はじめに
技能実習制度は、本来「開発途上国への技能移転」が目的とされる制度ですが、実際には多くの外国人がこの制度を足がかりに日本での長期在留やキャリアアップを目指しています。
この記事では、「技能実習生として来日した外国人が、最終的に日本で永住者の在留資格を取得するまでの具体的なステップアップの道のり」を、在留資格に精通した行政書士の視点から、わかりやすく解説します。
ステップ0:技能実習の概要と限界を知る
まず前提として、技能実習制度は最大5年間の在留期間で、原則として転職や家族の帯同は認められていません。あくまで「研修」名目であるため、永住申請の対象にはなりません。
◆ 技能実習制度の特徴
- 在留期間:最長5年(1号1年+2号2年+3号2年)
- 原則、同一機関での就労のみ
- 家族の帯同不可
- 永住許可の在留期間要件にカウントされない
❌ 技能実習中は永住者許可の要件を「満たさない」
そのため、永住を目指すには、技能実習終了後に「他の在留資格」へ変更し、そこからカウントをスタートする必要があります。
ステップ1:特定技能1号へ変更する
技能実習2号または3号を良好に修了した外国人は、一定の要件を満たせば「特定技能1号」に在留資格変更が可能です。
◆ 特定技能1号の特徴
- 在留期間:通算5年まで(1年または6ヶ月ごとに更新)
- 就労可(特定14分野)
- 家族の帯同不可
- 試験合格または技能実習良好修了で移行可
◆ 変更のための要件
- 技能実習2号の良好修了
- 該当分野での技能評価試験・日本語試験(JFT-Basic等)
- 新たな受入企業との雇用契約
✅ 特定技能1号は「就労資格」として永住申請の対象となる在留資格に該当します。
ただし、この時点ではまだ在留期間は最長5年であり、単独で永住申請はできません。
ステップ2:特定技能2号へのキャリアアップ
現時点では、建設・造船造機分野など一部の分野に限って、特定技能2号が認められています。
◆ 特定技能2号の特徴
- 在留期間:無期限(更新可)
- 家族の帯同可能
- 永住許可の在留期間要件にカウント可能
- 高度な技能評価が必要(技能検定1級等)
◆ 要件
- 特定技能1号での就労実績
- 実務経験と技能検定1級相当の合格
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)などの登録
- 企業側の受入体制(受入協議会加入等)
✅ 特定技能2号に移行すれば、家族の帯同も可能になり、永住への道が大きく開かれます。
ステップ3:技術・人文知識・国際業務など高度資格への転換(選択肢)
技能実習や特定技能から、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」など、ホワイトカラー系在留資格へ移行するケースもあります。
◆ 条件
- 大学や専門学校の卒業(学歴要件)
- 言語能力と業務内容の一致
- 雇用契約と年収要件
このステップは誰にでも開かれているわけではありませんが、飲食・サービス分野での経験を活かして「マネジメント職」に昇格 → 在留資格変更する事例もあります。
✅ 技人国資格で「3年」の在留期間が得られれば、永住申請の形式要件を満たせます。
ステップ4:永住者許可の申請に進む
永住者になるためには、法務省が示す3つの要件をすべて満たす必要があります。
【1】在留期間要件
- 原則:日本に10年以上在留し、うち5年以上は就労資格(特定技能や技人国)であること
- 技能実習の期間はカウントされない
- 特定技能1号・2号はカウントされる(※1号は通算最大5年)
【2】素行善良要件
- 法令違反・交通違反がない
- 納税・年金・保険などの義務を履行している
【3】独立生計要件
- 生活保護を受けていない
- 安定的な収入がある(目安:年収300万円〜)
【補足要件】
- 在留期間が「3年」または「5年」であること(※在留カードで確認)
- 家族全員分の住民票、税証明、年金証明等を整えること
✅ すべての要件を満たしたうえで、入管に申請し、審査期間は通常8か月〜12か月かかります。
ステップ5:永住許可取得後のメリット
永住者になると、以下のようなメリットがあります:
- 在留活動の制限がなくなる(職種・業種を問わず自由に就労可)
- 在留期間の更新が不要(永住カードの更新は7年ごと)
- 住宅ローン・融資の審査が通りやすくなる
- 将来、配偶者や子どもへの永住申請もしやすくなる
✅ 型枠工事などの現場作業も、永住者であれば合法的に従事可能です。
おわりに:キャリア戦略としての永住申請
技能実習制度は、制度上は期間限定の「技能移転」目的の在留資格です。
しかし、制度を正しく理解し、特定技能→特定技能2号→永住者というキャリアパスを描くことで、日本で安定的に生活し、家族とともに暮らし、希望する職業に従事することが可能になります。
現在、制度は日々アップデートされており、2024年の「育成就労制度」への移行なども含め、実務の対応も変化しています。
永住を目指すなら、まずは自分が「今どのステップにいるのか?」を把握し、確実に前に進めることが重要です。
東京都世田谷区で行政書士事務所です。消防計画、建設業許可、在留許可、相続、防火管理などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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