以下では、「消防署への届出が必要な場合」について、条例の規定をもとに分かりやすくまとめました。建物を改修・用途変更する際や、消防用設備を設置する際には、事前に消防署への届け出が必要になるケースがあります。大きく分けると、工事等の計画段階、使用開始、一時的な用途変更、そして火気設備や消防用設備の設置・変更などの場合に届出が求められます。以下、それぞれのポイントを解説します。
1. 防火対象物の工事等計画の届出(条例第56条)
1-1. 対象となる工事等
- 政令別表第1各項(19)項や(20)項を除く) に掲げる防火対象物
- ただし、「建築基準法に基づく確認申請や計画通知をしない」建築・修繕・模様替え・用途変更等の工事が該当
1-2. なぜ届出が必要か?
- 工事計画の段階で事前に消防署長へ届出し、消防署が内容を審査することで、完成後いきなり違法状態にならないようにする
- 当初から適法・安全な状態を確保するための制度
ポイント:建基法の確認申請を行わない規模の工事でも、消防法上は事前届出が必要となるケースがあるため要注意。
2. 防火対象物の使用開始の届出(条例第56条の2)
2-1. 対象の防火対象物
- 政令別表第1各項(19)項や(20)項を除く) に掲げる防火対象物、またはその一部を「新たに使用開始」しようとする場合
2-2. なぜ届出が必要か?
- 事前に消防署長へ届出し、使用開始前に消防署の検査を受けることが義務付けられている
- 使用開始当初から防火上・避難上・消防活動上の問題がないことを確認し、適法状態を確保する
ポイント:新装オープンや改装オープンの際に「建築確認だけ」ではなく、消防署の使用開始届&検査が必要な場合がある。
3. 一時的に不特定多数の出入りがある店舗等(条例第56条の3)
3-1. 対象となるケース
- 防火対象物やその一部を 一時的に 不特定多数の人が出入りする店舗等として使用する場合
3-2. 事前届出と検査
- 事前に消防署長へ届出し、消防署による審査&検査を受けなければならない
- イベント期間限定のショップや展示即売会など、不特定多数が立ち入る形態で一時的に使う場合を想定
ポイント:通常の用途と異なるイベント利用や期間限定ショップ開設時は、火災リスクや避難導線が変化するため、消防署の事前チェックが必要。
4. 火気設備等の設置・変更の届出(条例第57条)
4-1. 火気設備等とは
- 火を使用する設備、または使用時に火災が発生するおそれのある設備(条例第57条で列挙)
- 例:厨房のガス設備、大規模なボイラー施設、可燃性ガスを扱う機械等
4-2. 届出と審査・検査
- 設置前・変更前の計画を消防署に届出 → 消防署が審査
- 工事完了・使用開始前に消防署の検査を受ける
目的:位置・構造・管理方法が適正かどうかを事前と事後の両面でチェックし、火災リスクを低減する。
5. 消防用設備等・特殊消防用設備等の設計段階での届出(条例第58条の2)
5-1. 対象となる防火対象物
- 政令別表第1各項(⑲項・⑳項を除く) に掲げる防火対象物のうち、政令第10条第1項や第21条に規定される一定規模のもの
- いわゆる「指定防火対象物等」と呼ばれる施設やその部分
5-2. どのような設備が対象?
- 甲種消防設備士の業務独占対象でない消防用設備や特殊消防用設備(条例第58条の2で定めたもの)
- 例:簡易的な警報設備、誘導灯類 など(法令で細かく区分あり)
5-3. なぜ届出が必要か?
- 設計(計画)段階で消防署長に届け出 → 消防署が内容を審査
- これにより、設備の使用開始当初から消防法令に適合した状態を確保する
6. 消防用設備等の設置完了時の届出(条例第58条の3)
6-1. 対象となる設備
- 指定防火対象物等に設置される消防用設備・特殊消防用設備
- ただし、法第17条の3の2による届け出&検査が必要な設備は除く
6-2. 届出と使用開始
- 設備を設置完了後に、消防署長へ届出し、消防署が検査する
- 使用開始当初から問題なく機能するかを確認
ポイント:設置時だけでなく、「どんな設備を設置したのか」の事後報告と検査が義務付けられている点に注意。
7. まとめ:消防署への届出が必要な主なケース
- 工事等の計画段階(条例第56条)
- 建築確認申請を行わない改修や用途変更などで、防火対象物の安全を確保するための事前届出
- 使用開始届(条例第56条の2)
- 防火対象物やその一部を新たに使い始めるときに、事前の届出と検査
- 一時的用途の店舗等(条例第56条の3)
- 期間限定イベントやポップアップストアなど、不特定多数が出入りする用途に変更するときの届出
- 火気設備等の設置・変更(条例第57条)
- ガスや火を扱う設備を設置・変更する際の事前届出と事後検査
- 消防用設備等・特殊消防用設備等の設計段階の届出(条例第58条の2)
- 指定防火対象物において、新たに設備を計画する段階での事前届出
- 消防用設備等の設置完了届(条例第58条の3)
- 設置後に消防署が検査を行い、使用開始時から適切な状態を確保
建物を安全に、そして法令に適合した状態で使用するため、工事や用途変更、設備設置の段階で消防署への届出を忘れずに行うことが大切です。届出を怠ると、法令違反や検査不合格などの問題に発展するおそれがあります。
実際の手続き時のポイント
- 条例や政令別表第1で定められた用途区分を確認する
- 「⑲項」「⑳項」に該当するものは届出対象外の場合が多いが、その他の要件で届出が必要な場合もあるため要注意
- 所轄消防署と早めに相談し、必要書類や検査のスケジュールを事前に把握しておくとスムーズ
- 消防署への届出は、専門的な知識が必要です。防火管理に精通した行政書士に相談されることをお勧めします。
- 東京の消防防災手続支援センターにお気軽にご相談ください。