人が申請する場合(施行規則1条の4第1項1号)

書類 ポイント
新規登録申請書(第1号様式) 商号・営業所・登録業務範囲・代理業者の情報を記載
定款または寄附行為 目的に「旅行業」または「旅行業法に基づく旅行業」
登記事項証明書 履歴事項全部証明書。目的と役員を確認される
旅行業務に係る事業の計画 年間取引見込額を記載。営業保証金の算定根拠になる
旅行業務に係る組織の概要 営業所と管理者の配置がわかるもの
最近の事業年度の貸借対照表・損益計算書 基準資産額の判定資料。第1種は公認会計士・監査法人・税理士等の確認書が必要
登録拒否事由に該当しないことを証する書類 誓約書のほか、役員全員分の証明書類
(代理業のみ)代理業契約の契約書の写し 所属旅行業者は1社に限られる

個人が申請する場合(施行規則1条の4第1項2号)

書類 ポイント
住民票の写し 「戸籍抄本」と書かれた解説がありますが、条文上は住民票の写しです(行政庁がマイナンバー制度で本人確認情報の提供を受ける場合は省略可・同条2項3項)
財産に関する調書(第2号様式) 法人の貸借対照表に相当。基準資産額の判定資料
事業の計画/組織の概要 法人と同じ
登録拒否事由に該当しないことを証する書類 法人と同じ
(未成年の場合)法定代理人に関する書類 営業の許可を受けている場合はその証明

あわせて準備しておくもの

  • 旅行業務取扱管理者の資格を証する書類(合格証書の写しなど)。法6条1項9号に該当しないことを証する書類として求められます。東京都では申請時に管理者本人も来庁します。
  • 旅行業協会の入会確認書・入会承認書(保証社員になる場合)。
  • 営業所の使用権原がわかる書類(賃貸借契約書の写しなど)。法定添付書類ではありませんが、営業所調査があるため実務上は求められます。

「営業所の平面図・周辺図」を必須書類として挙げる解説もありますが、これは施行規則1条の4の法定添付書類ではありません。行政庁の運用として求められることがある、という位置づけです。

登録後に続く義務|期限つきのものを見落とさない

登録は取って終わりではありません。期限が定められた義務を一覧にします。

義務 期限 根拠 違反した場合
更新登録(有効期間5年) 有効期間満了の2か月前までに申請 法6条の2、施行規則1条の2第1項 期間満了で登録は抹消(法20条1項)
取引額の報告 毎事業年度終了後100日以内 法10条、施行規則9条の2 30万円以下の罰金(法79条2号)
営業保証金の不足額の追加供託 事業年度終了の日の翌日から100日以内 法9条1項・2項 催告後に登録取消しの可能性
登録事項の変更届出(商号・住所・営業所・代表者など) 変更の日から30日以内 法6条の4第3項 30万円以下の罰金(法79条1号)
業務範囲の変更登録(第3種→第2種など) 変更しようとするとき(事前) 法6条の4第1項 1年以下の拘禁刑等(法74条3号)
廃業・全部譲渡・合併消滅・死亡の届出 30日以内(死亡は相続人が知った日から30日以内) 法15条 20万円以下の過料(法83条2号)
管理者の研修受講 5年ごと(事業者の義務) 法11条の2第7項、施行規則10条の6 勧告→命令→30万円以下の罰金(法79条5号)

期限のない継続義務

  • 旅行業約款:定めて登録行政庁の認可を受ける必要があります(法12条の2第1項)。ただし観光庁長官・消費者庁長官が公示した標準旅行業約款と同一の約款を定めれば、認可を受けたものとみなされます(法12条の3)。営業所での掲示または備置きも必要です(法12条の2第3項)。
  • 料金の掲示事業の開始前に旅行業務の取扱料金を定め、営業所に掲示します(法12条1項)。
  • 標識(登録票)の掲示:旅行業と代理業の別、営業所の別に応じた様式の標識を、公衆に見やすいように掲示します(法12条の9第1項、施行規則31条)。登録業者以外が類似標識を掲示することも禁止されています(同2項)。
  • 取引条件の説明と書面の交付:契約締結前の説明(法12条の4)と、締結後の書面交付(法12条の5)。
  • 誇大広告の禁止・企画旅行広告の表示事項(法12条の7・12条の8)。

更新のタイミングと財産要件の確認については旅行業登録の更新はいつ?更新前に確認する財産要件と変更届もあわせてご覧ください。

ネット上の解説でよく見かける7つの誤り

調べものをしていると同じ誤りが繰り返し出てきます。根拠条文とセットで訂正しておきます。

よくある記述 正しくは 根拠
「旅行業登録には登録免許税9万円がかかる」 9万円がかかるのは第1種のみ。第2種・第3種・地域限定・代理業・手配業は登録免許税ゼロ 登録免許税法施行令24条
「弁済業務保証金分担金は営業保証金の6分の1」 5分の1(1,100万円→220万円、300万円→60万円、15万円→3万円) 法49条、各協会の弁済業務規約
「地域限定の基準資産額は15万円」 15万円は営業保証金(取引見込額400万円未満のとき)。基準資産額は100万円 施行規則3条4号、別表第一
「第3種は日帰り旅行しか企画できない」 制限は場所(拠点区域)であって日数ではない 施行規則1条の3第3号
「欠格事由は禁錮以上の刑」 2025年6月1日から拘禁刑以上の刑 法6条1項2号、令和4年法律第68号
「管理者資格は総合と国内の2種類」 3種類(総合・国内・地域限定) 法11条の3第2項
「登録証が交付される」 交付されるのは登録の通知。掲示するのは登録票(標識) 法5条2項、法12条の9

よくある質問(FAQ)

Q1.バスやホテルを手配するだけでも旅行業登録は必要ですか?

誰のために手配するかで変わります。旅行者から依頼を受けて報酬を得て手配するなら「手配旅行」に当たり、旅行業登録が必要です(法2条1項3号)。一方、旅行業者から依頼を受けて手配するだけなら旅行業ではなく旅行サービス手配業の登録になります(法2条6項・法23条)。両方を行うなら旅行業登録があれば足り、手配業の登録は不要です(法34条1項)。

Q2.市内観光ツアーのような小規模な旅行でも登録は要りますか?

必要です。旅行業法に規模による適用除外はありません。報酬を得て、他人の運送機関や宿泊施設を利用したサービスを事業として提供するなら、日帰りでも参加者が数名でも旅行業に当たります。営業範囲が営業所周辺に収まるなら、基準資産額100万円・営業保証金15万円(協会加入なら分担金3万円)で始められる地域限定旅行業が現実的な選択肢です。

Q3.個人事業でも旅行業登録はできますか?

できます。法人・個人で要件の考え方は同じで、基準資産額も同額です。ただし添付書類が異なり、個人は住民票の写し財産に関する調書(第2号様式)を提出します(施行規則1条の4第1項2号)。個人の場合、基準資産額は事業用資産だけでなく個人の資産全体で判定されます。

Q4.旅行業登録にはどれくらいの期間がかかりますか?

東京都の標準処理期間は30〜40日(営業所調査を含む)です。ここに登録通知後の供託・分担金納付(14日以内)が加わります。会社設立から始める場合は登記に2〜3週間かかるため、準備開始から営業開始まで2〜3か月を見込んでください。

Q5.資本金はいくら必要ですか?

旅行業法は資本金の額を要件にしていません。要件は「基準資産額」で、資産総額から繰延資産・営業権・不良債権・負債総額・所要の営業保証金(または分担金)を差し引いた額で判定します(施行規則3条・4条)。たとえば第3種で協会に加入する場合、分担金60万円を差し引いた後に300万円が残る必要があります。

Q6.営業所を増やしたらどうなりますか?

営業所の追加は登録事項の変更なので、30日以内に変更届出が必要です(法6条の4第3項)。あわせて新しい営業所にも管理者を選任しなければなりません(法11条の2第1項)。管理者は他の営業所との兼任が原則禁止ですが、営業所間の距離の合計が40km以下で、地域限定旅行業でなく、当該営業所群の前事業年度の取引額合計が1億円以下なら、1人で兼ねることができます(同5項、施行規則10条の2・10条の3)。

Q7.第3種で登録した後、第2種に変更できますか?

できます。ただし届出ではなく変更登録という審査を伴う手続きで、事前に受ける必要があります(法6条の4第1項)。基準資産額(700万円)と営業保証金(1,100万円/分担金220万円)も第2種の水準を満たす必要があり、増額分の分担金は変更登録を受けた日から14日以内に納付します(法49条2項)。変更登録を受けずに業務範囲を変えると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(法74条3号)。

Q8.旅行業協会には必ず入らないといけませんか?

加入は任意です。加入しない場合は営業保証金の全額を供託します。第2種なら1,100万円、協会に入れば分担金220万円で済むため資金負担は大きく変わりますが、協会には入会金と年会費がかかります。供託金は登録が終われば取り戻せる性質のお金である一方、分担金も脱退時に返還されるため、拘束される資金の総額と年間コストの両方で比較してください。

まとめ|旅行業登録で押さえるべき7点

  1. 登録の要否は「報酬」「法2条1項の行為」「事業性」の3要件で決まる。旅行業者のための手配だけなら旅行サービス手配業。
  2. 区分選びは海外の募集型企画旅行をやるかどうかが分岐点。第3種の制限は日数ではなく拠点区域という場所
  3. 基準資産額は所要の営業保証金・分担金を差し引いた後の額で判定する。東京都は不良債権も控除。
  4. 管理者は営業所ごとに1人以上。資格は3種類、兼任は原則禁止、事業者には5年ごとの研修受講義務。
  5. 登録免許税9万円は第1種だけ。知事登録は登録免許税ゼロで、東京都は手数料9万円を登録通知受領時に現金納付。
  6. 登録=営業開始ではない。通知から14日以内に供託または分担金納付+届出。届出前の開業は100万円以下の罰金。
  7. 登録後の期限は更新(2か月前)・取引額報告(100日)・変更届(30日)・廃業届(30日)。カレンダーに入れて管理する。

旅行業登録は、区分の見立てを誤ると基準資産額や営業保証金の準備がやり直しになり、定款の目的が足りなければ登記からやり直しになります。最初の設計で結果がほぼ決まる手続きです。

行政書士萩本昌史事務所では、区分の判定と基準資産額のシミュレーションから、定款の目的の設計、東京都への申請、登録後に続く届出のスケジュール管理まで一貫してお引き受けしています。会社設立からのご相談にも対応しますので、行政書士萩本昌史事務所の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

参照した一次情報

  • 旅行業法(昭和27年法律第239号)/旅行業法施行令(昭和46年政令第338号)/旅行業法施行規則(昭和46年運輸省令第61号):e-Gov法令検索
  • 登録免許税法別表第一第142号/登録免許税法施行令24条:e-Gov法令検索
  • 観光庁「旅行業法について」:観光庁
  • 東京都産業労働局「旅行業 新規登録申請案内書(第2種・第3種・地域限定)」:東京都産業労働局(PDF)
  • 東京都産業労働局「旅行業登録制度について(概要)」:東京都産業労働局

執筆:特定行政書士 萩本昌史(行政書士萩本昌史事務所・東京都世田谷区)/最終確認日:2026年9月8日。法令改正により内容が変わることがあります。個別の判断は登録行政庁または当事務所へご確認ください。

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