
はじめに
日本に在留する外国人が在留資格の更新を申請し、その処理のために在留カードを入管(出入国在留管理局)に預けた状態で、やむを得ず一時的に帰省するケースは珍しくありません。特に長期休暇や家族の都合で一時帰国する際には、在留資格更新の処理が完了していない段階で出国し、後日再入国を希望する状況が生じます。
本記事では、在留カードを預けたまま出国する場合の再入国手続きとその注意点について、行政書士としての実務経験を踏まえて詳しく解説します。再入国できなくなるリスクを避けるために、ぜひ最後までお読みください。
1. 在留カードを入管に預けている状態とは?
在留資格の更新申請を行うと、原則として入管から「申請受付票」が交付されます。これは、在留資格更新申請が正式に受理されたことを示す重要な書類です。
申請の内容によっては、更新審査中に在留カードを一時的に入管に預けるよう指示される場合があります(例:郵送申請の場合や手続き簡素化の一環など)。その間、本人の手元には在留カードがないため、日常生活や出入国審査において代替書類として「申請受付票」が必要不可欠になります。
2. 2か月間の帰省中に再入国するには「みなし再入国許可」の利用を
在留資格更新中でも、一定の条件を満たすことで出国および再入国が可能です。ここで重要なのが、「みなし再入国許可制度」の利用です。
● みなし再入国許可とは?
これは、在留資格を持つ外国人が出国する際に、あらかじめ再入国許可を取得せずとも、出国日から1年以内であれば再入国できる制度です(出入国管理及び難民認定法第26条の2)。
● みなし再入国許可の利用条件
- 現在有効な在留資格を持っていること
- 在留期限が切れていないこと(※更新申請中でも適用対象)
- 出国時に必ず「みなし再入国許可を希望する」旨を出国審査官に伝えること
● 注意点
- 申請受付票が在留資格更新中であることの唯一の証明書になるため、出入国の際に必ず携帯すること
- パスポートの有効期限にも注意(帰国予定日まで有効であること)
3. 出国時の実務上の流れ
実際に出国する際のステップを以下に示します。
- 空港の出国審査でパスポートと申請受付票を提示
- 「みなし再入国許可を利用する」旨を明確に伝える
- 審査官によりパスポートに「みなし再入国許可」のスタンプが押される
このスタンプが押されていないと、帰国時に「再入国許可がない」と判断され、原則として再入国できません。
4. 帰国(再入国)時の注意点
出国後、2か月の帰省を経て日本に戻る際にも、いくつかの重要なポイントがあります。
● 必ず携帯すべき書類
- パスポート(再入国許可スタンプ付き)
- 申請受付票(在留カードが手元にないことを説明するため)
● 入国審査での説明
入国審査時に「在留カードは更新中のため、入管に預けています」と申告し、申請受付票を提示してください。
● 再入国期限の管理
みなし再入国許可の有効期限は出国日から1年、または旧在留期間の満了日から2か月のいずれか早い日です。更新申請中で在留期限を過ぎている場合でも、「特例期間(最大2か月)」は再入国可能です。
5. 更新結果の通知と在留カードの受け取り
日本に戻ったら、速やかに入管に連絡し、申請結果の確認と在留カードの受け取りを行いましょう。
● 審査結果の通知方法
- 入管からハガキで通知が届く
- または代理人が受け取っている場合もあり
● 在留カード受け取りに必要なもの
- パスポート
- 申請受付票
- 手数料納付書(4000円分の収入印紙)
代理人による受け取りは原則不可のため、本人が出頭する必要があります。
6. よくあるトラブルとその対処法
● スタンプをもらい忘れた!
→ 空港の出国審査で「みなし再入国を希望する」と言わなかった場合、再入国できない恐れがあります。
● 申請受付票を紛失した
→ 速やかに入管へ連絡し、再発行の可否を確認してください。
● 出国中に入管から補正依頼が届いた
→ 日本国内の代理人に連絡を取り、対応してもらうよう準備をしておきましょう。
まとめ
在留資格更新中に在留カードを入管に預けた状態で出国する場合でも、「申請受付票」と「みなし再入国許可」を正しく利用すれば、原則として再入国は可能です。
ただし、パスポートのスタンプの有無、申請受付票の携帯、出国・再入国期限の管理など、細かな注意点をおろそかにすると、思わぬトラブルに発展することもあります。
不安な点がある場合は、出国前に入管または専門の行政書士に相談し、確実な準備をしてから行動することを強くおすすめします。
東京都世田谷区で行政書士事務所です。消防計画、建設業許可、在留許可、相続、防火管理などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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