
今回は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が転職した場合に必要となる手続きについて、詳しく解説していきます。
ここ数年、日本で働く外国人は急増しており、特に専門的・技術的な業務や国際的な取引・営業などに携わる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で活躍する方も多いです。しかし、転職を検討・実施する際には、在留資格の範囲との整合性や入管当局への届出など、見落とせないポイントがいくつかあります。
以下で、転職時に必要な手続きや注意すべき点を、実務の観点からわかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
1. 「技術・人文知識・国際業務」とは?
まずは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の概要を押さえておきましょう。これは、日本の企業などで理学工学系の技術や、法律・経済・社会学・人文科学等の知識、あるいは国際的な思考や語学力などを活かした業務に就く外国人が取得する在留資格です。
- 例:
- ITエンジニア(システムエンジニア、プログラマー)
- 企業の企画・法務・経理・総務・人事
- 通訳・翻訳、語学指導
- 国際営業、貿易業務
- コンサルタント業務 など
多くの場合、大卒以上の学歴や実務経験がある方がこの在留資格を取得し、日本企業で専門性を発揮して働いています。
2. 転職した場合に必要な主な手続き・確認事項
2-1. 「転職後14日以内の届出」が必須(入管法第19条の16)
● 届出義務とは?
外国人の方が在留資格を維持したまま転職をした場合、入管法(正式名称:出入国管理及び難民認定法)第19条の16 に基づき、「契約機関に関する届出」 を行わなければなりません。これには、下記のようなポイントがあります。
- 届出期限:転職後14日以内
- 届出先: 最寄りの出入国在留管理庁・支局・出張所、またはオンライン(在留申請オンラインシステム)
- 届出内容: 転職前と転職後の企業名、契約締結日、退職日など
- 罰則: 届出を怠った場合は 20万円以下の罰金 が科される可能性があるほか、今後の在留資格更新や永住許可申請などにも悪影響が及ぶことがあります。
● なぜ届出が必要なのか?
入管当局としては、外国人が「どの企業や団体で、どのような活動をしているのか」を適切に把握する必要があります。そのため、転職後に雇用先が変わると、すぐに届出義務が発生するのです。これを忘れると、いざ在留期間を更新しようとしたときにトラブルになることもあるため、速やかに届出を行いましょう。
2-2. 在留資格の範囲内かどうかの確認
「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な技術や知識を要する業務に就くための資格です。転職後の職務内容が、引き続き在留資格の範囲に該当するかをチェックする必要があります。
- 在留資格の範囲内の業務(例)
- ITエンジニアから別のIT系企業へ転職する
- 営業職から同じく営業職として別の会社へ移る
- コンサルタントとしてのポジションを維持しつつ、別の企業へ移籍する
- 範囲外となる業務(例)
- 単純労働(飲食店のホールスタッフ、工場作業員など)
- 在留資格外の資格が必要な業務(医師、弁護士など)
- そもそも「技術・人文知識・国際業務」が想定していない職種
もし、新しい業務内容が「技術・人文知識・国際業務」の枠を超える場合は、在留資格「変更許可申請」 が必要となり、単なる届出だけでは済みません。転職前に、転職先での業務が適正かどうかを慎重に確認することが重要です。
2-3. 在留期限が近い場合は更新手続きが必要
在留資格には「1年」「3年」「5年」などの期限が設けられています。更新は在留期限の3か月前から申請が可能となるため、転職のタイミングと在留期限が近い場合は、新たな雇用条件や企業情報を使って更新申請をしなければなりません。
- 更新申請に必要な主な書類
- 在留カード、パスポート
- 「在留期間更新許可申請書」(出入国在留管理庁の指定様式)
- 転職先企業との雇用契約書・採用内定通知書・在職証明書 など
- 会社概要や職務内容説明書、給与額が日本人と同等以上であることがわかる資料
- もし活動内容に大幅な変更があれば、より詳細な資料が求められる可能性あり
在留期限がまだ先であれば、更新手続きそのものは急がなくても問題ありません。ただし、期限が切れる前には必ず更新手続きを行う必要があるため、管理上は「いつ在留期限を迎えるのか」 を常に把握しておくことが大切です。
3. 不法就労やトラブルを回避するための注意点
転職時に正しい手続きを踏まないと、不法就労とみなされるリスクがあります。特に、以下の点に留意しましょう。
- 転職する職務内容が在留資格に合致しているかの確認
- 企業側も、採用しようとする外国人が適切な在留資格を持っているか、きちんとチェックしましょう。
- 14日以内の届出を必ず行う
- 提出の遅れは、将来的な在留資格更新や永住申請、さらには再入国時の審査にも影響する場合があります。
- 資格外活動をしない
- 「技術・人文知識・国際業務」で認められていない業務を行う場合は、別途「資格外活動許可」を取る必要があります。無許可で行うと、不法就労になります。
- 在留期限切れに注意
- 在留期限が切れた状態で日本に滞在を続けると、不法残留となり、退去強制の対象になるおそれがあります。
4. 企業側が行うべき管理と配慮
4-1. 在留期限・資格種別の管理
外国人社員を雇用する企業は、社員ごとの在留期限・資格種類などをリスト化し、常に最新の状態を把握しておくことが大切です。在留資格の管理を怠ると、不法就労助長罪とみなされるリスクもあるため、担当部署や担当者を定めておくなど、社内体制をしっかり構築しましょう。
4-2. 雇用契約内容の明確化
- 転職される方に対して出す「採用通知書」「雇用契約書」は、業務内容を具体的に記載し、日本人との同等額報酬であることがわかるようにしておきます。
- 必要に応じて就業規則・給与規定の写しなども用意し、更新手続き時にスムーズに提出できるよう管理しておきましょう。
4-3. 必要書類のサポート
外国人社員が転職してくる場合や、自社の社員が転職する場合には、在留資格や転職後に必要な書類を説明し、届出漏れがないようフォローすることが企業側の重要な役割になります。
5. まとめ・ポイントのおさらい
- 転職後14日以内に必ず入管へ届出(契約機関に関する届出)
- 入管法第19条の16による義務。違反すると罰則や将来の審査で不利になる。
- 転職先の業務内容が「技術・人文知識・国際業務」の範囲内か再確認
- 範囲外なら在留資格変更申請が必要。
- 在留期限が迫っている場合は「在留期間更新」の手続き
- 新しい勤務先の雇用契約書等を用意して手続きを行う。
- 不法就労・不法残留を避けるため、期限や資格範囲を常に意識
- 企業側は外国人社員の在留情報を正確に管理し、適切にサポートする必要がある。
技術・人文知識・国際業務の在留資格で転職する際は、本人・企業双方が適正な手続きを行うことが何よりも大切です。 しっかりと情報を共有し、必要な書類を用意しておけば、余計なトラブルを防ぎ、スムーズに新天地でのキャリアをスタートさせることができるでしょう。
【さいごに】
いかがでしたか?
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人が転職する場合、入管への届出義務(14日以内) と在留資格の適合性の確認が非常に重要です。日本でのキャリア形成を成功させるためにも、入管法のルールを正しく理解し、期限管理・書類管理を徹底することが欠かせません。
私は、国際業務を専門とする行政書士として、これまで数多くの外国人の方の在留手続きや企業の採用支援に携わってきました。万が一、「転職先の業務内容が資格に当てはまるか不安」「在留期間更新の際にどんな書類を揃えれば良いか悩んでいる」という方は、ぜひ早めにご相談いただければと思います。
適切な手続きを行い、あなたの新しい職場での活躍がさらに充実したものとなるよう心から応援しています!
東京都世田谷区で行政書士事務所です。消防計画、建設業許可、在留許可、相続、防火管理などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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