
はじめに
永住許可を申請するにあたって、最も気になるのが「収入要件」です。特に、家族を帯同している場合、「申請人本人の収入だけでよいのか」「配偶者や扶養している家族の収入も審査されるのか」といった疑問を多くいただきます。
この記事では、在留資格「家族帯同可」の方が永住申請をする際に、直近5年間の所得や家族の経済状況がどのように影響するかについて、行政書士の視点から詳しく解説します。
永住申請の基本的な審査項目
永住許可の審査では、次のような要件が総合的に判断されます:
- 素行が善良であること(法令遵守・違反歴なし)
- 独立した生計を営んでいること(安定的な収入)
- 原則として10年以上の継続在留歴(就労系資格で5年以上)
- 公的義務(税金・保険・年金)の適正な履行
▶️ このうち、**「独立した生計」と「安定した収入」**に関する判断が、申請人本人だけでなく家族の状況にも波及することがあります。
家族帯同者の永住申請で収入はどう評価される?
① 原則:申請人本人の収入が審査の中心
永住許可において最も重視されるのは、申請人本人の収入状況です。直近5年間の所得(課税証明書・納税証明書)により、次のような基準が見られます:
世帯人数 | 必要とされる年収の目安 |
---|---|
単身 | 約300万円〜350万円以上 |
夫婦+子1人 | 約400万円〜450万円以上 |
4人家族以上 | 約500万円〜600万円以上 |
▶️ 扶養家族が増えると、それに比例して「世帯維持能力」が厳しく見られます。
② 配偶者の収入も審査対象になることがある
申請人が扶養している配偶者がパートやフルタイムで就労している場合、その配偶者の収入も「世帯全体の生活基盤」として考慮されることがあります。
- 配偶者も永住を同時に申請する場合 → 配偶者の課税証明書・納税証明書も提出
- 配偶者が扶養対象でも高収入の場合 → 世帯の安定性としてプラス評価
③ 扶養家族に無収入・多人数がいる場合は要注意
申請人の年収が足りない場合、**「扶養家族が多くて生活が困難ではないか?」**という観点から厳しい審査になります。
- 扶養控除対象者が複数いると税額が軽く見えるが、実際の生活費負担は重い
- 扶養者の生活費の支援方法(仕送り、住宅補助等)も説明が必要になるケースあり
直近5年間の収入履歴はなぜ重要か?
永住許可の収入審査では、「直近1〜2年の年収」だけでなく、**「5年間安定していたかどうか」**が見られます。
理由:一時的な高収入では信用されない
- 一時的に高収入であっても、過去に失業・低所得の時期があると、生活の安定性に疑義が持たれます
- 特にフリーランスや自営業者は、収入の変動幅が大きいため、過去5年分の履歴で「継続性」が重視されます
永住申請時に求められる収入関連の書類
- 申請人本人の課税(所得)証明書/納税証明書(過去5年分)
- 配偶者が就労している場合 → 配偶者の課税・納税証明書も添付
- 扶養関係を証明する書類(扶養控除申告書の写し、保険証の写し等)
- 源泉徴収票、給与明細、就労証明書(必要に応じて)
▶️ 世帯の全体像(安定収入で生活が維持できているか)を示すことが鍵となります。
まとめ
- 永住申請では、申請人本人の5年間の収入が中心的に審査されます。
- 配偶者や家族の収入も、申請内容や扶養状況に応じて審査対象となることがあります。
- 扶養家族が多い場合や世帯年収が低い場合は、生活の安定性を証明する工夫が求められます。
📌 永住申請は世帯単位での”生活力”が問われる手続きであり、単に収入があるだけではなく、継続性・安定性・扶養者の状況も含めて準備することが大切です。
※本記事は2025年4月時点の制度に基づいて作成しています。今後制度変更等がある場合は、出入国在留管理庁などの公式発表をご確認ください。