飲食店開業のための許可・届け出ガイド

日本で飲食店を開業する場合、主に以下の許可・届け出が必要となります。店舗の形態(居酒屋、カフェ、レストラ日本で飲食店を開業する場合、提供するサービスの内容や営業時間、店舗の形態によって取得・届出が必要となる許可は異なります。本資料では、主な許可・届出を4つのパターンに分けて解説します。


1. 食品衛生法による許可

1-1. 飲食店営業許可

  • 対象: 一般的な飲食店(レストラン、居酒屋、カフェなど)を運営する場合
  • 根拠法令: 食品衛生法
  • 申請先: 店舗所在地の保健所
  • 申請の流れ:
    1. 内装工事の計画段階で保健所に相談し、シンクや調理設備など衛生上の基準を満たすよう設計
    2. 工事がほぼ完了したタイミングで申請書類を提出
    3. 保健所による現地検査
    4. 合格後、営業許可証の交付
  • 食品衛生責任者の配置:
    • 調理師・栄養士などの有資格者、または食品衛生責任者講習を修了した者を1名以上置く必要があります。

1-2. 喫茶店営業許可

  • 対象: 調理を伴わず、軽食・ドリンク提供のみの場合(例: コーヒー、紅茶、お菓子程度)
  • ポイント:
    • 扱うメニューによっては通常の飲食店営業許可が必要となる場合もあります。事前に保健所でメニューを伝えて確認してください。

2. 社交飲食店許可(風俗営業)

2-1. 概要

  • 対象: スナック、クラブ、ラウンジなど、接待行為を伴う飲食店
  • 根拠法令: 風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)
  • 申請先: 店舗所在地を管轄する警察署(都道府県公安委員会)
  • 接待行為とは:
    • 客をもてなし、会話や飲食を通じて親密に振る舞う行為を指します。ホステスやホストが付き添い、サービスを提供する業態。

2-2. 申請・許可の流れ

  1. 用途地域の確認: 学校や病院などの公共施設から一定距離以上離れていることなど、立地要件が厳しく定められています。
  2. 店内構造要件: 客室の広さ、照度、見通しの良さなどが基準を満たす必要があります。
  3. 警察署での審査・立ち入り検査: 書類審査と現地調査の後、基準を満たせば許可。
  4. 許可後: 営業時間や広告表示など、風営法で定められた規制に従って営業しなければなりません。

3. 特定遊興飲食店許可(深夜0時以降も酒類提供+遊興をさせる場合)

3-1. 特定遊興飲食店営業とは

  • 対象: 深夜(午前0時から日の出まで)において、酒類を提供しながら“遊興”を行わせる飲食店
    • 遊興には、ダンスフロアを設けて客が踊れるようにする、DJイベントを開催する、ショーを提供するなどの行為が含まれます。
  • 根拠法令: 風営法改正(2016年改正)により新設された区分

3-2. 許可の要件

  1. 用途地域: 風俗営業と同様、立地条件の制限があります。
  2. 店内構造要件: 広さや照明(照度)、騒音・振動対策など。
  3. 営業時間: 午前0時以降、日の出まで酒類を提供しつつ客に遊興をさせる行為を行う場合、この許可が必要です。
  4. 申請先: 警察署(都道府県公安委員会)。立ち入り検査の上、基準をクリアしていれば許可が下ります。

4. 深夜酒類提供飲食店営業の届出(深夜0時以降も酒類提供+遊興なし)

4-1. 遊興を伴わない飲食店

  • 対象: 深夜0時以降も酒類を提供するが、客にダンスやショーなどの遊興をさせない形態の飲食店(バー、居酒屋など)。
  • 根拠法令: 風営法
  • 申請先: 店舗所在地を管轄する警察署の生活安全課(都道府県公安委員会)
  • ポイント:
    • 店内構造や照度などの基準はある程度定められていますが、ダンスフロアなど“遊興設備”がなければ「特定遊興飲食店」には該当しません。
    • 許可ではなく“届出”扱いのため、風俗営業や特定遊興飲食店よりも要件はやや緩やかです。

4-2. 深夜酒類提供飲食店営業届出の手順

  1. 申請書類の準備: 店舗平面図、営業概要書など
  2. 警察署へ届出: 店舗所在地を所轄する警察署の生活安全課
  3. 受理後: 届出の受理書が交付され、営業可能に
  4. 継続的な遵守: 防犯・騒音対策、照度の確保などの遵守事項を満たしながら営業

5. その他関連法令

5-1. 建築基準法関係

  • 用途変更: 新規に飲食店を開業する、あるいは居抜き店舗でも用途が変わる場合は、建築基準法上の用途変更に該当する可能性があります。
  • 大規模改装: 建築確認申請を要するケースもあるため、工事前に建築士や行政書士に確認しましょう。

5-2. 消防法関係

  • 防火対象物使用開始届出書: 店舗の規模や用途によっては消防署への届出が必要。
  • 消防設備: 店舗面積や収容人数に応じて消火器・火災報知器・誘導灯などを設置。
  • 防火管理者の選任: 建物全体の収容人員が一定数を超える場合防火管理者を選任し届け出る
  • 防計画の作成・消防署への届出等が必要。

5-3. 労働関連

  • 社会保険・労働保険: 従業員を雇用する場合、労働保険(雇用・労災)や社会保険(健康保険・厚生年金)の加入手続きが必要。
  • 就業規則の整備: 常時10人以上の従業員がいる場合は作成・届出義務があります。

5-4. 地方自治体の条例

  • 営業時間の制限喫煙ルール、看板広告の規制など、各自治体独自の条例が存在する場合があります。開業計画時に確認しましょう。

6. まとめ

  1. 食品衛生法による許可: すべての飲食店営業の基本。保健所の審査に合格し、衛生管理体制を整備。
  2. 社交飲食店許可: 接待行為(スナック・クラブ・ラウンジなど)を行う場合は、風俗営業許可が必要。
  3. 特定遊興飲食店許可: 深夜に酒類を提供しながら客にダンスやショー等の“遊興”を行わせる場合に必要。
  4. 深夜酒類提供飲食店営業届出: 深夜0時以降も酒類を提供するが、遊興なし(バーや居酒屋など)の場合の届出。
  5. 関連法令の確認: 建築基準法や消防法、労働関連法、各自治体の条例も適用されるため、総合的にチェックが必要。

開業準備を円滑に進めるためには、保健所・警察署・消防署への事前相談が不可欠です。店舗の形態や提供サービスに合わせ、必要な許可や届出を漏れなくクリアし、安心・安全で法令遵守の店舗運営を実現しましょう。

行政書士萩本昌史事務所では、これらの官公署への相談・手続き・書類作成をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。