
はじめに
労働力不足が深刻化する中、多くの建設業者が外国人材の雇用を検討しています。しかし、建設業は専門性が高く、安全管理や現場対応も求められるため、外国人を雇用するには特別な制度と手続きが必要です。
本記事では、建設業で外国人を採用する際に押さえるべき在留資格の制度概要、会社側の要件、外国人側の要件、よくある注意点までを、行政書士の視点から詳しく解説します。
1. 建設業で外国人を雇用できる在留資格とは?
建設業で外国人を雇用できる在留資格は、主に以下の5つです。
在留資格 | 概要 | 就労可能な業務 |
---|---|---|
技術・人文知識・国際業務 | 大学・専門学校卒レベルの知識を活かしたホワイトカラー職 | 建築設計、施工管理、CAD設計、積算など |
特定技能1号(建設) | 現場技能者としての在留資格。12分野の一つ。 | 型枠施工、左官、とび、内装仕上げ、鉄筋など |
特定技能2号(建設) | 特定技能1号の上位資格。熟練技能者向け。 | 上記+リーダー職など(分野限定) |
永住者 | 就労制限なし。自由に建設業にも従事可能 | 全業務可(資格制限なし) |
定住者 | 日系人・難民認定者などが該当 | 雇用形態に制限なし(現場作業含む) |
▶️ 現場作業員を雇う場合は、「特定技能1号」「特定技能2号」「定住者」「永住者」が現実的な選択肢です。
2. 会社側の要件【特定技能での雇用】
外国人を「特定技能」ビザで雇用する場合、会社側には以下のような義務・要件があります。
2-1. 建設業許可を取得していること
- 雇用する業種(型枠、左官、とびなど)に対応した建設業許可が必須です。
2-2. 建設特定技能受入計画の認定
- 国土交通省の地方整備局へ「建設特定技能受入計画」を提出し、事前に認定を受ける必要があります。
- 認定には、会社の経営安定性、社会保険加入状況、技能実習受入歴などが審査されます。
2-3. JAC(建設特定技能受入事業実施法人)への加入
- 外国人を雇用する企業は、建設業界団体を通じてJAC(協議会)に加盟し、協議会費(月額4000円/人)を支払う義務があります。
2-4. CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録
- 雇用主(企業)と技能者(外国人本人)は、CCUSへの登録が必要です。
- 施工体制台帳や現場管理とも連動しており、今後義務化の動きも。
2-5. 社会保険等の適正加入
- 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など、すべての社会保険に適正に加入していることが必要です。
3. 外国人側の要件【特定技能・定住者・永住者】
3-1. 特定技能1号・2号の場合
- 技能評価試験の合格(学科+実技)
- 日本語能力(JFT-Basic A2またはJLPT N4以上)
- 技能実習2号修了者は試験免除
- 18歳以上、心身健康、犯罪歴等なし
3-2. 定住者の場合
- 法務大臣の個別判断に基づく資格で、職種や就労内容に制限がなく現場作業も可
- 主に日系人(ブラジル・ペルー国籍など)や日本人の配偶者等からの変更者が対象
- 就労制限がないため、特定技能よりも雇用しやすい
3-3. 永住者の場合
- 永住許可取得者はあらゆる業種・職種に制限なく従事可能
- 在留期間や転職制限がないため、雇用側の手続きも少ない
- ただし、在留カードや社会保険確認は必須
4. 雇用までの流れ(特定技能の場合)
ステップ | 内容 |
① | JACへの加入、CCUS登録(企業) |
② | 技能評価試験の合格(外国人) |
③ | 建設特定技能受入計画の申請(企業) |
④ | 計画認定後、在留資格認定証明書交付申請(入管) |
⑤ | 外国人の入国・雇用開始 |
▶️ 永住者・定住者の場合はこのような煩雑な事前手続きは不要です。
5. よくある注意点とトラブル
5-1. 外注契約(請負)はNG
- 特定技能外国人は直接雇用が原則。請負や個人事業主としての契約は認められません。
5-2. 労働条件の不備は重大リスク
- 就業時間、残業代、社会保険、宿舎環境などが不適切な場合、受入れ停止・雇用取消しの可能性があります。
5-3. 現場ごとに過半数日本人の原則
- 外国人ばかりの現場は不可。指導者(熟練日本人技能者)を配置する必要があります。
5-4. 家族の帯同は不可(特定技能1号)
- 単身赴任が原則。家族を呼ぶには特定技能2号、定住者、永住者である必要があります。
6. 特定技能2号・定住者・永住者の比較
区分 | 在留期間 | 家族帯同 | 就労制限 | 備考 |
特定技能2号 | 無期限 | 可 | 建設業の熟練職種のみ | 移行には技能1級等必要 |
定住者 | 更新制(1〜5年) | 可 | なし | 日系人・配偶者等からの変更が多い |
永住者 | 無期限 | 可 | なし | 日本人同等の権利・義務 |
まとめ
- 建設業で外国人を雇用する際は、「特定技能」「定住者」「永住者」のいずれかが実務的に有効。
- 特定技能では多くの企業要件・届出が必要だが、定住者・永住者であれば柔軟な雇用が可能。
- 採用前に在留カードの種類・就労可否を必ず確認することが重要。
外国人材の活用を成功させるには、法的知識と実務の両輪が必要です。制度の正しい理解とともに、必要であれば行政書士など専門家の支援を受けることをおすすめします。
※本記事は2025年4月時点の制度に基づいて作成しています。最新情報は出入国在留管理庁や国土交通省の公式サイトをご確認ください。
東京都世田谷区で行政書士事務所です。消防計画、建設業許可、在留許可、相続、防火管理などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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