
日本の労働力不足を補うための「特定技能」と日本の技術や技能を習得し、帰国後に活かすことを目的とした「技能実習」の在留資格が設けられています。これらの制度は、製造業、介護、外食、建設業などの特定産業分野で外国人が働くことを可能にする仕組みですが、それぞれの要件や特徴が異なります。
本記事では、特定技能1号・2号および技能実習の要件、受入後研修・技能実習入国後講習の重要性について、法的根拠と共に詳しく解説します。
1. 特定技能とは?
特定技能制度は、日本の人手不足が深刻な14分野(特定産業分野)において、即戦力となる外国人労働者を受け入れるために設けられた在留資格です(出入国管理及び難民認定法第2条の2第5項)。
✅ 1-1. 特定技能1号の要件
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力を有する外国人が、特定産業分野で即戦力として働くことを目的としています(出入国管理及び難民認定法第19条の2)。
📌 特定技能1号の主な要件
- 対象職種:14分野(法務省告示第1号)
- 介護
- 建設
- 製造業(素形材・産業機械・電気電子機器)
- 外食
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造
- 自動車整備
- 航空
- 造船・舶用工業
- ビルクリーニング
- 林業
- 鉄道
- 技能試験に合格すること(特定技能評価試験実施要領)
- 例:「外食業特定技能試験」「介護技能評価試験」など
- 日本語能力試験(JLPT N4以上)またはJFT-Basic試験合格(出入国在留管理庁「特定技能評価基準」)
- 受け入れ企業による支援計画が必要(出入国管理及び難民認定法第19条の6)
- 生活支援(住居、銀行口座開設、行政手続きのサポート)
- 労働条件の適正確保
- 相談窓口の設置
- 在留期間:最長5年間(更新可)
- 家族の帯同:不可
✅ 1-2. 特定技能2号の要件
特定技能2号は、特定技能1号よりも高度な技能を持ち、熟練した技能者としての業務を行う外国人を対象とします(出入国管理及び難民認定法第19条の2第2項)。
📌 特定技能2号の主な要件
- 対象職種(2024年時点で2分野)(法務省告示第2号)
- 建設業
- 造船・舶用工業
- (今後、他の業種にも拡大予定)
- より高度な技能試験に合格すること(出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の10)
- 例:「建設特定技能2号試験」
- 在留期間:更新制(無期限で更新可能)
- 永住許可の対象になり得る(出入国管理及び難民認定法第22条)
- 家族の帯同が可能(配偶者・子供の帯同許可)
📌 特定技能1号との違い
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
技能レベル | 基礎レベル(試験合格が必要) | 熟練レベル |
在留期間 | 最大5年(更新あり) | 無期限(更新可) |
家族帯同 | 不可 | 可能 |
永住許可の可能性 | なし | あり |
2. 技能実習とは?
技能実習は、日本の技術や技能を習得し、帰国後に活かすことを目的とした制度です(技能実習法第1条)。
📌 技能実習の主な要件
- 対象職種:80職種・150作業(法務省告示第3号)
- 企業単独型または監理団体型
- 企業単独型:日本企業が海外の関連企業の従業員を受け入れる形(技能実習法第6条)
- 監理団体型:監理団体が実習生を受け入れ、企業に配属する形(技能実習法第8条)
- 段階的な技能習得(技能実習法施行規則第2条)
- 技能実習1号(1年目)
- 技能実習2号(2~3年目)
- 技能実習3号(4~5年目)(優良な受け入れ機関のみ)
- 在留期間:最長5年間(技能実習法第4条)
- 家族帯同:不可
- 賃金:最低賃金を下回ってはならない(労働基準法第4条)
- 転職:原則不可(技能実習法第15条)
3. まとめ
✅ 特定技能1号は基礎レベル、2号は熟練レベルで、2号は家族帯同と永住許可の可能性あり。
✅ 技能実習は「技能習得」が目的であり、原則転職不可・最長5年の滞在。
✅ 特定技能1号は転職が可能であり、人手不足の解消を目的とする。
✅ 特定技能受入後講習、技能実習入国後講習は外国人のスムーズな定着のために重要。
特定技能や技能実習を適切に活用し、企業の発展と労働環境の向上を目指しましょう!