日本の「留学」の在留資格(学生ビザ)を更新する際 に必要な基礎知識

1. 「留学」の在留資格の法的根拠

1-1. 出入国管理及び難民認定法(入管法)

日本における在留資格制度は、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」 に基づいています。「留学」は、入管法の別表第1の在留資格の1つとして定められています。

  • 入管法別表第1の4項(教育・文化活動に関する在留資格の区分)
  • 具体的には法令上、「留学」とは大学、高等専門学校、高等学校、中学校、小学校、専修学校、各種学校、その他これに準ずる教育機関において教育を受ける活動 とされています。

1-2. 省令(出入国管理及び難民認定法施行規則)

入管法を実際に運用するための詳細は、「出入国管理及び難民認定法施行規則」 や法務省告示等で定められています。そこには、在留資格ごとの活動内容や適格要件などがより細かく規定されています。


2. 留学ビザ(在留資格「留学」)更新の要件

留学ビザを更新(在留期間更新許可申請)する際、以下のような要件を満たす必要があります。

  1. 在留中の学業継続性
    • 正規に在籍する教育機関(大学、専門学校、日本語学校など)での学習を継続していること。
    • きちんと履修・出席し、成績が一定水準を維持していることが求められます(出席率や単位取得状況が重要視されます)。
  2. 学費・生活費などの経済的基盤
    • 学費や生活費を賄うための十分な資金があること(奨学金、仕送り、アルバイトによる収入など)。
    • 入管審査では、学費未納や生活費不足で学業継続が困難と判断されると不許可につながります。
  3. 在留中の素行や法令順守
    • 法令(入管法、労働関連法など)を遵守し、1週28時間を超えるアルバイトを行っていないこと(資格外活動許可の範囲内で働いているかどうか)。
    • 過去に重大な違反やトラブルがないか(例:オーバーステイ、無断休学、実態のない学生在籍など)。
  4. 更新の理由が正当であること
    • たとえば語学学校から専門学校・大学への進学準備中である場合など、引き続き学業目的が明確 であること。
    • 卒業直前であるのに、留学資格を延長して日本に滞在しようとする場合など、学業とは無関係な延長理由 だと不許可になる恐れがあります。

3. 在留期間と更新頻度

3-1. 在留期間の上限

留学ビザの在留期間は、「4年3カ月」「4年」「3年3カ月」「3年」「2年3カ月」「2年」「1年3カ月」「1年」「6カ月」「3カ月」 などの範囲で付与されます。

  • 大学や大学院の場合 は、最大で4年3カ月 まで認められるケースがあります。学部レベルの在学期間(4年制大学)や大学院の修士・博士課程の在学期間に合わせて、長期の在留期間が付与されることがあります。
  • 専門学校や短期大学の場合 は、コースの修業年限に応じて2年、または3年程度 の在留期間が与えられることが多いです。
  • 日本語学校の場合 は、通常6カ月~1年3カ月 程度の期間が付与され、学習継続に応じて段階的に更新を行うのが一般的です。

3-2. 更新のタイミングと審査への影響

  • 在留期限の3カ月前から更新申請が可能 です。
  • 更新の際には「在籍状況(出席率・成績)」「経費支弁(学費支払い状況)」「素行状況」などを総合的に審査され、申請時点での学習実態や今後の見通し が考慮されます。
  • 期限直前の申請では書類不備や追加資料を求められた場合に時間が足りなくなる恐れがあるため、早めの準備が重要 です。

3-3. 更新許可後の在留期間の決定要素

更新申請が許可された際の在留期間(いわゆる「延長される年数」)は、入管当局の判断によって決定されます。以下のような要素によって、数カ月〜数年の幅で異なる期間が付与されることがあります。

  1. 在籍コースの修業年限
    • 大学・大学院であれば残りの就学期間、専門学校であれば残りのコース期間、日本語学校では進学予定の有無や学習計画が判断材料となります。
  2. 過去の出席率・成績の評価
    • 出席率が高く成績が優秀であれば、比較的長めの期間が認められる場合が多いです。逆に、欠席が多い場合は短めに設定されることも。
  3. 学費支払い状況と経費支弁者の安定性
    • 学費を滞納せず、次学期分も支払い済みであれば、在留延長に対して信頼性が高いと判断されやすいです。
  4. 今後の学習計画の明確性
    • たとえば大学の卒業までまだ2年あるが、出席率・単位取得状況が良好な場合は、2年程度の在留期間が付与される可能性があります。
    • 一方、卒業目前や学習計画が曖昧な場合、短い期間(6カ月など)しか与えられない場合もあります。
  5. 過去の在留経歴や違反事例
    • 過去に資格外活動の超過や長期欠席などがあると、審査が厳しくなり、在留延長期間も短くなることがあります。

4. 更新手続きの流れ

  1. 必要書類の準備
    • 在留期間更新許可申請書(法務省ウェブサイトから入手可)
    • 在学証明書・成績証明書(出席状況や単位取得状況を確認)
    • 学費納入証明書・経費支弁書類(奨学金の受給証明や仕送り証明、銀行残高証明など)
    • 資格外活動許可証(アルバイトをしている場合) の写し
    • パスポート、在留カード など本人確認書類一式
  2. 地方出入国在留管理局への提出
    • 所轄の出入国在留管理局(入管)で書類を提出します。
    • 申請時に手数料分の収入印紙は不要で、許可が下りた際に4,000円分の収入印紙 を納付して在留カードを受け取るのが一般的です。
  3. 審査・結果通知
    • 入管が書類審査と必要に応じた面接を行い、数週間~2カ月程度 で結果が通知されます。
    • 許可が下りると、新たな在留カードが交付され、在留期間が更新 されます。

5. 不許可となる事例

  1. 出席率が極端に低い、成績不良
    • ほとんど授業に出席しておらず、継続的に学業を行っている実態がない。
    • 長期にわたり単位を取得できない場合や休学を繰り返している場合。
  2. 学費未納・生活費不足
    • 学費の支払いが滞り、次年度以降の在籍が不透明。
    • 銀行残高がほぼゼロで、経費支弁者の送金証明なども提出できない。
  3. アルバイト時間の大幅な超過
    • 週28時間以上働いていた(資格外活動許可違反)。
    • 風俗営業関連など、資格外活動の範囲外の業種で働いていた。
  4. 実態のない在籍(幽霊学生)
    • 真面目に通学していないにもかかわらず、留学ビザだけ維持しようとしている。
  5. 在留資格本来の目的と逸脱した活動
    • 留学とは無関係な活動(他の在留資格に該当する活動)を主たる目的にしていると判断される場合。

6. ポイントとアドバイス

  1. 十分な出席率・成績管理
    • 大学・専門学校・日本語学校問わず、授業への出席率は厳重にチェックされます。少なくとも80~90%以上 の出席率を保つのが望ましいです。
  2. アルバイトの管理
    • 資格外活動許可を取得していれば週28時間以内(長期休暇中は1日8時間程度)で働くことが可能ですが、超過すると違反 となりやすいので要注意。
  3. 経費支弁者の安定性
    • 親や親戚から仕送りを受けている場合、振込記録残高証明 をきちんと取りそろえておくとスムーズに審査が進みます。
  4. 必要書類の不備・偽造は厳禁
    • 成績証明書や残高証明書を偽造したり、虚偽の経費支弁書を出したりすると、在留資格の取り消しや強制退去 につながるリスクがあります。
  5. 卒業後の進学・就職などの見通し
    • 語学学校から専門学校や大学へ進学する際などは、進学先の合格証明書を提示して「学習継続の意思がある」ことを示すとよいでしょう。
    • 大学卒業間近で「本当に学業を継続するのか?」と疑われる場合は、大学院進学や就職活動など、具体的なプランを示すことが大事です。

7. まとめ

  1. 法的根拠: 在留資格「留学」は出入国管理及び難民認定法およびその施行規則に基づき定められています。
  2. 要件: 通学実態、成績、経費支弁能力、法令順守が主なポイントとなります。
  3. 在留期間: 最大で4年3カ月まで認められるケースもありますが、学校種別や学習進捗に応じて付与される期間は変動し、更新許可後も学習計画や成績などによって在留期間の長さが決定されます。
  4. 不許可事例: 出席率の低さ、アルバイト超過、不実態の留学、学費未納などが典型的です。
  5. 手続きポイント: 期限前に余裕をもって申請書類を揃え、正直に事実を記載・提出することが審査通過の大前提です。

在留資格「留学」の更新審査は年々厳格化しており、不備があれば不許可となる可能性が十分あります。特に更新後の在留期間は、在学実態や成績・出席率、学費支払状況によって変わるため、常日頃から学業に専念し、必要書類の準備を進めておくことが肝心です。万が一、出席率が低かったり学費の支払いが厳しかったりする場合でも、できる限り早めに学校や専門家と相談し、必要な対策をとりましょう。

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