介護の在留資格とは?──高齢化社会を支える外国人介護福祉士の受け入れ制度を徹底解説

日本は世界的にも急速な高齢化が進む社会として知られています。そのため、介護の現場では質の高いサービスを提供することがますます重要視されており、外国人の力を活用して人手不足を補おうとする動きが大きくなっています。こうした背景のもと、平成28年の入管法改正によって新設されたのが「介護」の在留資格です。本記事では、この在留資格「介護」を中心に、どのような条件で取得できるのか、具体的な基準や手続きのポイントについて詳しく解説します。


1. 「介護」の在留資格が設けられた背景

「介護」の在留資格が創設された背景には、大きく2つの要因があります。

  1. 日本の高齢化の進行
    少子高齢化により、高齢者をケアする人材の需要は年々増大しています。しかし一方で、国内人材のみでは慢性的な人手不足を補いきれない現状があります。
  2. 外国人が取得する介護福祉士資格への期待
    「日本再興戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)において、外国人留学生が日本の介護福祉士資格を取得した場合に、日本国内で就労できるよう制度を整備する方針が示されました。これを受け、平成28年の出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)改正により、新しく「介護」の在留資格が設置されたのです。

2. 「介護」の在留資格の該当範囲

「介護」の在留資格は、介護福祉士の資格を有する外国人が日本の公私の機関(病院、介護施設、訪問介護事業所など)と契約を結び、下記の活動を行う場合に認められます。

  • 介護業務
    入浴や食事の介助、排泄介助、身の回りの世話など、利用者の日常生活をサポートする業務。
  • 介護の指導
    後進の育成や新人スタッフへの指導など。

ポイントは、「介護福祉士」の国家資格を有していることが前提である点です。ただし、その取得経緯はさまざまなケースが考えられるため、要件を満たしているかどうかは、厚生労働省や入管当局が定めた基準をよく確認する必要があります。


3. 「介護」の在留資格に関する基準

在留資格「介護」を取得するためには、次の基準を満たす必要があります。

(1) 介護福祉士資格を有すること

まず大前提として、日本の社会福祉士及び介護福祉士法に基づく介護福祉士資格を持っていることが必要です。たとえば留学生として日本の介護福祉士養成校を卒業し、国家試験に合格した場合などが典型的なパターンです。

また、外国で介護等の業務を一定年数経験している場合や、技能実習として日本で介護業務に従事していたことがある場合など、追加で修了しなければならない研修や期間などが定められているケースもあります。

(2) 日本人と同等額以上の報酬を受けること

日本人が介護職員として働く場合に支払われる賃金水準と比較して、同等額以上の報酬を受け取ることが基準とされています。人件費を抑えるために外国人を雇用するような形を排除し、適正な待遇を保証するための規定です。

(3) 技能実習から「介護」への移行時の留意点

もし過去に「技能実習」の在留資格で日本に在留していた外国人が、「介護」へ変更する場合には、本国への技能移転にも努めると認められることが求められます。これは、本来技能実習制度が「技能を母国へ移転する」ことを目的としているからです。長期にわたり日本で働き続ける点に矛盾がないか、審査時に確認されることがあります。


4. 「介護」の在留資格を申請するための必要書類

(1) 在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ)

海外から直接採用する際には、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。このとき、以下のような書類が必要です。

  1. 介護福祉士登録証(写し)
    介護福祉士資格を有していることを証明するために必要です。
  2. 労働条件を明示する文書
    雇用契約書や労働条件通知書など、報酬や勤務地、勤務形態を確認できる書類。
  3. 派遣契約の場合の資料(該当する場合のみ)
    派遣先での業務内容を明らかにする雇用契約書など。
  4. 勤務先の概要
    会社案内や沿革が分かるパンフレット、ウェブサイトの印刷物など。
  5. 技能移転に係る申告書
    過去に技能実習で在留していたことがある場合に必要です。

いずれの書類も、発行日から3か月以内のものが基本です。また、外国語の書類は日本語訳を添付しなければなりません。

(2) 在留期間更新許可申請(国内での更新)

すでに在留資格「介護」を持っている人が更新を行う場合、または別の在留資格から「介護」に変更する場合には、以下の書類が必要となります。

  1. パスポート・在留カード(原本提示)
  2. 顔写真(4cm×3cm、無背景で3か月以内のもの)
  3. 雇用契約書や労働条件通知書(派遣の場合は派遣先を示す資料)
  4. 住民税の課税証明書および納税証明書(市区町村役所発行)
  5. (転職後初の更新の場合)労働条件を明示する文書や、勤務先の概要資料

こちらも外国語書類には必ず日本語訳を添付し、原則として提出資料は返却されません。


5. 申請のポイント

  1. 活動範囲の広さ
    「介護」の在留資格は、入浴や食事介助などの身体介護だけでなく、ケアプランの作成など事務的な業務も包括されます。また、活動場所が介護施設に限られず、訪問介護も可能です。
  2. 訪問介護は公私の機関との契約が前提
    個人との直接契約(要介護者本人やその家族との契約)は在留資格「介護」に該当しない点に注意しましょう。必ず法人や団体などの事業所と雇用契約を結び、そこで業務を行う形が必要です。
  3. 外国人介護職員への期待
    日本語力の向上や文化理解などの面で大変さはありますが、一度資格を取得すると安定した就労につながりやすく、日本国内で働き続けるメリットも大きいといえます。

6. まとめ

高齢化が加速する日本において、介護福祉士として働く外国人は今後ますます必要とされるでしょう。「介護」の在留資格は、資格要件や提出書類がやや複雑ではあるものの、日本で介護のプロフェッショナルとして活躍する道を開く重要な制度です。

  • 在留資格「介護」取得のポイント
    • 日本の介護福祉士資格を保有していること
    • 日本人と同等額以上の報酬を受けられる雇用契約
    • 必要な書類を期限内に提出し、審査に適合すること

介護福祉士資格の取得を目指している外国人留学生や、すでに技能実習などで介護業務を行っていた外国人にとって、在留資格「介護」は日本で長期的に働くための大きなチャンスです。介護福祉の現場で多様な人材が活躍し、お互いに助け合いながら高齢者を支える社会が広がっていくことが期待されています。

今後、日本で介護職として就労したいと考えている方は、ぜひ本記事を参考に、必要書類の準備や手続きの流れをしっかりと把握した上で、円滑に在留資格「介護」を取得・更新していただければと思います。日本の介護現場で培った知識や経験は、世界各国でも活かされる貴重な財産になることでしょう。