はじめに

建設業を営むためには、一定の要件を満たし、都道府県知事または国土交通大臣から「建設業許可」を受ける必要があります。この記事では、都道府県知事が許可する「知事許可」に焦点をあてて、許可を取得するために必要な条件や注意点を、わかりやすくかつ詳しく解説します。


1. 知事許可とは?

建設業許可は、営業所の設置状況に応じて「知事許可」と「大臣許可」に分かれます。

区分内容
知事許可同一都道府県内にのみ営業所を設置する場合
大臣許可複数の都道府県に営業所を設置する場合

例:東京本社のみ → 東京都知事許可/東京と神奈川に営業所 → 国土交通大臣許可


2. 知事許可が必要なケース

  • 工事1件の請負代金が 500万円以上(消費税込)
  • 建築一式工事の場合は 1,500万円以上 または 延べ面積150㎡以上の木造住宅

この金額未満であれば「軽微な工事」として許可不要ですが、将来的な業務拡大を考えるなら、早期の許可取得が望ましいです。


3. 建設業許可(知事許可)に必要な5つの要件

建設業法第7条および施行規則に基づき、以下の5つの要件を満たす必要があります。

① 経営業務の管理責任者(経管)

一定の建設業に関する経営経験を有する者。

主な基準内容
建設業の役員経験(法人)同種業種で5年以上(許可業者)
個人事業主の経験(個人)同様に5年以上の経営経験

※他業種・異業種は不可。あくまで「同種の建設業」での経験が必要。

② 専任技術者

営業所ごとに専任で配置。資格や実務経験に基づいて判断。

 | 認められる資格 | 一級建築士・二級建築士、技術士(建設部門)、一級・二級施工管理技士(建築・土木・電気工事・管工事など)、建築設備士など。業種により該当資格が異なるため、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」に基づいて確認が必要です。
|  実務経験 | 学歴や資格の有無により異なるが、通常は10年以上の実務経験が必要。専門高校卒業者は5年、大学(理工系)卒業者は3年で認められる場合もあり。実務経験証明書や工事経歴書などで裏付けが求められる。

一人が複数業種を兼務することは可能だが、専任性(常勤勤務)が必要。

③ 誠実性

過去に建設業法違反や重大な法令違反がないこと。 暴力団との関係がある者も不可。

④ 財産的基礎(資金要件)

健全な財務体質と一定の資金力があること。

内容説明
自己資本500万円以上法人または個人事業主に必要
預金残高500万円以上上記に代替可能な資金証明
貸借対照表・預金残高証明書証明資料として提出

⑤ 欠格要件に該当しないこと

建設業法第8条に定める欠格事由がないこと。

  • 成年被後見人・破産者で復権していない
  • 暴力団関係者、重大な行政処分歴のある者
  • 許可取消後5年以内の者

4. 許可申請に必要な主な書類

書類名内容
建設業許可申請書(様式第1号)基本情報、業種、営業所などを記載
経営業務管理責任者証明書経営経験の証明(登記簿、確定申告書など)
専任技術者証明書資格証や実務経験証明書など
財務関係書類決算書、納税証明書、預金残高証明など
誓約書欠格要件に該当しないことを誓約

5. 知事許可の種類:一般建設業と特定建設業

区分内容
一般建設業元請工事で下請に出す金額が3,000万円未満(建築一式は4,500万円未満)
特定建設業上記以上を下請に出す場合。資本金・財務要件がさらに厳しい

初めての許可取得の場合は「一般建設業」が原則です。


6. 知事許可取得の流れ

  1. 要件確認(経管・技術者・資金)
  2. 必要書類の収集・作成
  3. 管轄都道府県への申請書提出
  4. 審査(通常30〜45日程度)
  5. 許可通知書の交付

許可後は、毎年決算報告・5年ごとの更新が必要となります。


7. よくある不許可事例と対応

ケース説明・対策
経管が他社と兼任中他社退任登記が必要
技術者が非常勤雇用契約書、給与台帳で常勤性を証明
預金残高500万円未満融資または親族からの贈与で補填、証明書添付

おわりに

建設業許可(知事許可)は、建設業を健全に営むための「信頼の証」です。取得には複数の条件と書類が必要ですが、事前準備をしっかり行えば、無理なくクリアできるものです。

初めての申請や、要件に不安がある場合は、行政書士など専門家のサポートを受けることでスムーズに進められます。

建設業のスタートラインとして、まずは知事許可取得を確実に押さえましょう!

📌 ご希望があれば、更新申請に向けた事前書類チェック、更新理由書の代筆、申請代理提出までトータルサポート可能です。
「確実に3年を取りたい」「過去に不許可になったことがある」などの場合も、お気軽にご相談ください。