オフィスビルでの自衛消防訓練

自衛消防訓練とは、火災などの緊急時に迅速かつ適切に対応できるよう、建物の利用者や従業員が行う防火・避難訓練のことを指します。これは消防法に基づき、一定規模以上の建築物において定期的に実施することが義務付けられています。

訓練の主な目的は以下のとおりです。

  • 火災発生時における初期対応(初期消火、通報、避難誘導)
  • 消火器や消火栓などの消防設備の操作訓練
  • 避難経路の確認と安全確保
  • 役割分担の明確化と指揮命令系統の確立

1. 自衛消防訓練の種類

1-1. 消防計画に基づく訓練

消防法に基づき、防火管理者が策定した**「消防計画」**に沿って実施される訓練です。具体的には、次のような訓練があります。

(1) 通報訓練

  • 火災を発見した際の通報手順を確認
  • 消防署への119番通報の模擬訓練
  • 非常ベルや自動火災報知設備の操作

(2) 初期消火訓練

  • 消火器、屋内消火栓の使用訓練
  • 火災の初期段階での消火の重要性を学ぶ

(3) 避難訓練

  • 避難経路の確認と誘導の方法
  • 車椅子利用者や高齢者などの支援が必要な人への対応
  • 避難時の安全確保の方法

(4) 通報・消火・避難を組み合わせた総合訓練

  • 火災発生を想定し、実際の対応を一連の流れで訓練
  • 役割分担を決め、リーダーシップを発揮する訓練

1-2. 自主的な訓練

法令で義務付けられていない場合でも、企業や施設が自主的に行う訓練もあります。特に、従業員の安全意識向上や緊急時の行動を迅速化するために有効です。


2. 防火管理者の選任と訓練の義務

2-1. 防火管理者とは?

消防法では、一定規模以上の建物では**「防火管理者」**の選任が義務付けられています。防火管理者の主な役割は以下のとおりです。

  • 消防計画の作成と実施
  • 自衛消防訓練の計画と実施
  • 消防設備の管理
  • 火気管理や避難経路の確認

2-2. 防火管理者を選任しなければならない建物

以下の条件に該当する場合、防火管理者の選任が義務付けられます。

  1. 収容人員10人以上の主として要介護状態にある者又は重度の障害者等が入所する施設
    (救護施設•乳児院、認知症状グループホーム等)
  2. 収容人数30人以上の特定防火対象物
    (学校、病院、ホテル、デパート、劇場、複合用途オフィスビルなど)
  3. 収容人員50人以上の非特定防火対象物
    (事務所など)
  4. 指定防火対象物(消防法第8条適用施設)
    (地下街や高層ビル(31m以上)、老人福祉施設、病院、宿泊施設など)

→ これらの施設では、防火管理者を選任し、消防計画に基づく訓練を実施する義務があります。


3. 防火管理者を選任しない場合の自衛消防訓練の必要性

3-1. 収容人員30人未満のデイサービスセンターなどの施設における自衛消防訓練の必要性

消防法上、防火管理者の選任義務がない場合でも、管理権原者(施設管理者・事業者)は防火安全のために自主的な自衛消防訓練の実施を推奨されます。

例:収容人員30人未満のデイサービスセンターなど

  • 高齢者や障がい者などの避難困難者が多く利用する施設では、火災発生時のリスクが高いため、訓練を行うことで避難を円滑に進めることが可能。
  • 消防署からの指導を受けることがあり、地域の防火安全対策としても有効。
  • 利用者と職員が連携し、迅速に行動できるよう訓練を実施することで、事故を未然に防ぐことができる。

3-2. 消防署からの指導・勧告

  • 防火管理者未選任の建物でも、消防署から防火指導を受ける場合がある。
  • 火災のリスクが高いと判断された施設では、定期的な訓練の実施を求められることがある。

4. まとめ

自衛消防訓練は、火災などの災害発生時に人命を守るために不可欠な取り組みです。
防火管理者を選任し、計画的に訓練を実施することで、災害時の被害を最小限に抑えることができます。

特に、防火管理者の選任義務がない施設であっても、管理権原者の判断で自主的な訓練を実施することが望ましいとされています。