会社設立時の定款の「目的」の書き方と具体例 – 失敗しないためのポイント

はじめに

会社設立の際に作成する「定款」には、会社の目的を明記する必要があります(会社法第27条)。
しかし、「どのように記載すればよいか?」「事業内容が増えた場合はどうすればいいのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか?

会社の目的は、事業の方向性を示すだけでなく、銀行口座開設・許認可取得・融資申請などにも影響を与える重要な要素です。
この記事では、会社設立時の定款の「目的」の適切な書き方と、業種別の具体例、記載の際のポイントを詳しく解説します!


1. 定款の「目的」とは? – 会社の事業範囲を示すもの

定款の「目的」とは、会社が行う事業の範囲を定める項目です。
会社法第27条に基づき、会社の「目的」が明確に定められていないと、登記が認められない可能性があるため、慎重に記載しなければなりません。

📌 目的を明記する主な理由
会社の事業範囲を明確にする(株主・取引先・従業員にとっての指針となる)
許認可が必要な業種では、目的に適切な記載が必要(建設業、飲食業、人材派遣業など)
銀行口座開設・融資審査で審査の対象となる(金融機関が事業内容を確認するため)


2. 定款の「目的」の記載方法 – 5つの基本ルール

定款の「目的」を記載する際には、以下の5つのルールを押さえておくことが重要です。

✅ ルール1. 事業の範囲を広めに記載する

  • 事業の将来性を考え、現在の事業だけでなく、今後展開する可能性のある事業も含めておくことが重要。
  • 例えば、「Web制作」だけでなく、「インターネットを利用した各種サービスの提供」「デジタルコンテンツの制作」なども含める。

✅ ルール2. 許認可が必要な事業は、適切な文言を入れる

  • 建設業、飲食業、派遣業などの許認可が必要な業種では、申請時に目的欄に特定の文言が求められる。
  • 例えば、「労働者派遣事業」の許可を取得する場合、「労働者派遣事業(許可番号:〇〇〇〇)」と記載が必要。

✅ ルール3. 事業の実態に合った記載をする

  • 実態のない事業内容を目的に記載すると、銀行口座開設・融資審査で問題となる場合がある
  • 例:「海外輸出業」などを記載しても、実際に事業を行っていない場合は、信用を損なう可能性がある。

✅ ルール4. 将来の変更も考慮して、柔軟な表現を使う

  • 例:「〇〇に関する業務」や「〇〇に付随する一切の業務」など、将来的な事業拡大を考慮して柔軟な表現を取り入れる。

✅ ルール5. 取引先や金融機関に不信感を与えない

  • 怪しいビジネスや違法行為を疑われるような記載は避ける(例:「金融業」「投資コンサルティング業」など)。

3. 業種別の「目的」具体例(テンプレート)

以下、主要な業種ごとに適切な目的の記載例を紹介します。

📌 1. IT・Web制作業

  1. インターネットを利用した各種情報提供サービス業
  2. Webサイト、アプリケーションの企画、開発、運営及び販売
  3. デジタルコンテンツの制作、配信及び販売
  4. ITコンサルティング業務
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 2. 飲食業

  1. 飲食店の経営
  2. 飲食店フランチャイズ事業の運営及びコンサルティング
  3. 食品の製造、加工、販売及び輸出入業務
  4. ケータリング及びデリバリーサービスの提供
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 3. 人材派遣業

  1. 労働者派遣事業(許可番号:〇〇〇〇)
  2. 有料職業紹介事業(許可番号:〇〇〇〇)
  3. 人材教育・キャリア支援業務
  4. 企業の人事・労務コンサルティング業務
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 4. 建設業

  1. 土木工事業、建築工事業及びリフォーム業
  2. 住宅、マンション、商業施設の設計、施工及び管理業務
  3. 建築資材、建設機械の販売及びリース業
  4. 労働者派遣事業(建設分野に特化した派遣事業)
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 5. コンサルティング業

  1. 経営コンサルティング業務
  2. 企業の財務・会計・税務に関するコンサルティング業務
  3. 人材育成、研修プログラムの企画及び提供
  4. IT、マーケティングに関するコンサルティング業務
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 6. 小売・EC販売業

  1. インターネットを利用した各種商品の販売及び輸出入
  2. 食品、衣類、雑貨、電子機器の小売業及び卸売業
  3. 通信販売業及びオンラインマーケットプレイスの運営
  4. ブランド商品の企画、製造及び販売
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 7. 物流・運送業

  1. 一般貨物自動車運送事業及び軽貨物運送事業
  2. 倉庫業及び貨物の保管・配送業務
  3. 海上輸送及び航空貨物輸送業務
  4. 運送業者向けの管理システムの開発及び提供
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 8. 不動産業

  1. 不動産の売買、賃貸、管理及び仲介業務
  2. 不動産投資及び運用に関するコンサルティング業務
  3. 不動産のリフォーム及びリノベーション事業
  4. ホテル・民泊事業の運営及び管理
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 9. 教育・スクール運営

  1. 学習塾、語学学校、専門学校の運営及び教育事業
  2. オンライン教育プラットフォームの運営
  3. 企業向け研修プログラムの提供
  4. 幼児教育及び育児支援サービスの提供
  5. 上記に付随する一切の業務

📌 10. 医療・福祉業

  1. 医療クリニック及び介護施設の運営
  2. 健康食品・サプリメントの開発及び販売
  3. 医療機器の輸入販売及びメンテナンス業務
  4. 訪問介護及びデイサービス事業
  5. 上記に付随する一切の業務

4. 会社設立後に「目的」を変更する場合(登記変更手続き)

事業内容の変更に伴い、「定款の目的」を変更する場合は、登記変更手続きが必要になります。

📌 目的変更の流れ

取締役会・株主総会で決議(会社法第309条)
法務局に「変更登記申請書」を提出
登録免許税:30,000円(1件につき)

変更する際は、追加する事業内容が許認可に影響しないか確認することが重要です。


5. まとめ – 会社の目的を適切に記載するためのポイント

定款の目的は「広め」に設定し、将来の事業拡大を考慮する
許認可が必要な業種では、適切な文言を入れることが必須
取引先や金融機関の信用に影響するため、適切な表現を使用する
会社設立後に事業内容が変わる場合は、目的変更の登記を行う

会社の「目的」は、会社の方向性を示し、信用力や許認可取得にも大きく影響します。
適切な文言を選び、設立後のトラブルを防ぐためにも、専門家(行政書士・司法書士)に相談することをおすすめします!

会社設立・定款作成のご相談は、当事務所へお気軽にお問い合わせください! 🎉✨