
防火管理者の選任が必要な建物は、その用途や収容人員によって定められています。消防法第8条および消防法施行令第1条の2に基づき、適切な防火対策を実施する必要があります。本記事では、収容人員ごとに防火管理の必要な建物について詳しく解説し、令別表第1の全項目を網羅して紹介します。また、東京都火災予防条例によって、防火管理者の選任が必要とされる場合についても触れていきます。
1. 収容人員 10人以上で防火管理が必要な建物
主に要介護者や避難困難者が入所する施設では、収容人員が10人以上の場合に防火管理者の選任が義務付けられています。
対象施設(令別表第1)
- (6)項 ロ:
- 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、介護老人保健施設
- 有料老人ホーム(要介護者向け)、障害児入所施設、障害者支援施設
- 乳児院、救護施設
・ (16)項イ複合用途防火対象物のうち(6)項ロが存するもの
・ (16の2)項地下街のうち(6)項ロが存するもの
火災時に避難が困難な方が多くいる施設では、特に厳格な防火管理が求められます。
防火管理者の資格区分
甲種防火管理者
2. 収容人員 30人以上で防火管理が必要な建物
不特定多数の人が出入りする施設は、火災の危険性が高いため、収容人員が30人以上で防火管理者を選任する必要があります。
対象施設(令別表第1)
- (1)項:劇場、映画館、演芸場、観覧場
- (1)項ロ:公会堂、集会場
- (2)項:キャバレー、カフェー、ナイトクラブ
- (2)項:遊技場、ダンスホール、カラオケボックス
- (3)項:待合、料理店、飲食店
- (4)項:百貨店、マーケット、展示場
- (5)項 イ:旅館、ホテル、宿泊施設
- (6)項 イ:病院、診療所(入院施設あり)、助産所
- (6)項 ハ:老人デイサービスセンター、保育所
- (9)項 イ:蒸気浴場、熱気浴場(サウナ等)
- (16)項 イ:特定用途の防火対象物を含む複合用途防火対象物((6)項ロが存するものを除く)
- (16の2)項:地下街((6)項ロが存するものを除く)
これらの施設では、多くの人が集まるため、火災時の避難誘導がスムーズに行えるように防火管理体制を整えることが重要です。
防火管理者の資格区分
防火対象物全体の延べ床面積
- 300㎡以上の場合は甲種防火管理者
- 300㎡未満の場合は甲種または乙種防火管理者 であることが必要となります。
3. 収容人員 50人以上で防火管理が必要な建物
特定防火対象物以外の非特定防火対象物で、収容人員が50人以上の場合にも防火管理者の選任が必要です。
対象施設(令別表第1)
- (5)項 ロ:寄宿舎、下宿、共同住宅
- (7)項:小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校
- (8)項:図書館、博物館、美術館
- (9)項 ロ:公衆浴場(一般の銭湯等)
- (10)項:駅、空港、バスターミナル
- (11)項:神社、寺院、教会
- (12)項:工場、作業場、映画・テレビスタジオ
- (13)項:自動車車庫、駐車場、飛行機格納庫
- (14)項:倉庫
- (15)項:事業場、(事務所、金融機関、官公署、研究所)
- (16)項 ロ:その他の複合用途防火対象物
- (16の2)項:地下街
- (17)項:文化財建造物
- (18)項:アーケード(延長50メートル以上)
- (19)項:市町村長が指定する山林
- (20)項:総務省令で定める舟車
防火管理者の資格区分
防火対象物全体の延べ床面積
- 500㎡以上の場合は甲種防火管理者
- 500㎡未満の場合は甲種または乙種防火管理者 であることが必要となります。
4. 新築工事中の建築物で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
5. 建造中の旅客船で収容人員が50人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
6. 東京都火災予防条例第55条の3に基づく防火管理義務
- 同一敷地内の屋外タンク貯蔵所又は屋内貯蔵所で、その貯蔵する危険物の数量の合計が指定数量の1,000倍以上のもの
- 指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う防火対象物で、床面積の合計が1,500㎡以上のもの
- 50台以上の車両を収容する屋内駐車場
- 車両の停車場のうち、地階に乗降場を有するもの
7. 令別表第1の全項目一覧
項目 | 防火対象物 |
---|---|
(1)項 | 劇場、映画館、演芸場、観覧場 |
(2)項 | ナイトクラブ、キャバレー、遊技場 |
(3)項 | 飲食店、料理店、待合 |
(4)項 | 百貨店、マーケット、物品販売業 |
(5)項 | 旅館、ホテル、宿泊施設、共同住宅 |
(6)項 | 病院、診療所、老人ホーム、障害者施設 |
(7)項 | 学校(小・中・高・大学など) |
(8)項 | 図書館、博物館、美術館 |
(9)項 | 公衆浴場(蒸気浴場を含む) |
(10)項 | 停車場、船舶・航空機発着場 |
(11)項 | 神社、寺院、教会 |
(12)項 | 工場、作業場、映画・テレビスタジオ |
(13)項 | 自動車車庫、駐車場、飛行機格納庫 |
(14)項 | 倉庫 |
(15)項 | 事業場(事務所、金融機関、官公署、研究所など) |
(16)項 イ | 特定の防火対象物用途を含む複合用途防火対象物 |
(16)項 ロ | その他の複合用途防火対象物 |
(16の2)項 | 地下街 |
(17)項 | 文化財建造物 |
(18)項 | アーケード(50m以上) |
(19)項 | 指定山林 |
(20)項 | 舟車 |
8. まとめ
防火管理が必要な建物は、収容人員とその用途に応じて厳格に定められています。特に、不特定多数の人が利用する施設や避難困難者が多くいる建物では、早めに防火管理者を選任し、万全の対策を講じることが求められます。
防火管理者の役割は、火災予防、避難計画の策定、消防設備の維持管理など多岐にわたります。適切な知識を持ち、安全な環境を整えましょう!
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