
1. 防火対象物点検とは?
防火対象物点検とは、建物の利用者の安全を確保するために、防火管理の適正を確認し、火災予防措置が適切に講じられているかを点検する制度です。消防法(昭和23年法律第186号)に基づき、一定の条件を満たす建物の所有者や管理者は、定期的に専門家による防火対象物点検を実施し、消防署へ報告する義務があります。
特に、不特定多数の人が利用する建物や、大規模な施設では、火災が発生した際の人的被害が大きくなるため、厳格な基準のもとに点検が行われます。
📌 法的根拠:消防法第8条の2の2
防火対象物の管理権原者は、政令で定めるところにより、防火対象物の防火管理の状況について点検を行い、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならない。
2. 防火対象物点検が義務となる建物とは?
以下の要件に該当する建物では、防火対象物点検が義務付けられています。
(1) 防火対象物点検が必要な建物
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2により、以下の条件を満たす建物は、防火対象物点検の対象となります。
✅ 収容人員30人以上の特定防火対象物(消防法施行令第4条の2)
- 百貨店、ショッピングモール
- 飲食店、バー、カラオケボックス
- 病院、診療所、社会福祉施設
- ホテル、旅館
- 学校、幼稚園、保育所
- 劇場、映画館、演芸場
- 地下街
- 複合用途の建物
上記の収容人員30人以上の特定防火対象物であって、
次の1及び2の条件に該当する場合は点検報告が義務となる。
1.特定用途(表1の1から7に該当する用途のこと)が3階以上の階又は地階に存するもの
2.階段が1つのもの(屋外に設けられた階段等であれば免除)
注 階段が 1つしかない場合でも、そ の階段が屋外に設けられている場合 に存するもの

✅ 特定用途が含まれる防火対象物で収容人員が300人以上のもの
- 商業施設やオフィスビルで、一部に特定防火対象物(飲食店など)が含まれる場合
✅ 防火管理者の選任義務がある建物
- 収容人員30人以上の特定防火対象物では、防火管理者の選任が義務付けられています。
📌 法的根拠:消防法施行令第4条の2
防火対象物のうち、特定防火対象物で収容人員30人以上のものについては、管理者が点検を実施しなければならない。
3. 防火対象物点検の内容
点検では、以下の項目について詳細に確認します。
✅ (1) 防火管理体制の適正性の確認
- 防火管理者の選任(消防法第8条)
- 消防計画の策定と届出(消防法第8条の2)
- 防火管理業務の実施状況
✅ (2) 消火設備・警報設備の点検
- 消火器、屋内消火栓、スプリンクラーの設置・点検(消防法第17条)
- 自動火災報知設備、非常警報設備の機能確認(消防法施行規則第31条)
✅ (3) 避難設備・通路の確保
- 避難経路の確保(非常口、誘導灯の確認)(消防法施行令第9条)
- 避難器具の設置・点検(消防法施行令第10条)
✅ (4) 建築物の防火対策の確認
- 防火扉、シャッターの機能点検(消防法施行令第12条)
- 防火区画の適正性の確認
✅ (5) 火気管理
- 調理場やボイラー設備の火気使用状況(消防法第9条の2)
- タバコの管理、防火意識の向上
📌 法的根拠:消防法施行規則第31条
防火対象物点検では、消防設備、避難設備、火気管理などについて詳細に点検を行うものとする。
4. 防火対象物点検の実施手順
防火対象物点検の実施手順は以下の通りです。
(1) 点検計画の策定
- 点検日程の決定
- 点検実施者(防火対象物点検資格者)の選定
(2) 事前調査と書類確認
- 消防計画、防火管理者の届出の確認
- 消防設備の点検記録のチェック
(3) 実地点検
- 建物内外の防火設備・避難設備の動作確認
- 非常口の確保、火気使用の管理状況確認
(4) 点検結果の記録と報告
- 防火対象物点検結果報告書の作成
- 消防署へ提出(3年に1回)
📌 法的根拠:消防法施行規則第31条の2
防火対象物点検の結果は、消防長または消防署長に報告しなければならない。
5. 防火対象物点検を怠った場合のリスク
防火対象物点検を実施しなかった場合、以下のリスクが発生します。
✅ 消防法違反による罰則(消防法第36条)
- 点検未実施・報告義務違反:30万円以下の罰金
- 虚偽報告:50万円以下の罰金
✅ 火災発生時の責任追及
- 点検不備が原因で火災が発生し、人的被害が出た場合、管理責任が問われる。
✅ 営業停止命令
- 重大な消防法違反がある場合、営業停止処分の対象となる可能性。
6. まとめ:防火対象物点検の重要性
防火対象物点検は、建物を利用する人々の安全を守るための重要な制度です。特に、火災発生時の被害を最小限に抑えるため、適切な点検と報告が求められます。
📌 防火対象物点検のポイントまとめ
- 防火対象物点検は法律で義務付けられている(消防法第8条の2の2)
- 点検が必要な建物は、収容人員30人以上の特定防火対象物で
1. 特定用途部分が地階又は3階以上に存するもの (避難階は除く)
2. 階段が一つのもの - (消防法施行令第4条の2)
- 点検の結果は3年に1回消防署に報告する義務がある(消防法施行規則第31条の2)
- 違反すると罰則や営業停止のリスクがある(消防法第36条)
防火対象物点検を適切に実施し、安全な施設運営を目指しましょう!
東京都世田谷区で行政書士事務所です。消防計画、建設業許可、在留許可、相続、防火管理などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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