外国人が日本で事業を始める際、避けて通れないのが在留資格(ビザ)の問題です。特に「経営管理ビザ(経営・管理)」は、日本で会社を設立・運営するために必要となる重要な在留資格です。

本記事では、海外在住の方が新たに日本で会社を設立し、経営管理ビザを取得するまでの流れや、申請が厳しくなる傾向が続く在留資格認定証明書(COE)の注意点など、押さえておきたいポイントをまとめました。


1. 経営管理ビザとは?

「経営管理ビザ(経営・管理)」は、日本で会社を設立し、事業を経営・管理する外国人に必要となる在留資格です。

  • 既存の日本企業に役員として就任する場合
  • 新たに日本で会社を設立して役員になる場合

のいずれかで申請可能ですが、今回は「新たに会社を設立するケース」を中心に解説します。

1-1. 会社を設立して役員に就任する

海外在住の外国人の方が「日本で会社を設立 → 役員に就任 → 経営管理ビザ申請」という流れになります。会社の形態としては以下の2種類があります。

  • 株式会社(設立費用:約20万円)
  • 合同会社(設立費用:約6万円)

手続きが比較的シンプルな合同会社を設立するケースが多いのが特徴です。


2. 合同会社を設立する流れ

外国人が海外から日本に進出し、合同会社を設立したうえで「経営管理ビザ」を取得するための基本的な手順は以下の通りです。

2-1. 合同会社設立手続き

  1. 基本事項の決定
    • 会社名、所在地(オフィス)、事業目的などを決めます。
    • オフィス探しが重要です。バーチャルオフィスではなく実際に業務を行う物件を確保することで信頼性が高まります。
    • 賃貸料が高額にならないよう、月額4万円程度の比較的安い物件を探すのも有効です。
  2. 定款の作成と認証(合同会社は公証役場での認証不要)
    • 会社名・所在地・出資者の情報などを定款に盛り込みます。
    • 電子署名を付与して法務局に提出します。
  3. 資本金の振り込み
    • 代表者名義の銀行口座(日本国内)に資本金を振り込みます。
    • 経営管理ビザのためには500万円以上の資本金があることが望ましいです。
    • 海外在住の方の日本の銀行口座開設は審査が厳しいため、事前準備と十分な書類整備が不可欠です。
  4. 設立登記申請
    • 登記申請書、定款、払込証明書、印鑑証明書などをそろえて法務局へ提出します。
    • 登記が完了すると、晴れて法人格が取得されます。

2-2. 経営管理ビザの申請手続き

合同会社設立後は、次のステップとして経営管理ビザの申請に進みます。

  1. 経営実態の証明
    • 事業計画書:会社の事業内容、収益予測、雇用計画などを詳細に記載。
    • オフィスの確保:バーチャルオフィスは原則不可。物理的な事業用オフィスが必要。
    • 資本金500万円以上が基準とされています。
  2. 在留資格認定証明書(COE)の申請
    • 会社の登記事項証明書、事業計画書、オフィス賃貸契約書などを入国管理局へ提出。
    • コロナ以降は申請数が増加しており、審査が非常に厳しくなっているのが現状です。
    • 不足資料や根拠が薄い場合は追加書類を求められ、審査期間が延びたり不許可になるリスクがあります。
  3. 入国後の手続き
    • 在留資格認定証明書の交付後、日本の大使館・領事館でビザ申請 → 入国。
    • 入国後は各種届出や追加の準備を行い、実際に事業をスタートさせます。

3. COE(在留資格認定証明書)申請のポイント

3-1. 事業計画書の重要性

  • 事業計画書は最低でも10~15ページ程度の詳細なものが望ましい。
  • 継続して安定した経営が可能であることを具体的な根拠をもって示す必要があります。
    • 物品販売の場合:需要予測・販路ルート・仕入れ先との契約書、ネット販売ならプラットフォーム提供者との契約書を添付。
    • サービス提供の場合:提供形態、単価、提供数、収益見込みなどを具体的に記載。ネット経由の場合はプラットフォームとの契約書や売上実績があれば添付。
  • 証明資料が不十分だと、不許可や追加書類の提出要請で審査が長引くリスクが高まります。

3-2. 審査期間の延長傾向

  • 経営管理ビザの標準処理期間は約146日(2024年11月時点)とされていますが、実際には6~7か月以上かかるケースも珍しくありません。
  • コロナ以降の申請増加や審査の厳格化により、長期化する傾向が続いています。

4. 必要書類および準備物

4-1. 事務所・オフィス契約(目安:2~3か月)

  • 収益証明書(現在の経済状況を示す)
  • 印鑑証明書(日本在住の方が契約手続きする場合など)
  • 敷金:オフィスの場合、家賃の12か月分程度を求められることも
  • 家賃保証会社の保証料:家賃の2か月分程度
  • 不動産仲介手数料:家賃1か月分程度

4-2. 合同会社設立(目安:1か月)

  • 定款の作成(会社名・所在地・事業目的等)
  • 印鑑証明書(出資者・代表者のもの)
  • 会社の印鑑(実印を作っておくと便利)
  • 登記費用(司法書士手数料):3~7万円+消費税
  • 行政書士報酬:10万円+消費税

4-3. 経営管理ビザ取得(目安:1~3か月)

  1. 在留資格認定証明書(COE)の申請
    • 登記事項証明書、事業計画書、オフィス賃貸契約書など
    • 資本金500万円以上の払込証明書など
    • 申請者の経歴・パスポート・写真など
  2. 行政書士報酬:25万円+消費税(書類作成・翻訳・申請取次手数料などを含む)

5. 決算期の設定に関する注意点

  • 会社の定款に定める決算期は、在留資格認定証明書の申請後、できるだけ会社設立登記後12か月後に設定することがおすすめです。
  • 経営管理ビザの場合、初回の在留資格が付与されてから1年後に更新が必要となります。
    • ビザ取得後すぐに決算期を迎えると、赤字決算となってしまい、在留資格の更新が認められない可能性があります。
    • 一期目の決算で利益を出し、黒字を確保するよう計画的に事業を進めることが大切です。

6. 申請手続きのスケジュール目安

  1. オフィス探し・契約:1~2か月
  2. 合同会社設立:1か月
  3. 経営管理ビザ申請~取得:2~3か月(実際には6~7か月かかる場合も)

合計で3~6か月以上の期間を見込んでおくと安心です。コロナ以降はさらに時間がかかる傾向があるため、余裕を持った計画を立てましょう。


7. 注意事項

  • 開業準備や資本金の整合性がとれていないと、入管審査で時間がかかったり不許可となる場合があります。
  • 税務署や労務関係の届け出(源泉所得税、社会保険、労災・雇用保険など)も設立後に行う必要があります。
  • 在留資格認定証明書の審査は、状況に応じて追加書類が求められることが多々あります。
  • 海外在住の方の口座開設は審査が厳しく、時間がかかりやすいです。余裕を持って取り組みましょう。
  • 初回の在留資格更新(1年後)を見据え、できるだけ早期に事業を軌道に乗せ、黒字決算を目指すことが重要です。

まとめ

海外在住の外国人が日本で合同会社を設立し、経営管理ビザを取得するには、

  1. 会社設立(オフィス契約、定款作成、登記)
  2. 経営管理ビザ申請(資本金500万円以上、オフィスの実在、事業計画書の充実)
  3. 在留資格認定証明書(COE)の厳格化

この3点をしっかりと踏まえる必要があります。特にコロナ以降、審査はより厳しくかつ長期化しており、**「事業計画書の充実」「契約書などの証拠資料の添付」**が必須と言っても過言ではありません。

日本で事業を立ち上げたい! と考えている方は、早めに専門家と連携し、十分な準備を進めてください。しっかりとした書類の整備と事業計画があれば、審査をスムーズに進めることができます。


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こうしたサポートを受けることで、渡航準備やビジネスプランの策定に集中でき、時間と手間を大幅に削減できます。


この記事が、日本での会社設立と経営管理ビザ取得を検討している皆さまの参考になれば幸いです。
審査が長期化しがちな現状だからこそ、計画的かつ綿密な手続きで、スムーズにビジネスをスタートさせましょう。