日本では、平成17年の会社法改正によって導入された「合同会社(LLC)」。アメリカで急速に普及した“Limited Liability Company”をモデルにした新しい会社形態です。
日本の法人の大部分を占める株式会社も、中小規模の非公開会社でも利用しやすいよう制度が柔軟化してきたため、実は合同会社の設立数はそれほど多くありません。しかし、合同会社には株式会社とは異なるメリットや特徴があり、状況によっては大きな利点となることがあります。
本記事では、合同会社のメリット・デメリットを中心に、株式会社との違いや合同会社が向いているケースについてわかりやすく解説していきます。
1. 合同会社(LLC)とは?
合同会社は、**米国のLLC(Limited Liability Company)**を参考にした会社形態です。出資者(社員)全員が有限責任を負うことから、リスクを抑えつつ経営を行いやすいという特徴があります。平成17年の会社法制定によって導入され、日本でも個人事業主の法人成りや小規模事業での利用など、活用例が少しずつ増えてきています。
2. 合同会社のメリット
2-1. 設立手続きや運営が簡単
- 公証役場での定款認証が不要
株式会社では原始定款を公証役場で認証する必要がありますが、合同会社では認証手続きが不要です。 - 社員(出資者)の任期がない
株式会社の場合、取締役や監査役には任期が定められますが、合同会社では任期を設ける必要がありません。 - 決算公告義務がない
株式会社は決算期ごとに公告が必要ですが、合同会社にはその義務がありません。そのためランニングコストが抑えられます。
2-2. 設立費用が安い
- 登録免許税が安価
株式会社では登録免許税が最低15万円かかりますが、合同会社の場合は最低6万円で済みます。初期コストを抑えたい事業者には大きなメリットといえます。
2-3. 定款自治の範囲が広い
- 株式会社に比べ、強行法規で規律される部分が少ないため、定款で柔軟に規定できます。
- 自社のニーズや出資者同士の合意に沿った運営ルールを定めやすいのも魅力です。
3. 合同会社のデメリット
3-1. 社会的認知度が低い
- 日本では株式会社の方が一般的に知られており、取引先や金融機関からの信用度という点でやや不利に見られる場合があります。
3-2. 所有と経営が一体化している
- 定款に別段の定めがない限り、出資者(社員)は全員「業務執行社員」として経営に携わります。
- そのため、出資を募る資金調達は株式会社ほど多様ではなく、外部投資家を呼び込みにくい面があります。上場(株式公開)もできないため、大規模な資金調達を視野に入れる事業には不向きといえるでしょう。
4. 合同会社の特徴
- 個人事業よりも資金調達の幅が広い
有限責任であるため、個人事業主よりも出資者を集めやすい一面があります。 - 税制は株式会社と同じ
法人税率や税務申告の手続きなどは基本的に株式会社と同様です。 - 原則、全社員の一致がなければ変更ができない
重要事項の変更には、全員一致が必要になります。意思決定のスピードに影響する可能性もあります。 - 広告義務がない
決算公告の必要がないため、コストや手間が抑えられます。 - 議決権は「一人一票」
出資額の大小にかかわらず、出資者(社員)の議決権は平等とされるのが原則です(定款で別段の定めを置くことは可能)。
5. どんな場合に合同会社がおすすめか?
以下のようなケースでは、合同会社のメリットを活かしやすいと言えます。
- 将来的に上場を考えていない場合
上場(IPO)の予定がないなら、株式公開に対応する必要がない合同会社で十分なケースが多いです。 - 大規模な資金調達を必要としない場合
株式発行による大きな資金調達が不要で、少人数で始めたい場合に適しています。 - すでに信用力のある企業が子会社を設立する場合
親会社がしっかりしていれば、合同会社でも信用面で問題がない場合が多いです。 - 個人事業主が法人成りする場合
初期費用を抑えながら有限責任で事業を拡大したい場合におすすめです。 - 資金力のある者と、技術やアイデアを持つ者が共同で会社を設立する場合
出資者同士で経営を分担しながら、コストを抑えてスタートできます。
6. まとめ
合同会社(LLC)は、設立費用が安く、運営もシンプルというメリットを持つ一方、株式会社ほどの社会的信用や大規模な資金調達には向かないといったデメリットがあります。
- メリット
- 定款認証が不要で手続きが簡単
- 任期や決算公告義務がなくランニングコストを抑えやすい
- 登録免許税が安い
- 定款自治の範囲が広い
- デメリット
- 信用度・認知度が株式会社に比べて劣る
- 株式発行できないため、大きな資金調達が難しい
将来的に上場を検討していない中小規模のビジネス、あるいは個人事業主が法人成りを目指す場合などには、合同会社のメリットが大いに活かせるでしょう。自社の事業規模や目指す方向性、資金調達の必要性などを総合的に検討し、会社形態を選択することをおすすめします。