専門学校を卒業予定の外国人を採用する際の注意点

外国人留学生が専門学校を卒業後に日本で就職する場合、企業側は在留資格の適合性や法的要件を十分に理解し、適正に雇用する必要があります。特に、在留資格(ビザ)の要件、職務内容の適合性、給与・労働条件、手続きの流れについて適切な確認が求められます。

本記事では、専門学校卒業予定の外国人を採用する際の具体的な注意点を詳しく解説します。


1. 専門学校卒業予定者が取得できる在留資格

(1) 在留資格の種類

専門学校を卒業した外国人が日本で働くためには、適切な在留資格を取得する必要があります。
主に以下の在留資格が考えられます。

在留資格適用範囲代表的な職種
技術・人文知識・国際業務専門的・技術的な業務エンジニア、マーケティング、翻訳・通訳、デザイン、経理、貿易業務
介護介護福祉士の資格取得者介護施設、訪問介護
特定技能(1号)即戦力が求められる14分野外食、宿泊、農業、建設、自動車整備など
技能特定の職業技能料理人、スポーツトレーナー、宝石職人など
経営・管理自ら会社を設立・経営経営者、会社役員

(2) 「技術・人文知識・国際業務」の適用条件

専門学校卒業者が「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。

「専門士」または「高度専門士」の学位を取得していること
学んだ専門分野と職務内容が関連していること
給与が日本人と同等以上であること
単純労働(接客、工場作業、清掃など)ではないこと

特に「専門士」または「高度専門士」の学位を取得していない場合、ビザ申請が認められない可能性が高くなります。


2. 採用前に確認すべきポイント

(1) 学歴・専攻分野と業務内容の適合性

在留資格の審査では、「専門学校で学んだ内容」と「就職する業務内容」が一致しているかどうかが厳しく審査されます。

✅ 認められやすい例

  • IT系専門学校 → システムエンジニア、ITコンサルタント
  • 経営・ビジネス専攻 → 営業職、マーケティング
  • デザイン専攻 → Webデザイナー、グラフィックデザイナー
  • 通訳・翻訳専攻 → 通訳・翻訳業務

❌ 認められにくい例

  • IT系専門学校 → 飲食店スタッフ、販売スタッフ
  • 経営・ビジネス専攻 → 工場作業員
  • デザイン専攻 → レジ業務、ホールスタッフ

単純労働(接客・清掃・製造補助)では「技術・人文知識・国際業務」のビザは取得できません。

(2) 企業の安定性

採用する企業が安定した経営を行っているかどうかも審査のポイントになります。
設立年数、資本金、従業員数
直近の決算報告書、登記事項証明書
労働条件通知書(給与、勤務時間、福利厚生など)

特に新設企業や小規模事業者は、入管審査で「企業の安定性」に関する追加書類を求められることがあります。

(3) 就労条件の適正性

外国人労働者を採用する場合、以下の条件を満たしている必要があります。
給与が日本人と同等以上(例:正社員の最低月給220,000円以上)
社会保険・労働保険に加入
適正な労働時間・休日(長時間労働・低賃金は不許可の可能性あり)


3. 採用後の手続きの流れ

(1) 在留資格変更の申請

専門学校卒業者が就職する場合、在留資格「留学」から**「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更**する必要があります。

(2) 申請に必要な書類

提出者必要書類
本人(留学生)在留資格変更許可申請書、パスポート、在留カード、卒業証明書、成績証明書
雇用主(企業)会社概要、雇用契約書、労働条件通知書、直近の決算報告書、登記事項証明書

(3) 申請先

  • **最寄りの出入国在留管理局(入管)**で申請
  • 審査期間:1~3か月(追加書類を求められる場合もあり)

(4) 審査の流れ

  1. 企業側が雇用契約を締結する
  2. 必要書類を準備し、入管へ申請
  3. 入管が審査(必要に応じて追加書類を求められる)
  4. 許可後、新しい在留カードが発行

4. 採用時の注意点

(1) 在留資格の適合性を事前確認

  • 採用予定の職種が、適用できるビザ範囲内かを必ず確認
  • 必要であれば、行政書士や専門家に相談

(2) 内定後、早めに手続きを開始

  • 専門学校卒業後すぐに働けるよう、事前に在留資格変更の準備を進める
  • 卒業見込み証明書を活用し、早めの申請が可能

(3) 「特定技能」との違いを理解

  • 単純労働(外食・宿泊業など)の場合は「特定技能」ビザでの採用を検討
  • 特定技能は試験合格が必要なため、事前に対応が必要

5. まとめ

専門学校卒業後の外国人を採用する際は、在留資格の適合性を確認する
「専門士」または「高度専門士」の学位がないと就労ビザ取得が難しい
業務内容と学歴・専攻が一致していることが重要
給与や労働条件は、日本人と同等以上であることが必須
在留資格変更の申請は早めに準備し、スムーズな入社をサポート

外国人を適正に雇用するためには、企業側が在留資格や法的要件をしっかり理解し、入管審査に備えることが不可欠です。
もし不明点があれば、入管手続きのプロに遠慮なくお問い合わせください。